コロナ禍ですれ違いが生じてしまったカップルの明暗を分けたものは何だったのだろうか(写真:polkadot/PIXTA)

今年に入ってから新型コロナウイルスの話題で持ちきりだ。人と接触しないことが感染を防ぐいちばんの手立て。婚活は、リアルにお相手と会って関係を築いていかないと結婚には結びつかないので、この状況下ではこれまでどおりの婚活ができない。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声と共にお届けしている連載。今回は、「コロナによって関係が終わってしまったカップル」の話をつづる。

明暗を分けた「交際中のカップル」

感染はいまだ収束の見通しが立たない。当初はいかに新型コロナウイルスを封じ込めるかに観点が置かれていたが、今や共生共存の時代に入ったと言われている。


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人との付き合い方も、ここ半年間で大きく変わった。その変化に婚活者たちも戸惑っている。付き合っていたカップルは、ウイルスの蔓延で明暗を分けた。“こんな時代になったのだから、他人でいるのではなく家族になろう”と、結婚を決意したカップルもいる。

その一方で、コロナに対する考え方の違いから、破局したカップルもいる。私の相談所で活動して1年になる俊哉(40歳、仮名)は、後者だ。

俊哉は、スリムな体型で清潔感のあるハンサムだったので、お見合いは組めていた。しかし、相性の合う相手にはなかなか巡り合うことができず、断ったり断られたりが続いていた。

そんなとき、朋美(35歳、仮名)とお見合いをした。年が明けてすぐ、1月のことだった。私も引き合わせに立ち会い30分ほど同席をしたのだが、朋美は目のクリンとした美人で、話をしながらよく笑い、明るくてとても感じのいい女性だった。

お見合いを終えた俊哉が言った。

「今までお会いした中で、いちばんいいなと思いました。交際希望でお願いします」

朋美の相談所からも交際希望が来て、2人の交際は成立。1月は週末のたびに、食事に行ったり、博物館や水族館に出かけたりするデートを重ねていたようだ。

ところが2月に入り、ダイヤモンド・プリンセス号の船内感染が報じられるや、どこか他人事だった新型コロナウイルスが、急に身近な脅威に感じるようになった。しかし、この時期は、飲食店もそのほかの商業施設も普通に営業をしていたので、俊哉は週末になると朋美をデートに誘っていた。

「14日のバレンタインデーに、朋美さんからチョコレートをいただきました」

お見合いから約1カ月後には、結婚を前提とした“真剣交際”に入っていたので、楽しいバレンタインデーを過ごしたようだった。何もかもが順調で、このまま2人は結婚に向かっていくことを私は信じて疑わなかった。

ところが、3月に入り俊哉から、面談の申し入れがあった。

コロナが蔓延している中でのデートが「ストレス」

事務所にやってきた俊哉が、浮かない顔で言った。

「この間、朋美さんからLINEが来たんです。『コロナの感染者が日に日に増えていく中で、毎週末デートをしていたことにすごくストレスを感じていた』と。『コロナが落ち着くまでは、会うことを控えたい』と書いてありました」

お見合いで出会ったカップルが会わなくなると、関係が終焉に向かっていくというのは、婚活経験者なら、誰もが知っていること。それは婚活での出会いと生活圏内での出会いとでは、そもそも出会いの性質が違うからだ。

生活圏内の出会いは、学校、会社、取引先、サークル活動など、自分が行動している域で出会い、最初は付き合うことなど意識せずにコミュニケーションを取っていく。その中で恋愛感情が芽生えて恋人同士となり、そこからさらに関係を築いて結婚へとつながっていく。恋人同士になるときも結婚するときも、相手を大切に思う気持ちが出来上がっている。

ところが、婚活の出会いは、“結婚”という目的のために男女が出会う。1時間程度のお見合いで相手を見極め、交際になった時点で“結婚”というゴールに向かって付き合いがスタートするのだが、まだ相手を好きになる気持ちが育っていない。結婚を目指す空の箱ができたような状態だ。なので、頻繁に会って一緒にいる時間を重ね、空の箱の中を相手への気持ちでいっぱいになるように埋めていかないと、結婚まではたどり着かない。

生活圏内の出会いのように、自分の行動範囲に相手がいるわけではないので、会う時間はお互いに努力して作り出さないといけない。それができなければ何回お見合いをしても、結婚までは至らないのだ。

俊哉が言った。

「毎週会って、バレンタインデーのお祝いも一緒にして、うまくいっていると思っていたのは、自分だけだったんですよ。朋美さんは、コロナの状況下で毎週会うことにストレスを感じていた。それを聞いて、すごくショックでした。これまでの出会いの中でいちばんいいなと思ったし、仮交際からトントン拍子で真剣交際に進んだのに、このまま会えない日が続いたら、関係が終わってしまうような気がするんです」

そこで、私はこうアドバイスした。

「婚活の出会いは、会わなくなると関係が終わってしまいがちになるけれど、コロナが蔓延している今は、会えないことにもちゃんとした理由がある。誰もが経験したことのない異例の事態なのだから、会えないから関係が終わるという、これまでの通例は当てはまらない気がするの。会えるようになるまでは、LINEや電話でコミュニケーションを取っていきましょうよ」

