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 プレミアリーグは7月26日に最終節を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大で約3カ月の中断期間を挟むという異例のシーズンとなったが、再開後は大きな混乱もなく無事終えることができそうだ。


南野拓実プレミアリーグ1年目が終了する

 そして、1月1日に正式にリバプールの一員となった南野拓実も、プレミア挑戦1年目が終了する。

 プレシーズンの準備期間のない冬の移籍市場で加わり、この半年はチーム戦術とプレミアリーグに順応することにプライオリティが置かれた。だが、来シーズンは間違いなく勝負の年になる。今季の使われ方から、来季の起用法を考えてみたい。

 南野のプレー位置は、CF、右FW、左FWの3トップの一角になることが多かった。そのなかで、出場回数が最も多かったのがCFだ。

 リバプールの基本布陣は4−3−3。両翼のふたりに比べ、リバプールのCFは少し下がり目にポジションを取り、中盤とリンクしながらパスワークに加わる。言わば、偽9番だ。

 レギュラーCFのロベルト・フィルミーノは最前線に顔を出したり、中盤に下がったり、その中間の位置でボールを受けたりして局面打開を図る。ポジション取りの判断が絶妙で、サディオ・マネやモハメド・サラーとの連係で相手の守備網を崩した。足技などの「個の力」で単独突破ができるのも大きな武器だ。

 CFで起用されると、南野もやや下がり目の位置にポジションを取り、相手MFとDFの間でボールを受けたり、前線のスペースに流れたりして守備のほころびを見つけようとした。スペースへの入り方や、ボックス内でフリーになる動きは秀逸だった。

 だが、南野の動き出しに合わせてパスが入る回数はまだまだ少ない。このあたりは練習や試合を重ねていけば改善していくと思うが、少なくとも今シーズンは、息のあったコンビネーションを奏でるところまでいかなかった。

 むしろ気がかりは、接触プレーへの対応だ。とくに、敵を背負った状態でボールを受ける場面で体勢を崩してしまうことが多かった。身体のキレを失うことなく、いかに敵の当たりに対処していくか。ここは、来季に向けての課題だ。


 一方、相手の密集度が低い両翼で起用された場合はどうか。スピード抜群のサラーやマネとは違い、南野は味方との連係で崩すタイプのため、やや中央に絞ってポジションを取ることが多かった。

 こうすれば味方との距離が近くなり、連係がしやすい。そして、ワイドエリアのアタックはサイドバックが補完する。そんな指揮官の狙いが見えた。だが、こちらも連係の精度がいまひとつで、存在感を示すことができなかった。

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 取材を通して感じたのは、まだユルゲン・クロップ監督も南野起用の最適解を見出せていないのではないか、ということだった。

 チームが採用している4−3−3は、すでに完成の域に達している。しかも、南野はシーズン途中の冬の移籍市場で加わった。従来のフォーメーションに当てはめた場合、南野のプレー位置が3トップの一角だったのかもしれない。

 一方、南野の特性を最も生かせるのは、4−2−3−1や4−3−1−2のトップ下、あるいは4−4−2のセカンドストライカーのポジションのように思う。

 これならフィジカルを利したプレーはCFが行ない、南野は1.5列目から前線のフリースペースに飛び出していける。実際、ザルツブルクの一員としてリバプールから1ゴール・1アシストを決めたCLの試合も、ポジションをトップ下に移した後半から一気に躍動した。

 トップ下も、セカンドストライカーも、今のリバプールの4−3−3には存在しない。しかし、アンカーのMFファビーニョが負傷離脱した昨年12月、クロップ監督はトップ下を置く4−2−3−1にシステムを一時的に変えている。

 こうした柔軟性もあることから、オプションとして4−2−3−1のシステムを採用する可能性はゼロではないだろう。とくに、現行の4−3−3はライバルの対抗策が進んでいる。来季に向けて新しい布陣にトライすれば、南野の起用法も変わってくる。


 リバプールは今年6月、補強ターゲットのドイツ代表FWティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ→チェルシー)を取り逃した。英メディアによると、新型コロナウイルスの感染拡大で補強予算が減り、スポーツディレクターのマイケル・エドワーズが獲得を見合わせたという。

 コロナ禍の影響で、来年1月に予定されていたアフリカ選手権が1年延期になった。エジプト代表のサラーとセネガル代表のマネが離脱しないのは、チームにとって朗報ではある。しかし、ブンデスリーガで28ゴールを叩き出しているヴェルナーを取り逃したのは、大きな誤算だったに違いない。

 南野としては、この機会を生かしたい。ドイツ代表FWが加入していれば、ポジションの重なる南野の強力なライバルになっていたはず。日本代表MFは持てる力を発揮し、前線の不足感を微塵も感じさせないパフォーマンスを見せたいところだ。