どれも衝撃的なシーン…
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 新型コロナウイルスの影響で、シーズン10の最終話が放送延期となった「ウォーキング・デッド」。今年後半に全米放送予定の最終回を前に、番組の名物とも言えるトラウマシーンを、登場した順にいくつか紹介する。(平沢薫)(以下、シーズン9までのネタバレを含みます)

ウォーカー化した母親に襲われるベス(シーズン2第8話「希望という幻想」)

 ウォーカーと化したベス(エミリー・キニー)の母親が銃弾によって倒され、ベスはリック(アンドリュー・リンカーン)の制止を振り切り、母親のもとへ駆け寄る。ウォーカー化した母親は目覚めると、娘ベスを襲う。ウォーカー化した母親に襲われるだけでも十分トラウマ体験なのに、彼女を救おうとTドッグ(アイアン・シングルトン)が頭部を足で踏みつぶし、アンドレア(ローリー・ホールデン)が畑仕事用のクワを頭部に叩き込む。これでは、目の前で見ていたベスが、その後自殺しようとするのも無理はない。

緊迫感MAX!リックとシェーンの殺し合い(シーズン2第12話 「深い森の中で」)

 かつて親友だったリックとシェーン(ジョン・バーンサル)が殺し合わなくてはならなくなるこの世界の非情さ、切なさ。さらに、リックがシェーンを殺した後、動揺するリックの姿と交互に映し出されるのが、シェーンの遺体の内部で起きている細胞がウォーカーに変化していく様子を描く映像。このビジュアルが、暴力的かつ刺激的なのだ。そして、リックが、息子カール(チャンドラー・リッグス)が近づいて来たのに気づいて「誤解だ」と言いながらオロオロしている間に、リックの背後で転化したシェーンが接近してくる。カールはその方向に銃を構えるが、彼が狙うのは、リックなのか、シェーンなのか。この一連のシーンの緊迫感と恐怖の連打はトラウマになりそう。

娘たちの目の前で、ハーシェルが…(シーズン4第8話 「最期の決戦」)

 総督(デヴィッド・モリッシー)たちのグループが、ハーシェル(スコット・ウィルソン)とミショーン(ダナイ・グリラ)を人質に、リックたちが暮らす刑務所を明け渡せと要求。リックは一緒に住もうと申し出るが、総督はそれを拒んで、ハーシェルの首に日本刀を振り下ろす。しかも、彼の二人の娘、マギー(ローレン・コーハン)とベスの目の前で。娘たちは絶叫するが、それで終わりじゃない。地面を這いつくばるハーシェルの首に、総督は何度も日本刀を振り下ろし、頭部を胴体から切り離す。血の飛沫が総督の頬に飛び散る、この残酷さ。この頃のハーシェルは温厚なおじいさんキャラだったので、死に方とのギャップが激しく、ショックが倍増。

衝撃かつ切ない…幼い姉妹の悲劇(シーズン4第14話 「正気な狂気」)

 幼い姉妹、12歳のリジー(ブライトン・シャービノ)と10歳のミカ(カイラ・ケネディ)の事件は悲しく切ない。リジーはこの世界で生きていくため、ウォーカーたちは生きていて人間を仲間にしたいだけだという妄想を抱く、精神的に不安定な少女。妹のミカはウォーカーのことを理解しているが、自分が殺されても人間は殺したくないと考える心やさしい少女。そしてある日、リジーは自分の理論を証明するため、妹ミカを殺してしまう。キャロルたちが二人のもとに戻ってきたときに、それを報告するリジーの静かな佇まいがショッキング。「ミカは帰ってくるから待って」という彼女の足元に、ミカの死体が横たわっている。この世界では、幼い子供たちの精神も無事ではいられないのだ。この事実がトラウマもの。さらに、リジーが他の人たちと一緒に暮らせないことを悟ったキャロルのその後の行動も切ない。

狂気!リックが人間の首を食いちぎる(シーズン4第16話「終着駅 (A)」)

 いろいろあっても善人的な立ち位置のリックが、思わず目を背けたくなるような行動をしてしまうのが「ウォーキング・デッド」の凄さ。無法者集団に襲われたリックは、息子カールを救うためとはいえ、自分を押さえつけている男の首筋に噛み付いて、肉を食いちぎる。そして噴出する大量の血を浴びながら、その肉を吐き捨てる。この光景がショッキング。リックはそのまま、カールを痛めつけていた男をナイフで何度も何度も刺し続け、その行為が残虐すぎて、見ているカールの表情もコワバっていく。このシーンのリックの凶暴さはトラウマもの。

