温泉からあがるとき「お湯をかけない方がいい」は本当か?
旅行シーズン真っ只中の今、これから温泉へ行かれるという方も多いのではないでしょうか。さて、温泉好きなら誰でも気になるのが、湯船から上がるときにお湯をかける(上がり湯)と、温泉成分はすべて流れてしまうのか? という素朴な疑問。そこで、メルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす〜飯塚玲児の“一湯”両断!』の著者で温泉通の飯塚さんが、上がり湯の必要性から上手なかけ方まで、詳しく解説しています。
温泉での上手な”上がり湯”の方法とは?
温泉ソムリエであれば誰でもご存じだとは思うが、そうでない読者も多数いるので、今号では表題の件に付いて書いていきたい。
しばしば「温泉では上がり湯をかけないで上がったほうがよい」といわれるがそれには相応の理由がある。 ちなみに上がり湯というのは、お風呂上がりに、全身にお湯をかぶって出る、そのお湯をかける行為のことである。
上がり湯は避けたほうがいいといわれるのは、温泉に浸かって体に付着した成分が洗い流されてしまうからである。 肌に付着した温泉成分は、ものにもよるが、おおむね湯上がり後も2、3時間ほど効果が持続するとされる。
食塩泉などは湯上がりがベタベタとするが、あれも塩分が肌に付着して、肌を保湿し、潤いを保ち、さらに湯冷めを防ぐ効果があるわけだ。 この塩分を真湯(いわゆる水道の湯やシャワーなど)で洗い流してしまうと、前述のような効果は激減してしまう。
ほかにも硫黄泉でいえば、硫黄成分にはメラニンの分解作用があるとされ、これを洗い流してしまうと、せっかく湯上がり後もしばらく続く美白効果が失われてしまうことになる。 硫黄臭いから、といって上がり湯をして上がる女性の方、多いのではなかろうか。
こうしたわけで、せっかくの温泉成分を洗い流してしまう真湯の上がり湯は推奨しない、ということになっているわけだ。
もう一つ、上がり湯をする人が挙げる理由に「不特定多数の人が入ったあときれいな湯で体を洗い流したい」というものがある。 これは理解できる。
ただ、この理由を解決する上手な方法がある。 要するにきれいな湯であればいいわけだから、浴槽に注ぎ込まれている湯口の湯を桶に汲んで、その新鮮な温泉で上がり湯をすればいいのである。
湯口の湯は源泉そのままで熱い場合もあるから、お風呂を上がる前に湯口の湯を桶に汲んで冷ましておき、その湯をかけて上がるのもいい。
源泉かけ流しの場合なら、もっとも酸化していない、最高にフレッシュな湯をかけて上がれるわけだ。 この方法は、まさにいいこと尽くめである。
ただし、硫黄泉や酸性泉などは刺激が強すぎる場合もあり、肌の弱い人などは上がり湯をしないと、かえって肌荒れやただれを起こしてしまうことがある。
現に僕も先日秋田県玉川温泉の源泉浴槽に浸かったあとは、経験的なカンで上がり湯をしないとまずいな、と思って真湯をかけて上がってきた。
この経験的なカンというのは案外簡単なもので、浴槽から上がっても肌がヒリヒリと痛む場合、湯上がり後に肌が赤くなって痛がゆい場合などは、真湯での上がり湯をお薦めしたい。 おおむねこのような場合は、脇の下や、股間の鼠蹊部(ももの付け根あたり)、男性であれば睾丸のウラなどが、ヒリヒリとすることが多いので、目安にしていただければと思う。
さらに1カ所で複数の泉質の湯を持つところでは、酸性泉のあとに塩化物泉に入浴することで、強い酸性成分を塩化物泉が洗い流してくれるという場合もある。 このあたりのことは、温泉ソムリエ協会の遠間家元のメルマガで、非常に詳しく解説されているので、そちらを参照していただきたい。
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こうしたことも、温泉ソムリエの講座を受講すればみんな教えてくれる。
僕は資格マニアではないのだけども、温泉ソムリエアンバサダーのほかにも温泉入浴指導員、高齢者入浴アドバイザー、温泉観光士などの肩書きもある。
このうち最初にとったのが温泉ソムリエの資格である。 これが、温泉の知識をよりいっそう深めて、その後の資格取得につながったことは確かだ。
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『『温泉失格』著者がホンネを明かす〜飯塚玲児の“一湯”両断!』
著者/飯塚玲児(記事一覧/メルマガ)
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
出典元:まぐまぐニュース!