野際陽子さんが通ったイタリアンのオーナーらが目にした大女優の素顔
6月13日に亡くなった野際陽子さん。3年前に肺腺がんを患い、治療は成功したが、翌年に再発。再度の摘出手術に成功したものの、病魔に勝つことはできなかった─。
そんな彼女はイタリア料理が好きで、自宅のある都内では行きつけの店が何軒かあった。
「初めて来てくださったのは6年ほど前です。出演された番組で、紹介してくださったこともありました。俳優仲間やご友人の方といらっしゃってくださり、お店でも自然体で裏表のない方でした。芸能人だからといって特別なことを求められたこともありませんし、本当に素敵な方でした」(『チッタ・アルタ』の茂呂岳夫オーナーシェフ)
食事のときも、飾らない人柄はいつもと同じだった。大女優らしからぬ控えめな態度で、感謝の心を忘れない。
「グラナータは昭和57年にオープンしているんですが、その1、2年後にはお見えになっていたと思います。いちばんの思い出は、還暦のお祝いに使っていただいたことですね。有名な俳優さんやスタッフさんなど、100名近くでいらっしゃいました。
野際さんは本当にお美しい立ち姿でしたね。“いいパーティーができました。ありがとう”とねぎらいの言葉をかけていただきました。思い出すと、胸がつまってしまいます……」(『グラナータ』元総支配人の斎藤尚之氏)
セカンドハウスの近くにも、お気に入りのイタリアンレストランがあった。
「10年くらい前から娘さんや弟さんと来ていただいて、しらすのピッツァがお好きでしたね。5年くらい前、電話で配達を頼まれたんです。本当はやっていないんですが、特別デリバリーしました」(『自遊人処』の草柳聡一店長)
配達に行くと、テレビのスタッフが大勢いて、うろたえている店長に、野際さんは、
「螺旋階段からシンデレラみたいに下りてきて、“こっち、こっち!”と呼んだんです。すると、スタッフはみんな“どうぞ、どうぞ!”なんて笑顔になって招き入れてくださって、あらためてスゴいな! と思いましたよ(笑)」(草柳店長)
芸能人仲間だけでなく近所の人たちなど誰からも愛されていた野際さん。彼女のいる場所こそが“やすらぎの郷”だったのだ。