オイスターバー専業はなぜ、上場間もなく失速したのか(画像:ゼネラル・オイスター)

2000年の設立以来、全国で30の「ガンボ&オイスターバー」などを運営し、オイスターバー専業で成長してきたゼネラル・オイスター(旧ヒューマンウェブ)。

2015年3月に東証マザーズに上場を果たしたものの、わずか2年後の2017年3月期に債務超過に転落。直近決算も赤字が残っており、崖っ縁に立たされている。

強みは食中毒のないカキ

同社はカキの養殖から浄化、加工まで手掛け、海洋深層水で洗浄することで食中毒のない(ウイルスフリー)カキをめざし、自社のオイスターバーで販売する「6次産業化」を標榜している。

外食は参入障壁が低く、ヒットが出るとすぐに類似業態が台頭し、競争が激しくなる。だが、生食のカキは食中毒の懸念があるため、「安全性確保が難しいため競合が少ない」(上場時の説明資料)と差別化を狙っていた。

実際、オイスターバー業界でのシェアは2016年で33.9%(富士経済調べ、以下同)と、2位の12.7%を大きく引き離す業界トップに位置する。


2017年5月に竣工した岩手加工工場(写真:ゼネラル・オイスター)

ところが、上場後間もなくカキを加熱調理する低価格の「カキ小屋ブーム」が起こり、高価格で売ってきたオイスターバー業界を直撃。売上高成長率は過去5年平均の11.6%から、ほぼゼロ成長まで減速した。

ゼネラル・オイスターはデパートや大型商業施設への出店で成長を続けてきた。ただ、出店費用が1億円と高額なことや、ウイルスフリーを実現させるための設備負担が重石となっている。

さらにカキ小屋対策で、客単価を2015年3月期の約3500円から、10%超引き下げたことで収益が低下。外部へのカキの卸売りも居酒屋の専門チェーンが閉店したことで、急激に縮小するなど、上場直後から誤算が相次いだ。

店舗数は上場時の28から30に増えたが、営業利益は2016年3月期から3期連続で赤字の見通しに。店舗の閉店や生産拠点の集約などで大規模な特別損失を2期連続で計上した。

2017年3月末にはついに自己資本が2100万円のマイナスと、上場後わずか2年で債務超過へ転落、短期間での失速は市場に驚きを与えた(純資産は同年9月末にマイナス転落)。

債務超過に転落しても、マザーズ上場3年以内につき上場廃止猶予期間入りは免れた。ただ、この状況が続けば、今2018年3月期に上場廃止猶予期間入りし、来2019年3月期には上場廃止となる。

株価は期待先行で上場の翌月に最高値4875円を付け、上場直後の決算説明会には多くの証券アナリストが出席、会場は熱気に溢れていた。

その後は業績を反映し低迷。今年8月に最安値840円まで下げた後は、900円台で停滞。決算説明会に参加するアナリストも数名にとどまっている。

甘かった経営陣の見通し

見通しの甘さから会社を崖っ縁に追い込んだ経営陣の責任は重いといわざるを得ないが、同社も手をこまぬいているわけではない。

低価格のカキ小屋もブームに一巡感が出ていることに加え、自社の低価格戦略が浸透し、既存店売上高は2017年4〜9月期に前年同期比4.1%増とやっと回復傾向にある。

また岩手県からの補助金8億円を活用した岩手加工工場が今年5月に操業開始、カキフライなどを直営小売店へ供給しながら、11月にはネット通販もスタートさせている。

これらの取り組みにより、直近の2017年4〜9月期(第2四半期)決算では営業赤字が1.5億円(前年同期は3.4億円の赤字)と改善傾向に。岩手加工工場などの先行費用は大きいが、下期はカキの需要期にあたるため、一段の業績改善も見込めそうだ。


吉田秀則CEOはエイベックスなどを経て、2000年に当社を創業した(編集部撮影)

とはいえ、従来のようにオイスターバーに頼った成長が見込めない。

そこで、ゼネラル・オイスターは岩手加工工場のフル稼働や沖縄で進める陸上養殖事業などをテコに、卸売り事業を拡大する方針だ。

実際に高級料亭のうかい亭や世界的ホテルチェーンなど、有名店への納入も増えている。加えて、出店費用が3,000万円程度で済むカジュアルな新業態の路面店も検討を急ぐ。

ただ経営の安定のためには公募増資や第3者割当増資など純資産の上積8が不可欠だ。

2018年1月に臨時株主総会を招集しているが、その中身について同社の吉田秀則CEOは「何も言えない」と明言を避けた。

はたして期待を集めたゼネラル・オイスターは生き残ることができるのか。