人間を食肉処理…恐怖のと畜場(シーズン5第1話 「食うか食われるか」)

 ギャレス(アンドリュー・J・ウェスト)がリーダーの終着駅の人々は、訪れる人々を殺して食肉にする。彼らに捕われたリックが気づくと、そこは人間と畜場。人間の手足を縛って金属台の前に並べ、頭部をバットで殴って昏倒させ、喉を大きなナイフで切って血抜きする場所だった。そこで作業をする人々の淡々とした作業のこなしぶりがトラウマもの。並べられた人々は、端からバットで昏倒させられていき、さぁ次はグレン(スティーヴン・ユァン)の番……というところまで来るので、見ていてかなり心臓に悪い。

目の前で自分の足が食われていく恐怖(シーズン5第2話「闇からの視線」)

 自分の身体の一部が他人に食べられるという異常事態は、それを見るだけでもトラウマになるに決まってる。しかも、目の前でその行為をしている人物に、肉の味まで報告されたら? というのがこのシーン。何者かに襲われて意識を失い、目覚めたボブ(ローレンス・ギリアードJr.)は、自分の左足がなくなっていることを知って驚愕。すると、目の前にいるギャレスは、美味しそうに肉を食べながら言う、「気休めだと思うが、君は期待以上にうまい」。ふと見ると周囲の人々はみな肉を食べていて、火にかけられた網の上には、足の残りが……。

片目を撃ち抜かれた時の顔が強烈!(シーズン6第9話 「決死の一夜」)

 アレキサンドリアがウォーカーの大集団に襲われた夜、リックたちが脱出を試みる中で、幼い子供サム(メジャー・ドットソン)が恐怖にかられてウォーカーの餌食になり、その母親ジェシー(アレクサンドラ・ブレッケンリッジ)も錯乱して犠牲者に。ジェシーの手がカールの手を握ったまま離さないのを見て、リックがジェシーの手をナタで切り落とすのも強烈で、二人がウォーカーに食われる光景も凄惨だが、さらにすごいシーンが待ち受ける。母と弟が食われるのを見たサムの兄ロン(オースティン・エイブラムズ)が、母に親切にしていたリックを逆恨みして銃を撃つ。リックは無傷だったが、振り返るとカール右目の位置に大きな穴が……。この顔の特殊メイクが衝撃的すぎてトラウマもの。

トラウマ必須…恐怖の有刺鉄線付きバット(シーズン7第1話「惨き鉄槌」)

 シーズン7初回では、前シーズン最終話でニーガン(ジェフリー・ディーン・モーガン)が有刺鉄線を巻き付けた愛用バット・ルシールで撲殺することを決めた人物が明かに。冒頭では「その後」が描かれ、ドラマの中盤近くにそのシーンが登場した。リックの仲間エイブラハムが殺され、それを見たダリル(ノーマン・リーダス)が撲殺されるのかと思わせておいて殺さず……。ホッとしたところで、意表をついていきなりグレンを標的に。この演出が見事なうえに、対象が誰もが好感を持つ人気キャラだったので、精神的なショックが絶大。そのうえ、バットで殴られて変形した顔が画面にしっかり映し出される。血まみれの中に片方の目が飛び出た表情、頭部が潰されているのに動いている片手など、ビジュアル面の描写の細かさも強烈。精神面、ビジュアル面の双方でトラウマものに。

犠牲者多数…境界線に打たれた杭(シーズン9第15話 「裏切りの代償」)

 ダリルたちは、囁く者たちとの境界線の近くで木に縛られているセディク(アヴィ・ナッシュ)を発見。彼が指差す方向を見ると、そこには何かが刺さった杭が何本も並べて立てられていた。その杭の先端にあったのは、仲間たちの頭部。灰色の曇天を背景にしてした首は、切断されているのに、ウォーカー化して口や目をわずかに動かしている。このビジュアルが強烈すぎ。そして、その頃、収穫祭の行われている町の人々は、姿が見えなくなった人々がいることに気づく。この光景と首を交互に映し出す演出も、効果絶大。加えて、犠牲になった人々が10人もいるという数の多さもショッキング。犠牲者には、ずっと前からこのシリーズの主要登場人物だったキャラも。さまざまな要素が加わって衝撃的すぎる。