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第13週「スター発掘オーディション!」 62回〈6月23日 (火) 放送 作・嶋田うれ葉〉



62回はこんな話


東京帝国音楽学校ではプリンスと崇められていた久志だったが、卒業後はオペラにこだわって仕事がなかった。そもそも久志はなぜ歌が好きになったのか? 久志の少年時代、歌に目覚めたときの物語。

久志の過去が明かされる


冒頭、大人久志の山崎育三郎が出てきて本を朗読するようなスタイルは、その昔、山崎が出ていた「おやすみ王子」という小説を読み聞かせる番組を思い出した人もいるのではないだろうか。

ここで山崎と子役・山口太幹が交代。第12週の特別編「古本屋の恋」でも登場した、子供久志のターンに。ベールに包まれた久志の子供時代とはーー。

思えば、裕一は主人公だから当然のごとく家のことがつぶさに描かれ、鉄男もごく一部ではあるが、家の様子が描かれていた。簡単におさらいしておくと、裕一の家は呉服屋で、音楽に親しみながらも店の経営の悪化により養子問題が勃発、東京に出てきた。

鉄男は魚屋の息子。父が働かず借金をこさえて夜逃げしたが、藤堂先生(森山直太朗)の紹介で新聞社に入り、配達員から始めて記者になった。子供の頃から詩が好きで、いまは作詞家を目指している。

こうして見ると、裕一と鉄男、ふたりとも、やりたいことをやらせてもらえない親から逃げてきている。男の子だけど朝ドラヒロインぽい。

さて、「福島三羽ガラス」と男子三人組にもかかわらず、久志の生い立ちだけ謎。小学校のとき福島に転校してきた久志は物事をよく理解した大人びた知性と、突然現れては消える謎の能力を発揮する以外、県会議員の息子であることしかわかっていなかった。ここで久志の過去も紹介されるのはいい機会であろう。


久志には継母がいた


久志が裕一と出会う前、福島に転校してきた久志は継母・玲子(黒川芽以)のことを「お母さん」と呼べずにいて、父・弥一(日向丈)の手を焼かせていた。

浮かない顔をして授業に出ている久志だが、藤堂先生に歌を褒められ、学芸会で独唱しないかと誘われる。
ここでまた、久志得意のテレポート能力を発揮。先生が目を離したすきにいなくなる。

久志は3年前に離婚して家を出た母・麻友(深澤しほ)のことを忘れずにいた。
母から来た手紙の住所をたどって母に会いにいく久志だったが、麻友の新しい夫(佐藤誠)との間にすでに子供がいるのを見てショックを受ける。

学校で机に突っ伏していると、藤堂先生が来て「故郷」を一緒に歌うことでわだかまりが解け、継母を受け入れることができた。
そのとき「歌っていいなあ」と思った久志は、やがて歌手を目指すのであった。

少年時代を思い出し、久志はおでんの屋台で、思い出の「故郷」を歌う。ミュージカル俳優・山崎育三郎の本領が発揮された。

福島三羽ガラスの原点は藤堂先生だった


「藤堂先生に感謝している」(久志)

久志の立ち直りの影にも藤堂先生。先生は、裕一の作曲の才能を発見し育て、鉄男には毒親から逃げる場所・新聞社を紹介してきた。たくさんの不幸になりそうな子供たちに手をさしのべる藤堂先生は「エール」の救世主である。
森山直太朗の歌も聞くことができて、すてきな朝であった。

良い話なんだが……


歌によって孤独な魂が救われる久志。子役・山口太幹の健闘もあって、とても後味の良いショートドラマであった。

実母から来た手紙を隠していると、女中・幸代(池津祥子)が咎めるかと思わせて……もっと良い隠し場所を助言。
継母の作るはんぺんを拒んでいた久志が、最後には、継母のはんぺんを食べたいと求める。

おでん屋の屋台でこの過去の話を明かした久志に鉄男がはんぺんを振る舞うなどなど、ポイント、ポイントで良さげな描写が用意されている。


良い話なんである。すごく良い話なのだが、駆け足過ぎて再現ドラマ的というかプロットの域を出ていないような印象を受け、もったいない。序盤、子役の期間をもう少し長くとって、故郷・福島で藤堂先生に育まれた3人の少年のドラマを本編にしっかり組み込むことができなかったのかと惜しい気がする。

ドラマの時代設定の昭和11年というと、国防婦人会も活動している頃。良かれと思ってヒロインの行動に何かと口を出す国防婦人会が朝ドラにはよく出てくるので、朝ドラ国防婦人会としてちょっと書かせていただきましたが、明日も楽しみです!
(木俣冬)