楢崎兄弟の仁義なき五輪争い 兄・智亜は緊張の弟に助言「兄弟で戦えるのは嬉しい」
今大会7位以内の日本人最上位者が東京五輪代表に内定
東京五輪新種目のスポーツクライミング世界選手権(東京・エスフォルタアリーナ八王子)は19日、スピード、ボルダリング、リードの3種目を合わせた複合の男子予選が行われた。五輪代表は男女各2枠ずつあり、今大会7位以内の日本人最上位者が内定。各種目の順位を掛け算し、値の小さい選手が上位となる。20人で行われたこの日の予選は、日本勢5人中4人が8選手で争われる21日の決勝に進出した。
日本のエース・楢崎智亜(ともあ・TEAM au)は総合3位で突破した。2選手が同時に競技を行うスピードでは、3学年下の弟・明智(めいち・TEAM au)と兄弟対決。1回目に6秒526をマークすると、2回目は6秒352で登り切った。明智は2回目に6秒776。智亜は自身の持つ日本記録6秒291には届かなかったが、4位につけて隣の弟と互いにガッツポーズを出し合い、健闘を称え合った。
続くボルダリングは、13日に2016年パリ大会以来2度目の金メダルを獲得した得意種目。第1課題で落下するたびに右手を振って気にする素振りを見せるなどクリアできず。しかし、第2、第3課題は1トライ目で完登する「一撃」を決めた。第4課題は残り4秒で完登し、16、19年W杯年間王者の誇りを胸に4課題中3完登の4位。3種目めのリードは最終20人目に登場で7位となり「スピードとボルダリングで決勝は、ほぼほぼ確定していたのでリードは落ち着いていた」と振り返った。
現役最強の呼び声高いアダム・オンドラ(チェコ)がまさかの予選敗退となり「残念な部分もあるけど、アダムがいない分、少し戦いやすくなった」と世界一へ視界良好。日本勢トップで五輪内定となるが、世界一を狙う意識は変わらない。「そっちの方がワクワクする。気持ち的に挑戦者」と気を引き締めた。
弟・明智は兄の助言に感謝「トモ君がいなかったら…」
身長187センチの長身を武器とする明智は、総合7位で決勝に生き残った。スピードは1回目から6秒526と好タイムを出す兄に対し、明智は中盤でかみ合わず7秒774。太ももを叩いて悔しさをあらわにした。2回目は6秒776でガッツポーズ。兄と健闘を称え合い、8位につけた。
「スピードの2本目は本当に緊張していた。隣でトモ君(智亜)が登っていたので、『絶対に追いついてやる』という気持ちだった。そこで自己ベストを出していい流れに乗れた」
ボルダリングは第1課題で最終ホールドに2度手を掛けたが、完登には至らず。第2課題は2トライしてともに落下し、腕を組んで壁を見つめた。熟考して臨んだ3トライ目に長い手足を駆使してクリア。4課題中3つを完登して雄叫びを上げ、ボルダリングは5位で終えた。最後のリードは最終盤で落下し10位となった。
「正直、めちゃくちゃ嬉しいです。2人で決勝に行くには僕次第だった。今回はトモ君がいなかったらメンタル的にやられていた。スピードの2本目の前はトモ君に『いつも通りだよ。大丈夫だから』と言ってもらえた。ボルダリングの前も『リラックスした方がいい』と」
兄弟での出場を目指す東京五輪。智亜は「明智は緊張していた。決勝で戦いたかったので残ってくれてよかった。兄弟で戦えることは嬉しい」と歓迎し、明智は「僕は作戦とか考えるほど強くない。一種目ずつ全力で行くしかない」と活躍を誓った。
スピードはホールドの位置が統一され、高さ15メートルの壁を登ってタイムの速さを競う。ボルダリングは複数のコースを完登できた数で争う。リードはロープを使用し、12メートル以上の壁を競技時間内により高く登った選手の勝利となる。
世界選手権で代表内定しなかった選手は、11月の五輪予選(フランス)、来年4月のアジア選手権で選考。有資格者が2人未満、または3人以上の場合は同5月の複合ジャパンカップで決まる。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)