"全仏ジュニア"に関わるある日本の企業

 テニスにおける4大大会の1つである“全仏オープン”のジュニア大会が存在するのをご存知だろうか? 本家の全仏が行われる会場であるローラン・ギャロスがあるパリ近郊において、『大会の特徴でもあるレッドクレーコートで戦う魅力をより多くの若きテニスプレーヤーに提供したい』という思いを元に開催されているものである。

著名な女子テニスプレーヤーであるマルチナ・ヒンギスもこの全仏オープン・ジュニアのタイトルを獲得しており、錦織圭も2006年の同大会・男子シングルにおいてベスト8へ進出し、ダブルスでは日本人初の4大大会ジュニア男子優勝という快挙を成し遂げた。

 

そんな多くのスター選手を生んで来た全仏オープン・ジュニアだが、出場権を手にするにはもちろん世界ジュニア・ランキングで十分なポイントを獲得しなければいけない。ただ、出場権を手に入れるチャンスはそれだけではなく、実は“ワイルドカード”という制度がある。全仏オープン・ジュニア直前5月にパリ郊外で開催される「全仏オープン・ジュニア ワイルドカード選手権大会 in partnership with LONGINES」での優勝者にワイルドカード枠として出場権が与えられる。さらにこのワイルドカード選手権大会に出場するためには、日本を含めた世界6か国にて開催される予選大会で優勝する必要がある。

 

そして、その日本予選大会が、今回2月28日から3月3日にかけて横浜カントリー&アスレティッククラブにて実施された「全仏オープン・ジュニア2017 ワイルドカード選手権大会 in partnership with LONGINES 日本予選」である。これはフランステニス連盟と日本テニス協会が日本のジュニア年代(13〜18歳)の選手を男女それぞれ8名選び、トーナメントで競わせるもの。そして、その勝者が日本の代表として、パリへ派遣される。

 

そして、この大会の運営に携わっているのが、元サッカー日本代表の中田英寿氏や前園真聖氏のマネジメントをしていることで著名なPR会社のサニーサイドアップである。

 

サポートの経緯

「2015年の夏ぐらいに、フランステニス連盟が全仏オープン・ジュニアに向けたワイルドカード選手権大会の各国の予選大会を各地で広げたいという考えがあるということを聞いたんです。そして彼らは日本にも来て、実施可能な会場を探し、開催の可否についても考え始めていた。その時にご縁あって我々のところにもお声がけ頂いたんです。即決でしたね。『ぜひ、このプロジェクトには参画したい!』と。そこから話もまとまって、ローカルのオペレーター、パートナーとして動くという形になりました。」

 

こう語るのは株式会社サニーサイドアップのスポーツプロモーションカンパニーに勤める内藤裕志氏である。現地での大会運営や調整などを担っているグループの事業責任者に立っていたのが彼なのだが、この企画に対してサニーサイドアップが参画したのにも理由がある。

「錦織圭くんが活躍して日本には少なからずテニスブームが起きています。やはり錦織くんが出ているからこそ、テニスが注目されているという状況が続いていると思うんです。ただ、錦織くんだけにフォーカスしなくとも、“テニス”というものは楽しいんだよ、スポーツって楽しいんだよというのをもっと多くの人に感じてほしいと。そのために我々サニーサイドアップがぜひともやりたいと思ったんです」(内藤氏)

 

日本でこの大会を開催するにあたって、全仏オープンおよび本大会のオフィシャルパートナーである時計メーカーのロンジンのブランディングも大きな目的の1つでもある。ただ、フランステニス連盟の成長戦略の中には「第2、第3の錦織をどうやって作っていくか」というテーマも存在する。

 

"クレーで勝てる"日本人を育てるため

全仏オープンの大きな特徴は言うまでもなく“クレーコートでの開催”だ。スペイン出身のラファエル・ナダルが圧倒的な強さを誇っているのだが、スペインのテニスプレーヤーは幼いころからクレーコートに慣れ親しんでおり、これがナダルの全仏における強さの1つの要因であることは間違いない。一方で現在、日本クレーコートが得意とする選手はなかなかいないという現実がある。だからこそ、日本でこの大会をやることで、多くのジュニアプレーヤーによりクレーに慣れてもらい、競技レベルを高めていってもらいたいという狙いがある。

そして何より、この大会を勝ち上がって日本のジュニア年代の選手にローラン・ギャロスでプレーをしてもらい、その喜びを味わってもらいたいという思いがフランステニス連盟にはある。そして、多くのプレーヤーにそのチャンスを与えるのがこの大会だ。

 

アンバサダーとして滝川クリステル氏も関わっている

「フランステニス連盟、日本テニス協会、そしてこの大会を支えるロンジン社が、選手を育成する中で少しでも多くの人たちに赤土のローラン・ギャロスを体験してほしいと思っています。この大会に出場している選手たちは日本のトップレベルを目指す集団にいる選手たちです。トップレベルの選手たちはストレートインで全仏オープン・ジュニアに出場できるのですが、それに手が届きそうで届かないという選手達にも成長するチャンスを手に入れてほしい。実際、昨年この大会に出場していた選手たちが、今年1月に実施された4大大会の1つである全豪オープン・ジュニアにストレートイン出来ているんですよ。そのようなテニスの普及をしていきたいというのがまずあります。

 そして、もう1つが『レッドクレーコートの日本での普及』とレッドクレーでの楽しさをもっと皆さんに知ってほしいという思いです。錦織選手が今年の全仏でのレッドクレーで勝つことをターゲットにしていて、先日行われた日本とフランスとの国別対抗戦(デビスカップ)を休んでまで赤土のコートでいろいろ挑戦をしているんです。全仏というブランディングもそうだし、ローラン・ギャロスという地名についての認識も少しずつ広げられるといいなというふうに思いますね。知っていることで興味が湧いて、かっこいいなと思わせるだけで子供たちはそこを目指すようになると思いますし、『行ってみたいな』『生で見たいな』と思うかもしれない、そういうところを、一歩一歩ですけど我々としてもやっていきたいなと思います。また、これがきっかけで、日本にもレッドクレーコートの導入がもっと増えるといいですね」

 

内藤氏は持てる思いを熱く、こう口にした。次世代の錦織圭を育て、テニスの世界における4大大会の1つである全仏を制す日本人を生むために。そして、歴史と伝統のある全仏オープンの会場でもあるローラン・ギャロスの認知度を高め、日仏の架け橋となるために。テニスという競技軸にとどまらない様々なミッションに、フランステニス連盟と日本テニス協会と共に、サニーサイドアップは挑戦をしている。

 

 

 

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