映画館は、映画と観客を結ぶ架け橋、映画という表現の最前線
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 6日、新型コロナウイルスの感染拡大によりミニシアターが困窮している状況を受け、「SAVE THE CINEMA『ミニシアターを救え!』プロジェクト」が発足した。所属や分野を超えて多くの映画人が賛同しており、政府への緊急支援を要請する要望書も作成されている(記事最後に要望書の全文を掲載しています)。

 政府の要請を受けて映画館の上映自粛が広がっており、多くの小規模映画館(ミニシアター)が存続の危機を迎えている。「このまま緊急事態宣言が出されたら、閉館せざるを得ない映画館も出てくると思われます。映画は人に観てもらって、初めて完成すると言います。そういう意味で、映画館は、映画と観客を結ぶ架け橋、映画という表現の最前線なのです。それをどうしても守りたい」という思いから今回のプロジェクトは立ち上げられた。

 このプロジェクトではChange.Orgによる賛同者の募集、政府への要望書提出、クラウドファンディングなどを活用した具体的な施策を断続的に実施する。連携企画である「ミニシアター・エイド基金」では映画監督の濱口竜介と深田晃司が発起人となり、ミニシアター支援のためのクラウドファンディングをMotionGallery(モーションギャラリー)で準備している。

 「SAVE THE CINEMA『ミニシアターを救え!』プロジェクト」ならびに「ミニシアター・エイド基金」では公式Twitterなどが開設されており、各アカウントで情報が随時公開されていく。(編集部・海江田宗)

<要望書全文>
新型コロナウィルスによって大きな打撃を受けている
小規模映画館(ミニシアター)等への緊急支援を求めます

日本政府、国会議員の皆さまへ。

 現在、新型コロナウィルスによる影響は、芸術文化の一翼を担う映画の企画、制作、配給、上映などに関わるすべての映画人にも甚大な被害を与えています。
とりわけ、映画文化の多様性を担うインディペンデントの小規模映画館(ミニシアター)は存続の危機を迎えており、私たちは大きな危機感を抱いています。
 新型コロナウィルスが大きな社会問題となり、まず映画館の集客は30〜50%以上減少しました。3月26日にイべントや不要不急の外出の自粛が要請されて以降は観客の減少は急激に加速し、集客80%減や観客ゼロでの上映という悲鳴のような声も聞かれるようになりました。ミニシアターの上映を支えている良質な映画の配給者も、このような状況の中で配給を延期せざるを得ず、ミニシアターの今後の状況はさらに悪化してゆくものと思われます。
 この状況のもと、映画館や上映事業者は、感染防止の観点から、あくまで自らの責任で運営や活動の休止を決断するよう迫られています。しかし、何の経済的補償もない中での「休館」は、そのまま「閉館」に繋がってしまうことになりかねません。今の状態が6月まで続けば、夏を待たずに閉館する映画館が続出することか予想されます。
 ドイツの文化相は「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。特に今は」と述べ、文化機関や文化施設を維持し芸術文化によって生計を立てる人々の存在を確保することはドイツ政府の文化的、政治的最優先事項である」と明言しました。地域やコミュニティに根ざし、日本の映画文化の中核を担うミニシアターは、単なる娯楽施設ではなく、地域に多様な文化芸術体験を提供し、コミュニティの「文化権」を確保する重要な文化芸術拠点であり、美術館、劇場、音楽堂等の公立文化施設や劇団、楽団、美術家、音楽家等と同等に民主主義社会に欠くことのできない存在です。
 いま、「映画」を人々に届ける文化芸術拠点が地域から消滅してしまう危機に瀕しているのです。
 私たちは映画文化に関わる映画人として政府に対して以下の支援が得られることを強く求めます。

・緊急的な支援として新型コロナウィルス感染拡大防止のための自粛要請・外出自粛要請、また、拡大防止対策(時短営業や客席数を減らす等)によって生じた損失(観客数の大幅な減少)を補填することによる支援を求めます。

・終息後の支援として集客を回復させるための広報活動の充実、ゲスト招聘、特集上映などのイベントに対する支援を求めます。