千葉県四街道市役所

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 戦後民主主義は、運動会の徒競走で一緒に手をつないでゴールするという「悪しき平等主義」を生み出した。その亜種と言うべきか、弊害と言うべきか……。以下は戦後74年、令和の御代に起きた「奇妙な連帯責任」にまつわる騒動である。

 問題の舞台は千葉県四街道市。先月21日、同市が「一部のミスは全体のミス」と言わんばかりの連帯責任構想を発表したのだ。

 まずは市政関係者が事の経緯を振り返る。

「当日、四街道市は大きな行政ミスをふたつ犯していたと明らかにしました。ひとつは放課後児童クラブ整備に関するもので、市は昨年6月1日に小学校の学童保育所の増設工事に着手。これは国と県から2213万円が交付される前提で進められたものでした。実際、6月28日に交付金をもらえる内示が出されたんですが、それ以前に市が『内示が出る見込み』で見切り発車の工事を始めていたことがバレて、ルール違反として内示が取り消されてしまったんです」

千葉県四街道市役所

 その結果、国と県からもらえるはずだった交付金を、四街道市は自らで賄わなければいけないハメに。担当の健康こども部によるミスその1である。また同時に、

「14年前から、市営住宅の家賃を少なく徴収していた事実も発覚しました。算定方法を間違えていたという単純ミスですが、そのため計5246万円の家賃を取りっぱぐれていたことが分かったんです」(同)

 担当の都市部によるミスその2である。このふたつのミスによって、四街道市は計約7500万円を失ってしまったわけだ。

 ミスは誰にでもあるが、問題はここからだ。佐渡斉(さどひとし)市長(65)は、市の全職員約660人の給与のうち、地域手当を1%減額することでこの損失を補填すると言い出したのである。理由は「組織全体の問題」だから……。今月25日の市議会に、条例案として全職員の給与削減案が提出される予定となっている。

市の職員の「本音」

 しかしこれは、民間会社で喩(たと)えると、極端に言えば総務部と経理部の社員が横領した会社の経費7500万円を、全社員の給与から天引きして補填するようなもの。まさに奇妙な連帯責任と言わざるを得ず、営業部の社員から「ちょっと待って」と文句が出ること請け合いである。実際、問題の担当部署とは別の部署で働く四街道市の職員に「本音」を訊(き)いてみると、

「給与が減るのを歓迎する人はいません。もらえるものはもらいたい。誰だってそうだと思います。まだ、正式に決まったわけでもないですし……」

 また別の職員も、

「(給与が)減らないといいね、と話し合っています」

 一方の佐渡市長は、

「取材は受けられない」

 と言うばかり。

 同志社大学政策学部の教授で、組織論を専門とする太田肇氏が四街道市の方針に警鐘を鳴らす。

「今回のミスは、あくまで公的な仕事で起きたことです。それによって生じた損失を、権限も責任もない部署の職員の私的な給与で穴埋めするのは筋違いです。責任の所在がうやむやになってしまいますし、勤労意欲の低下や、ミスを犯した担当部署が他部署から冷たい目で見られるといった弊害も生じかねません。市長がきっちりと責任を取るべきで、自らの給与を自身の判断で返上するべきではないでしょうか」

 そして、評論家の呉智英氏はこう喝破する。

「市長が自分の監督責任を曖昧にしようとしているのが見え見え。損失額が大き過ぎて、自分ではどうにもできず職員の給与から天引きしようというわけでしょ? 市長に退職金を返還してもらったらどうかね」

 みんなで手をつないで一緒に給与を減らすという「悪しき平等主義」――。

 佐渡斉(ひとし)市長の、「等しさ」の感覚が理解できない。

「週刊新潮」2019年9月19日号 掲載