「伝えない」「教えない」はご法度? 信用と信頼を得るためのコミュニケーション力とは

写真拡大 (全3枚)

職場での人付き合いにおいて、相手から信用や信頼、尊敬を得ることはとても重要だ。

なぜなら、信用ができない相手や不信感・不満を抱いている相手の言動に対して、多くの人は素直に受け入れようとは思わないからだ。

逆に、信用できる相手であれば、その人からの意見や指摘、指導などを好意的に受け入れ、積極的に仕事に取り組もうとも思えるだろう。

これは、上司、部下、先輩、後輩、取引先など社内外問わず関わる人すべてにおいていえることである。

さらに、事務職、営業職、工場や店舗などの現場スタッフといった業種や職種、正規雇用、非正規雇用といった雇用形態も関係ない。

どんな相手でも、どんな仕事でも、どんな雇用形態であっても、仕事上で関わりを持つ相手の信用や信頼を得ることはとても重要なのだ。

しかし、他人から信用や信頼を得ることは簡単ではない。

どのようにすれば相手からの信用や信頼を得られるのだろうか?
業務でのシーンを想定しながら考えていきたい。


●信用を得ることが難しく感じる要因は?
上司、部下、先輩、後輩、さらには取引先など、仕事で関わる人の信用や信頼を得られれば、業務を円滑に進められるだけでなく、自分のポジションも確立できる。

例えば、業務でトラブルが発生しても、自分が同僚や上司に信用や信頼されていれば、多くの人からアドバイスや支援をしてもらえるだろう。もしかしたら、トラブルが起きる前に、指摘や注意をしてもらえる可能性もあるかもしれない。

また、自分が信用や信頼をしている相手が、仕事上でトラブルに見舞われた場合、助けようという気持ちにもなるはずだ。

お互いが信用や信頼をできる相手であれば結果的に、仕事がしやすいあるいはトラブルが起きにくいといった環境になっていくだろう。

とはいえ、人から信用や信頼を得るには、それ相応の努力が必要だ。
なぜなら他人を信用する価値観は、人によって異なるからだ。

例えば、先輩のDさんがAさんとBさんの2人の後輩に、仕事に対するアツい思いを語ったとする。
Aさんの場合は、
先輩のDさんの話に感銘を受けて信頼を寄せた。
しかし、
Bさんの場合は、
熱血的な言動が苦手で、感銘を受けるどころか先輩のDさんを「うざい」とすら感じてしまった。

このように先輩のDさんが2人の後輩に対して同じことをしても、AさんとBさんの受け取り方の違いによって、一方では信頼を勝ち取れても、一方では不満を抱かれてしまうこともあるのだ。

同じことをしても相手には真逆の印象を与えてしまうため、この先輩にしてみれば、頭を抱えてしまうところだが、対人関係においては案外ありがちなことだ。

このようなことがあると、他人と接することに消極的になってしまいがちだ。
しかし、ここで消極的になると信用や信頼は得られない。


●信用を得るために必要なことは?
今や仕事上の人間関係を築く中で、メールやメッセージのやり取りも重要性を増してきている。メールひとつをとっても日々の積み重ねが大切で、イージーなミスで相手の信用や信頼を損なうこともある。

もっともわかりやすい例が、メールのスルーだ。
今では多くの人が業務内外問わず、重要なメールとそうでないメールを日々受け取っているだろう。

例えば、企業のリリースやメルマガのように一斉配信されるメールは、内容こそ重要であったとしても返信する必要はない。

しかし、同僚や取引先などからの仕事に関する連絡メールなど返信が必要なものもあるだろう。仮にそうした返信する必要があるメールを、すべてスルーしてしまったとしたらどうなるだろうか。


現代の対人関係においてメールやメッセージの返信は重要だ


結果は、メールの受信数がみるみる減っていく。
当然ながら、メール送信者からの信用や信頼を失ってしまうことになるだろう。

メールの返信を怠ることで相手に対して、
・レスポンスがない人
・メールを見てくれているかどうかわからない人
・メールを送っても無駄な人
・仕事を依頼しても受けてくれない人
このような印象を与えてしまう可能性があるのだ。

逆に、メールやメッセージの返信が早い人は「仕事ができる人」と、よくいわれている。
これは相手に対して、
・メールやメッセージをすぐに見てくれる人
・すぐに応答してくれる人
このような安心感を与えることで、信用や信頼を得られる結果につながるからだ。

もちろん、早い返信がすべての人にとって良いかといえばそうではない。
「相手の返信が早いと自分も早く返信しないといけない」というプレッシャーを感じてしまう人もいるだろう。

しかし、少なくとも相手に、
・無視されている
・送ったメールを見ているかどうかわからない
このような印象を持たせないことは、不信感や不満を回避するには有効だ。

こうした対応は、リアルの会話においても同じだ。
意識しなくても相手に対してリアクションをしない、もしくはリアクションがとても遅いと、
・話しかけているのに無視された
・質問をしたのに答えてくれなかった
・質問の回答が遅すぎる
こうした印象を与えてしまい、不信感や不満を抱く原因になるだろう。

このように相手への反応をきちんとすることが大切だということは、多くの人が理解しているはずだ。
しかし、実際には意外にできないものであり、やっているつもりでも相手には伝わっていない場合が多い。

そうでなければ、人間関係でのトラブルや悩みは、もっと減るはずだ。


●伝えることや教えることの意味
急な質問や声かけに対して、反応することが苦手という人は案外多い。

また、リアルでの会話では饒舌で親切だが、メールやメッセージになると途端に事務的で、冷たい印象を持たれてしまいがちな人もいる。

近年のインターネットの普及で増えているのが、こうしたリアルとネットでのギャップだ。
リアル、ネット、どちらか一方のコミュニケーションが苦手という人も案外多い。

ネット上では人が変わったように攻撃的だったり、過激な発言をしたりする人は、炎上やトラブルにもつながる。

こうした人は、実際に対面してないと相手をイメージできない、もしくは相手をイメージしていないことから、適切な応対ができない可能性が高い。

これは自分の意思や意見を、
「相手にきちんと伝える」
この意識が薄いために起こると考えられる。

こうした意識は、リアルの世界においてもとても重要だ。

例えば、
・離席時、誰にも伝えずにどこかに行ってしまう
・部下や新人が困っていても、見て見ぬふりをする
・相手が知らないことでも知っている前提で話をする
・知らないとわかっても教えようとしない
こうした相手に配慮しない、相手を理解しようとしない言動は、不信感や不満に直結してしまう。

つまり、伝えることや教えることを軽視するということは、相手からの信用や信頼を得ることも軽視しているということになるのだ。

とはいえ、
・相手の状況を意識する
・相手の状態に配慮する
・相手を理解する
これらを完璧にできる人はまずいない。

そのため、できていないことを前提として、
・最初に相手の状態や状況を把握する
・相手にとって必要な情報は最大限もらさず伝える
・教える必要のあることは、何度でも教える
これらの行動を心がけ、相手の信用や信頼に結び付けていく必要がある。


お互いが信用を得ようと意識することが大切


・指示をしてもやってくれない
・指摘をしても聞いてくれない
もし、このようにあなたが感じたとしたら、
相手はあなたを信用、信頼していないサインなのかもしれない。

中国の思想家・孔子の言語録「論語」の中に、
「君子、信ぜられて而(しか)して後に其(そ)の民を労す」
という一節がある。
「すぐれた人は、信頼を得たのちに、人々を働かせる」というような意味だ。

対人関係においてまずは、相手からの信用や信頼を得ることを意識した言動をとることが重要なのだろう。


執筆:S-MAX編集部 2106bpm