VRヘッドセットで牛に「仮想の牧草地」を体験させて牛乳の生産量を上げる試み
乳牛から絞り出す牛乳の生産量や質を少しでも上げるために、酪農家は牛をマッサージしたり、牛にクラシック音楽を聴かせたりといったさまざまな試みを行っています。そんな中、ロシアでは牛乳の質や量を向上するために仮想現実(VR)を牛に体験させるという実験が行われていると報じられています。
На подмосковной ферме тестировали VR очки для коров
Russian Farmers Put Cows in VR So They Can Chill - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/3kxg93/russian-farmers-put-cows-in-vr-so-they-can-chill
オランダのヴァーヘニンゲン大学の研究によると、環境条件は牛の健康に大きな影響を与え、牛乳の生産量と品質も環境条件に応じて変化するとのこと。また、牛の感情的な経験がポジティブなものになると、牛乳の生産にポジティブな効果が表れるという調査結果も報告されています。
そこで、一部の酪農家は先端技術を取り入れて、牛の環境条件を良くしようという努力を行っています。例えば、アメリカでは牛小屋に自動回転ブラシを使ったマッサージロボットを設置して、自動で牛をマッサージする酪農家がいるとのこと。また、オランダでは牧羊ロボットを使って牛や羊の追い込みを行う農家も存在します。
ロシアでも酪農業は盛んで、クラシック音楽を流す音響機器を設置して乳牛に聴かせ、そのリラックス効果によって牛乳の生産量を上げるという工夫が行われています。そして、モスクワ地方農業行政庁は、VRを酪農に応用すべく、牛が装着するためのVRヘッドセットを開発したと発表しました。
特製のVRヘッドセットを装着した牛は、VRヘッドセットの中では緑の牧草地が広がる夏の畑を体感できるとのこと。VRヘッドセットは牛の頭の構造を考慮し、獣医による監修の下、人間のVRヘッドセットを改造して作られています。牛の視覚は人間と異なり、赤色を強く認識する一方で、緑色と青色の認識は弱いといわれているため、VRの専門家がコンテンツを牛の視覚に合わせて調整したそうです。
牛用VRヘッドセットのテストは、モスクワ郊外にある牧場で実施されました。その結果、乳牛の不安が減少し、乳牛の感情が全体的にポジティブなものになったとモスクワ地方農業行政庁は報告しています。なお、テストの第2段階では実際にVRヘッドセットを装着した牛の乳生産量を評価する予定だとのこと。
モスクワ地方農業行政庁は「テストの結果が継続的にポジティブな効果を示している場合、VR実験を拡大して行っていく予定です」と述べました。