登山する時にルートや日数などを記入し提出する「登山届」。しかし、青森県内で2017年に起きた山岳遭難した全員が登山届を出していなかった、と2018年5月13日、毎日新聞(ウェブ版)が報じた。

登山届を出すこととで、どのようなメリットがあるのか。Jタウンネット編集部は5月14日、全国47都道府県山岳連盟(協会)が加盟して構成される公益財団法人日本山岳・スポーツクライミング協会に聞いてみた。

導入のきっかけは約60年前

Hirotaka Nakajimaさん撮影、Flickrより

協会担当者によると、登山届が始まったきっかけは、1955年頃に谷川岳(群馬、新潟県境)で遭難事故が相次いだことだ。遭難者が「あまりにも多すぎた」(担当者談)ことから、登山届を出すよう、群馬県で条例が定められた。

記入欄は、登山する山域、山名、入山者の氏名と住所、年齢、性別、生年月日、電話番号など、緊急連絡先の氏名、住所、電話番号など。ほかに、登山の日程、荒天・非常時の対策、回避ルート、テントやロープの数、何日分の食料を持つか、所属している山岳会やサークルの名称と連絡先など、多岐にわたる。法律上、強制的に書かせるものではない。提出先は山域管轄の警察本部や家庭など。

協会ホームページでダウンロードして入手することができる。

協会は、全国での登山届の提出状況は「不明」としながらも、「多くはないだろう」とみている。提出者が増えない理由については、「個人情報保護法が制定されたことが一因」と指摘する。

同法は、2003年に「個人の権利・利益の保護と個人情報の有用性とのバランスを図るため」に制定された。

登山ルートの入り口には登山届の投函箱が設置されているが、鍵を使わないと開けない物もあれば、鍵がないものもある。そのため「連絡先を書く登山届を出すことに抵抗がある人が増えた」と説明した。

だが、協会は遭難時に早期に発見されやすくなることから、登山届の提出を喚起している。

登山届に登山のルートや、「○○日までには下山」などを事細かに書くことで、どこを捜索すればいいのかエリアを絞ることができるなど初期捜索が行いやすくなり、遭難者の救出、救命の可能性が高まるからだという。

協会は「身内への経済的負担が増えないためにも、登山届は提出してほしい」としている。