彫刻のような美しさの岡田健史
 - 写真:上野裕二

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 ドラマ「中学聖日記」(2018)で衝撃的なデビューを飾った岡田健史が、30年間におよぶラブストーリーを描いた『弥生、三月 君を愛した30年』(公開中)で、ついに映画初出演を果たした。女性教師に恋してしまう中学生を演じ、鮮烈なインパクトを与えてから、わずか1年数か月。今回の映画では、物語のキーパーソンとなる新米の高校教師という役柄で登場。「役を愛することを大事にしている」という彼が、目標とする大人について語った。

 岡田といえば、まだ二十歳という年齢に似合わぬ、大人びた端正な美しさもさることながら、どこか見るものをハラハラさせるような純粋さ、ナイーヴな雰囲気も魅力のひとつ。そんな彼が考える「カッコいい男」とは、ずばり「カッコつけない男」だという。「カッコつけずに、一生懸命になれる人がカッコいいと思います。だから、世の女性たちには男のカッコつけにだまされちゃダメだぞ、って言いたい(笑)」

 目標にしている人は、よく一緒に仕事をする年上の男性だといい、「俳優の方ではないのですが、本当にいろいろな経験をされて、知識も豊富で、なによりも自分の職に誇りを持っていることがはっきりと伝わってくる。好きなことだからこそ、情熱を持って、身をけずって、命に代えてでも! という気迫で仕事をしている姿を見るとすごく刺激を受けます」と目を輝かせ、「でも、普段は冗談ばかり言っていて、すごくテキトーに見える人(笑)」とカッコつけない大人に魅力を感じている様子。

 多忙なスケジュールのなかでも、掃除、洗濯、自炊をきちんとして、一人暮らしの生活環境を整える。時間ができれば積極的に映画を観て、感想をメモに記す。自分を律することが自然にできる習慣は、小学校から高校3年生まで続けていた野球で培われたものだ。「小学生のときに野球部の監督に言われたんです。『おまえは決して天才でも、器用でもない凡人だ。でも、おまえは努力できる才能を持っている。だから、人の3倍やれ』って」

 「監督にそう言われたときの嬉しさ、そのときの景色が忘れられない」と振り返り、俳優となったいまもそのアドバイスを実行している岡田は、やはりもともとピュアで真っすぐな性格なのだろう。学生時代に出会ってきた先生や仲間、俳優になってから新たに出会った多くの人たちに思いを馳せながら、「僕は本当にいろんな方々に影響されながら、たくさん刺激をもらいながら生きている」としみじみ。

 もちろん、俳優・岡田健史として、ただ影響を受けているだけではいられない。俳優業の一番の醍醐味は「作品を観てくださった方々、僕が直接には知らない方々にもすごく影響があること」だ。「僕自身、映画やドラマを観ると感情を揺さぶられる。そして、僕も演技を通して、実際にそういうふうに思ってもらえるチャンスがある立場なので。やっぱりそうやって、観てくださる方々の心を刺激する作品を作りたい」

 デビュー以来、数々の話題作に出演し、誰もが注目する若手俳優へと進化した。今後はとにかく「息の長〜い役者になること」を目指している。「その年代によって、できる役、できない役がある。そのときの自分だからこそ、できることがある。いましかできないものを武器に、がんばっていこうと思っています」と心も感受性もオープンに、いまを全力で生きながら、一歩一歩、着実に進んでいく岡田の活躍に期待したい。(文:石塚圭子)