佐賀空港は、定期便が就航するだけではない、もうひとつの顔があります。グランドハンドリングの新技術テストの場としてロボットや全自動車両が手荷物を運搬。まるで「近未来」の空港のような光景が広がっています。

3月に国内初実用化「手荷物積み付けロボット」

 ANA(全日空)便を中心に、平時は国内外の航空会社が乗り入れる佐賀空港。実はこの空港、通常の定期便による旅客や貨物の輸送だけではない、もうひとつの顔があります。

 佐賀空港は、ANAにとって地上支援業務、いわゆるグランドハンドリング業務の先端技術をテストする場である「イノベーションモデル空港」に位置付けられており、国内初のものを含む、ほかの空港では見られないアイテムが次々に導入・使用されるのです。


佐賀空港のエプロンを走る自動運転トーイングトラクター(2020年10月5日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ANAが2020年10月5日(月)に報道陣へ披露したのは、「手荷物積み付けロボット」が、飛行機へ直接旅客の手荷物や貨物を搬送するための荷車「バルクカート」へ、手荷物を積みこむ様子です。

 このロボットは、2020年3月に国内で初めて実用化されたもので、天吊りされたロボットアームでベルトコンベアから手荷物を吸いあげ、バルクカートへ移送します。海外の空港と比べて小さい空港の貨物積載エリアに入るよう機械のサイズを工夫したほか、大きさや形などが違う荷物を、荷崩れしないようキレイに積めるよう作られたとのこと。

 ANAによると、「手荷物積み付けロボット」を用いることで、スーツケース1個あたり、平均26秒でカートへ搭載できるほか、スタッフの「働きやすさ」向上や、効率的な運用によるサービスの向上にもつながっているそうです。

 ロボットを使って積み付ける荷物は、キャスター付きのスーツケース。ロボットを使うかどうかは、事前に画像認識を用いて自動判定します。たとえばお土産袋などは人が積みこみを実施することになりますが、それでも6割近くがロボット積み込みで対応できます。

佐賀空港で実施された「国内初」のテストとは

 またこの日は、もうひとつのANAの「先端アイテム」といえる「自動運転トーイングトラクター」も登場しました。これは中部空港でも実証実験が進められていますが、佐賀空港では加えて実際のANAの旅客便を対象に、「手荷物積み付けロボット」でカートに積まれた手荷物を「自動運転トーイングトラクター」で機側まで運ぶという、「合わせ技」でのテストが実施されました。こちらも国内初の取り組みといいます。


佐賀空港の手荷物積み付けロボットで旅客手荷物を積みこむ様子(2020年10月5日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ANAオペレーションサポートセンターの岡田 稔さんは「ANAでは、より少ない労力で、だれでも働きやすい職場の実現を目指しています。また新型コロナウイルスでの、感染リスクを避ける狙いもあります。グランドハンドリング業務は、これまで、人の手に頼った人海戦術のような働き方が続いていました。事業が厳しくなっているなかでも、イノベーションの重要度はどんどん上がっています」と話します。

 なお、ANAは今回のテストを実施したのち、本格導入に向けた課題の整理ならびに今後の具体的な業務設計に取り組むとしています。