150周年を迎えた元素の「周期表」に存在する多くのパターンとは?
by Larry
「周期表」は物質を構成する基本単位である元素を、それぞれが持つ物理的または科学的特性が似たもの同士が規則的に並ぶように配列した表のこと。ロシアの化学者であるドミトリ・メンデレーエフによって1869年に考案されたとされる周期表は、2019年で誕生から150年目を迎えます。そんな周期表の歴史や一般的に知られる周期表とは少し違ったさまざまな周期表のパターンについて、学術系メディアのThe Conversationがまとめています。
https://theconversation.com/the-periodic-table-is-150-but-it-could-have-looked-very-different-106899
理科室の壁に貼られたり教科書の末尾に掲載されたりしている周期表は、多くの人が目にしたことがあるはず。メンデレーエフはそんな周期表を初めて産み出したとされていますが、実際にはメンデレーエフ以前から多くの化学者たちが原子を配列した表を作り出そうと試行錯誤していました。
メンデレーエフが周期表を作り出す数十年前にも、イギリスの化学者であるジョン・ドルトンが周期表の作成を試みましたが、このチャレンジは失敗に終わったとのこと。また、メンデレーエフの周期表が作られる数年前には、ドルトンと同じくイギリスの化学者であるジョン・ニューランズが、元素を原子量順にならべると8番目ごとに似た性質の元素が配置される「オクターブの法則」を提唱しています。
では、メンデレーエフが作り出した周期表の何が優れていたのかといえば、それは「表に欠けていた部分」だったそうです。ドルトンやニューランズが作成当時に見つかっていた元素をきれいに並べようとしていたのに対し、メンデレーエフは周期表の中に「現時点では発見されていないが、おそらく存在するであろう元素」のためのスペースを空けていました。
メンデレーエフの周期表がこれ。未知の元素については「?」マークで埋め、その元素量についても記述されています。
メンデレーエフの周期表では「Zn(亜鉛)」の下が空けられており、メンデレーエフはこの未知の元素について「原子量は68、1立方cmあたり6gの密度、融点が非常に低い」といった性質を予言したそうです。そしてメンデレーエフの予言から6年後、フランスの化学者であるポール・ボアボードランによって原子量69.7、密度が1立方cmあたり5.9g、融点が29.8度であるガリウムを発見しました。
同じような予言をメンデレーエフはスカンジウム、ゲルマニウムといった元素についても行ったため、未知の元素が発見されることによってメンデレーエフの周期表の正しさが裏付けられる結果となりました。
一見すると、メンデレーエフの周期表は現在使われている周期表とまるで違うもののように見えてしまいます。これは、メンデレーエフが見逃していた希ガス(第18族元素)のグループについて記述されていないことと、メンデレーエフの表が現在一般的な周期表を左に90度傾けた状態になっていることによるものです。現在一般的な周期表がこれ。
実は、多くの人々が慣れ親しんできた周期表の他にも、化学者によってさまざまな周期表が考案されてきました。たとえばドイツの化学者であったハインリッヒ・バウムハウアーは、不思議ならせん形を描く周期表を考案したとのこと。中心に水素を配置し、中心から外側へ離れるに従って原子量が増加するようになっており、中心から外周に伸びた同一スポーク上に配置された原子は共通の性質を有しています。
20世紀はじめまでに周期表は現在使われている形に落ち着いたそうで、1905年にはメンデレーエフが見逃していた希ガスが一番右端に並ぶようになりました。一方で新たな周期表の作成も一部で行われていたようで、フランスの化学者であったチャールズ・ジャネットは量子論にもとづいた「左ステップ周期表」を作成しています。ジャネットが作成した周期表は現在に至るまで多くの物理学者に好まれており、当時は92の原子までしか見つかっていなかったにもかかわらず、120番目の原子までのスペースを空けている点も興味深いとのこと。
実のところ現在の周期表はジャネットの周期表を発展させた側面が大きく、周期表上で元素がいくつかの種類(元素のブロック)に分類されているのはジャネットの発見によるものです。周期表は全てを正確に表記すると紙面にうまく収まらないため、Fブロック元素であるランタノイド系元素およびアクチノイド系元素については、表の下に切り離す形で表しています。
きれいな周期表の作成を模索する動きはいまだに続いており、3次元的な周期表や……
まるで鉄道路線図のような周期表も考案されています。
また、ビールの種類を周期表に見立てて並べたり……
ディズニーのキャラクターを周期表に並べてみたりといった遊びが行われたりと、周期表は人々の心の中に強く根付いているようです。