女優の秋元才加がハリウッドデビューを果たした。映画『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕』(8月14日公開)で謎の女アサシンを熱演。生けるレジェンドアクションスター、トム・べレンジャーの代表作にして人気シリーズの最新作出演の切符をオーディションで勝ち取った。数シーン出演のゲスト扱いではなく、準主役というポジションで海外初進出。カギとなったのは、アイドル時代からコンプレックスだった“鋭い目力”だ。



ライフルのスコープ越しに鋭く標的を見つめる目、赤いラインに縁どられた殺意の宿る目、困惑と混乱の色を映す真相を知った目。フィーチャーされるのは、タフさを象徴するかのような秋元の目力。“目は口ほどにものを言う”を地でいく秋元の目力演技に触発されたカーレ・アンドリュース監督は、秋元の目に焦点を絞った三分割画面というトリッキーなシーンでその期待に応えた。



「AKB48にいたころから目力が強いと指摘されることが多くて、“怖い”“もっと優しく”と言われる。普通に見ているつもりなのにキツイ印象を与えてしまうのがイヤで、10代の頃は“柔らかく柔らかく”を意識していました」と大きな目がコンプレックスだった。しかし所変われば品変わるで「今回の作品で急に“もっともっと!ストロング!ストロング!”と言われて、目力の強さを求められました。日本で求められる優しさだけではなく、強さもできないとダメなんだと実感。久しぶりに目力のリミッターを外してお芝居をしています」と個性を初めて心強い武器と思えた。



武器はそれだけではない。英語が飛び交うアウェーな環境下にあっても、秋元は物おじすることはなかった。「自分の人間力を試されるのが好きで、ハラハラするような環境下に置かれるのも嫌いではない。日本だろうが海外だろうが、わからないと思うことがあったら素直に聞く。聞かずにわからないままやって、その姿がフィルムに残る方が恥ずかしい。たとえ上手く言葉が通じなくても、伝えようとする気持ちがあればなんとかなるもの」と笑い飛ばす。


そのオープンマインドなところが、アサシンとしてのリアクションを肉付けする上で役立った。「銃で撃たれた時の反応は当然未経験なので、周りの俳優さんに相談してリアルな経験談を聞きました。“俺は3回くらいナイフで刺されたことがある”と言われた時は、世界は広いなぁと思った」と実地に勝るものなし。


劇中では屈強な俳優チャド・マイケル・コリンズと肉弾戦も展開。しなやかに伸びる足から繰り出される強烈なハイキックと風を切り裂くようなパンチを繰り出す秋元のアクションスターぶりは一見の価値ありだが、海外の俳優のスタンスの違いをまざまざと感じたともいう。

「目力同様にアクションシーンも“もっと強く!もっと重く!”。海外の俳優さんはそれを実現するため、おのずとトレーニングせざるを得なくなる。日本で“鍛えている”と言うと“意識が高い”とか“ストイックだ”と褒められますが、海外ではそれが当たり前。その感覚は自分も持っていたいと強く思いました」と刺激を受けた。


新たな視点を得て帰国した際には、新たな接点も生まれた。「出演情報が解禁された際の反響は想像以上。アクション好きの男性やミリタリーファンの方からコメントをもらったり、今まで接点のなかった方々と触れ合うきっかけになったりと、私自身の幅も広がった気がします」と嬉しそう。ちなみに元AKB48のメンバーたちに出演を伝えたところ「山猫役なの?」と天然返答があったそうだ。



元アイドルという肩書きがウソのように、女優として頭角を現している。「小さい役を少しずつ積み重ねた結果、大きな役に繋がっている実感があります。今回は初海外作品で準主役という恵まれたポジションをいただきましたが、一度だけでは終わらせたくありません」と再びの世界進出を見据えて「外国から見た日本人女性のステレオタイプを壊すような役をやりたい。アジア人のレズビアン役やマーベルのキャラクターもやってみたい。2年以内には!」と明確な野望を抱いて、舞い降りてくるチャンスを待ち受けている。



『山猫は眠らない8 暗殺者の終幕』


公開日:2020年8月14日(金)

原題:SNIPER: ASSASSINʼS END

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

監督:カーレ・アンドリュース

脚本:オリバー・トンプソン

製作:ヴィッキー・ソーサラン、 グレッグ・マルコム

製作年:2020 製作国:アメリカ

出演キャスト

ブランドン・ベケット:チャド・マイケル・コリンズ

ユキ・ミフネ(レディ・デス):秋元才加

トーマス・ベケット:トム・ベレンジャー


文・写真:石井隼人