かつて北海道庁がキャンペーンのキャッチコピーに使用して以来、半ば「ネタ」としても使われる言葉が「試される大地」だ。厳しい寒さや豊かな自然など、北海道のイメージからは、確かに人間が試されている感が強い。

しかし、どうやら場所によっては、日々の「気温差」にも試されているようだ。ツイッター上で「北海道北見市は日によって20℃近い気温差になることがある」と話題になっているのだ。

広大な試される大地で、なぜ北見だけがさらに試練を課されているのか。Jタウンネットはその事情を探るべく、網走地方気象台に取材を行った。

最高気温30℃からの8℃

数字で見ているだけではイメージが湧きにくいかもしれないが、20℃の気温差はかなりのものだ。27℃が7℃になってしまう。


より試される大地北見(Lincunさん作成, Wikimedia Commonsより)

最初はちょっとした差を誇張して伝えているネタツイートかとも考えたが、調べてみると「北見の気温差がすごい」という投稿は多数確認できる。最近の投稿だけでなく、3〜4年前のものもあった。

もちろん、広く北海道各地で真夏日を記録することはあるのだが、気温差の激しさに言及しているのは北見在住と思われるユーザーばかり。中には冷房をつけたほど暑かった翌日には、ストーブをつけなければいけないほど冷え込んだ年があった、という声も。試され過ぎである。

気象庁の公表している各地の気象データから、6月の北見の気温を見てみると、3〜7日までは最高気温が32℃に達することもあったものの、8日以降は10℃を下回ることも。なんと今日(13日)は雪がちらついたという。


最高気温と最低気温の差もなかなか(画像は気象庁の公式サイトより)

なぜ北見がこれほど試されているのか。2018年6月13日、Jタウンネットが網走気象台にその理由を尋ねたところ、担当者は次のように話してくれた。

「何か特殊な事態が発生しているわけではなく、地理的要因が大きく影響しています。風が山を越えて降りてくると暖かくなる『フェーン現象』という現象があります。春や夏に西から吹く風は暖かいのですが、このフェーン現象によって、北海道では西側の地域がより暖かくなりやすい傾向にあります」

さらに、これに加えて南からも暖かい空気が流れ込むことで、局地的に高い気温を記録することがあるというわけだ。暑くなりやすい理由は分かったが、極端な気温差が生じやすいのはなぜなのだろうか。

「北見はオホーツク、網走地方の中でも内陸に位置していますが、そもそも陸地は熱しやすく冷めやすい環境です。フェーン現象によって一気に気温が上がりますが、その気温が維持されることなくすぐに低下するため、日々の気温差が大きくなりやすいと考えられます。これが冬であれば夏とは逆に、一気に冷え込んだかと思うと寒さが和らぐ、という変化となって表れます」

周りが海に囲まれたような環境であれば熱しにくく冷めにくいため、沖縄などは一度暑くなると、その暑さがしばらく続くことになる。5月中旬には網走地方の最高気温が沖縄を越えたこともあったが、これも内陸部と島の差というわけだ。

地理的要因から生じる気温差のため、別にここ数年で急に北見の気象状況が変化したわけではないのだが、気になることもある。今年は最高気温が30℃を越えた日が2日、28℃も2日記録されているが、去年6月の気象データでは30℃を越えたのは1日だけ、28℃に達した日はないのだ。

「あくまで瞬間的な最高気温のデータであり、地点ごと日々の変化の統計などを取っているわけではないので、異常なのかどうかという判断は我々にはできません。ただ、今年は気温差を感じやすい状況ではあると思います」

30℃近くから20℃台前半に下がっただけでも、「体壊すわ!」などとぼやいている軟弱な記者だが、北見に行った日には倒れるのではないだろうか。涼しくしたり、暖かくしたり慌ただしいと思われるが、北見の読者の方々はくれぐれも体調には気をつけてください。