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 いまや女性が社会で働くのは当たり前という時代。それに伴い晩婚化が進み、初めて子どもを産む年齢が高くなる晩産化も目立つ。

 厚生労働省が発表した2017年の人口動態調査によれば、第1子出産時の平均年齢は30・7歳。25・7歳だった1975年に比べて5歳ほど上がった。

 有名人からママ友まで、30代や40代での出産は身近になってきている。こうした状況を受けて、高齢出産の定義も変わった。日本産科婦人科学会は、1980年代には30歳以降の出産を「マル高」としていたが、現在は35歳以上を指す。

高齢出産のメリット・デメリットは?

 都内で働くオーバー40女性に尋ねてみると、「この夏に子づくりするつもり」と話してくれたのは、40代なかばの別の女性。高齢出産を経て子育て中という別の女性は「とにかく可愛い。子どもなのに孫相手のように接している(笑)」(40代)と、喜びもひとしおの様子。

 また、高齢出産の経験から、「若い親のようにパニックにならない」(40代)、「仕事で自分の立場を確立してから出産。おかげで無理なく復職できた」(50代)、「金銭的に余裕があったので、疲れたときは家事代行を利用してカバー」(40代)などのメリットをあげる女性たちも。

 年齢を重ねて得られた余裕が、出産や子育てによい影響を与えているようだ。

 一方、デメリットについては、「産後の回復に時間がかかった」(40代)、「義理の親の介護と子育ての両方をワンオペでこなす羽目に」(50代)、「実家の親が年老いて、子どもを預けられない」(40代)、「年齢に引け目を感じて、若いママ集団の輪に入れない」(40代)、「参観日などで若ぶり、子どもに恥ずかしがられた」(40代)といった声が。出産だけでなく、産んだ後にも影響が及んでいる。

 晩産化が進んでいるとはいえ、妊娠・出産できる年齢には限りがある。

 最先端の技術で不妊治療に取り組む医療法人『オーク会』の田口早桐医師はこう話す。

「健康な男女のカップルが避妊せずに性交渉をもち、1年以内に妊娠しない状態であれば不妊と診断されます。年齢とともに妊娠の確率は下がりますから、35歳以上であれば、なるべく早く検査や治療に入るのがおすすめです。自然妊娠は40歳ぐらいまでと考えて」

 不妊の原因はさまざまだが、女性が35歳以上の場合は多くが卵子の老化によるもの。年齢が上がるにつれて妊娠率は低く、流産率は高くなり、出産に至る確率がどんどん低くなる。

「1個の卵子が赤ちゃんとして生まれてくる確率は、35歳で約9%、40歳は約5%です。ほかに何も問題がなく、35歳未満なら、きちんと排卵日に性交渉をもてば計算上、ほぼ100%の確率で約2年以内に妊娠・出産できます。

 ところが、40歳になると、もし妊娠できるとしても、長ければ妊娠まで3年以上かかる。自然の状態では、最終的に妊娠できない可能性も非常に大きいのが現実です」

 不妊治療は、まず検査で原因を調べ、特に問題が見つからなければ『性交渉タイミング法』(タイミング法)『人工授精』『体外受精』と進められるのが一般的だ。

 タイミング法は病院で排卵日を見極め、それに合わせて性交渉をする。人工授精は採取した精子を濃縮し、排卵に合わせて子宮の中に入れる方法で、精子を凍結して使うこともできるため、夫の出張などを気にせずトライできる。

 そして、体外受精では、排卵誘発剤を使って卵巣から複数の卵子を採取し、濃度を調整した精子をふりかけて受精させ、細胞分裂を始めた胚を子宮に移植する。もし男性不妊で精子が少ない場合などは、精子を1つ選び、卵子に針を刺して注入する『顕微授精』を行う。

「いまは20人に1人が体外受精で生まれる時代。凍結技術が上がって、よい状態の胚が複数あれば保存できるのが大きい。着床しなかった場合に負担なく次のトライができて、それで2人目、3人目を産むことも可能です」

 30代後半で不妊治療を始める人は、少しでも若いころの卵子を使ったほうが妊娠の期待ができ、費用対効果もいいと田口先生。

「きょうだいが欲しいなら胚の状態で凍結保存しておくことをすすめています。また、体外受精は卵子を選んで受精させ、分割している胚を移植するので、格段に妊娠率が上がります。40歳前後で初診に来る人には効率を重視して、体外受精の説明から始めます」

気になる費用は?

 厚労省の調査によると、人工授精や体外受精などの不妊治療をした場合、平均費用は193万円。田口先生によると、タイミング法は保険適用で1万円あまり、人工授精は保険適用外で3万円が相場だという。体外受精も保険適用外で、病院によって異なるが約35万円から顕微授精となれば50万〜60万円ほどかかる。

 そのため、国が不妊治療にかかる費用の一部を負担する助成制度をうまく活用したい。体外受精と顕微授精が対象で、1回の治療につき15万円まで(初回のみ30万円まで)支給される。

 保存していた凍結胚を使う場合でも、7万5000円まで助成金を受けることが可能。39歳までなら最大6回、40〜42歳なら通算3回まで利用できる(所得制限あり)。

 自治体によっては国の金額に上乗せをしたり、独自の助成制度を設けていたりするところもあるので、事前に調べておこう。

「確かに、高齢になるほど子どもを授かる確率は低くなりますし、なかには43歳以上の不妊治療を断っている病院もあります。それでも続けていればチャンスはあるし、実際に45歳、46歳で出産した人もいます。

 妊娠性の高血圧症や糖尿病に注意しなければなりませんが、技術は進み可能性は高くなっています。京大のチームがiPS細胞を用いて不妊マウスの正常な生殖細胞を作り、健常な子を出産させたというニュースもあり、医療現場が大きく変わる可能性も出てきました」(田口先生)

 医療技術も、取り巻く環境も、めまぐるしく変わる高齢出産。リアルな実態を知り、適切な対応をしていきたい。

〈PROFILE〉
田口早桐先生 ◎医療法人オーク会・生殖医療専門医。体外受精を積極的に行う大学病院に入局して以来、25年間不妊治療に携わる。個々の状態に合わせた方針を見つけることがモットー。著書に『ポジティブ妊活7つのルール』(主婦の友社)など