この時点でコロナがいつ収束するか、その見通しはまったく立っていなかったが、4月に入ると緊急事態宣言が出され、さらに身動きが取れない状況になった。

コロナをどう捉えるかで、カップルの明暗は分かれる

婚活で出会い付き合っていたカップルは、緊急事態宣言期間中に明暗を大きく分けたように思う。それは、“コロナとどう向き合うか”の考え方にかかっていた。

婚活は一生の伴侶を探すこと。デートは不要不急の外出ではないと考えていたカップルは、どちらかが運転する車で郊外にドライブに出かけたり、広い公園に行ったり、ウイルスに感染しないような方法を見つけ、会う時間を作り出していた。

ところが、どちらか1人がコロナに敏感で、“たとえ3密を避けたとしても、ソーシャルディスタンスを守ったとしても、外に行けば感染のリスクがある”と思っていると、一方が会いたいと思っていても、そのカップルは会うことができなくなってしまう。

朋美は、コロナにとても敏感だった。会社に行くことにもストレスを感じていたし、感染リスクをおかしてまでデートをしたいとは思っていなかった。

俊哉は朋美と会えなくなったことが寂しかったが、毎日LINEをし、時には電話で話すことで、なんとか関係をつないでいこうと頑張っていた。

そして、5月に入り、また私に面談の申し出をしてきた。

ゴールデンウィークに事務所にやってきた俊哉が言った。

「もう朋美さんと会えなくなって2カ月になります。緊急事態宣言はいつ明けるんですかね。ただ彼女がこんなにもコロナに敏感だと、緊急事態宣言が明けても、すぐには会えないような気がします」

すっかり肩を落としていた。

5月25日に緊急事態宣言は解除されたが、俊哉が朋美と再会できたのは最後に会った日から4カ月が経っていた。4カ月といえば、1年の3分の1の期間だ。

「ランチをしたんですけど、なんだかぎこちなくて最初に会った頃の距離感に戻っていました。これからまた関係性を築いていくのに時間がかかる気がします」

お見合い結婚の場合、トントン拍子に進むカップルは、出会ってから2カ月、3カ月で結婚を決めていく。俊哉と朋美は、最初の2カ月は順調だったのものの、そこから4カ月会えなくなり、すでに半年以上の月日が過ぎていた。

それだけの時間を費やしたものの、2人の距離感がスタートした頃に逆戻りしていたことを感じ、俊哉は戸惑ったようだ。これまでなんとか2人の関係をつなぎとめようとしてきたが、“これでいいのか”という疑問も頭をもたげるようになった。

追われることにあぐらをかくと大切なものを失う

未来を見いだせなくなってきた俊哉に、私はこんなアドバイスをした。

「コロナウイルスにどう向き合うのかは、人それぞれで考え方が違う。今回はコロナだったけれど、今後も自然災害が起こったり疫病がはやったり、何があるかわからない。でも、どんなことが起こっても、その状況下でどう判断して、どう行動を取っていくか、その考え方や価値観が一緒の人をパートナーに選んだほうがいい気がしますよ」

俊哉も再会してからいろいろと考えたようで、会えなくなってから毎日入れていたLINEも、再会後は間隔をあけるようになった。

不思議なもので、ずっと追われていると相手の優しさにあぐらをかいてしまうのだが、追われなくなると相手を失うのが急に惜しくなる。俊哉がLINEを入れなくなると朋美からLINEが来るようになった。

また朋美の相談室の仲人から、「俊哉さんとの結婚を真剣に考えて、今後も交際したいと言っています」という、彼をつなぎとめるメールが私に入ってきた。

しかしこの時点で、俊哉の気持ちはすでに“この交際に区切りをつけよう”という方向に振り切れていた。

朋美の仲人からメールが来たことを俊哉に告げると、彼は言った。

「付き合い出した当初、僕はうまくいっていると思っていましたが、朋美さんは、『コロナの状況下でランチをしたりデートをしたりしていたことにストレスを感じていた』という。その後、4カ月間はまったく会えなくて、そこで関係が終わってしまうのが嫌で、毎日LINEを入れて連絡をとざさないように頑張ったけれど、彼女から返信が来るのは翌日とか3日後とかだった。

そして、4カ月ぶりに会ってみたら、2人の距離が振り出しに戻っていた。今になって朋美さんから僕との結婚を真剣に考えていると言われても、このスピード感で付き合っていたら、いつ結婚にたどり着けるのかわからない気がするんです」

努力している相手に向き合うことができるか

俊哉の言うことはもっともだった。そして、こう続けた。

「そもそもコロナに対する考え方が、彼女とは根本的に違う。そこはやっぱり価値観が合わないのだと思いました。この交際を終わりにしても、次に結婚できる相手にいつ出会えるかわからない。でも、本棚で言うなら、すでにある本を取り出さないと新しい本が入るスペースは生まれない。交際は終了にしたいと思います」

交際終了を朋美の相談室に伝えると、仲人から、「もう一度会って話し合えませんか」という打診が来た。そのことを俊哉に伝えたが、彼の気持ちは変わらなかった。

どんなに努力をしても、人の気持ちは手に入らないことがある。また、相手が一生懸命に努力しているときにそこに向き合わなければ、大切なものを失ってしまう。

俊哉と朋美は、互いの気持ちを合わせるタイミングがズレてしまった。そのタイミングが合うのが、 “ご縁”なのかもしれない。この2人は、“ご縁がなかった”ということだろう。