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グローバル企業が豪ECを牽引

まずオーストラリア国内で人気のECサイトは何か、探ってみましょう。emarketer.comの調べによると(※1)、2014年の豪国内EC 売り上げTOP10のうち、TOP1-3はeBay系サイト、4位はAmazonとなっており、いずれも海外のサイトでした。この上位4サイトで 34.2%のシェアを占めています(豪版Amazon.auは書籍のみ扱っているそうです)。この調査データから、豪消費者は海外サイトを多く利用してい ることが伺えます。

また、JETROの調査では、こんなコメントも紹介されています。

“ビル・ショーテン連邦副財務相によると、オンライン・ショッピ ングの市場規模は推定190億〜240億豪ドル。国内売上全体に占める割合は現時点で3%程度とわずかであり、このうち海外からの輸入は20〜50%であ るという。しかし、11年2月23日付のシドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、オンライン・ショッピングは小売全体の6%に達しており、今後4年間 で年間平均8〜14%のペースで拡大するとの見方もある。” (※2)

つまり、豪国内において、多くのEC利用者が海外から商品を購入しているということのようです。ECサイト売上TOP10のうち3割以上が海外サイ トという事実からも、この割合はとても真実味がありますね。またこれ以外にも、越境利用の多さを裏付ける多くの事実、コメント、定性データが存在します。

豪で越境ECが流行する3つの理由

1:1,000豪ドル以下の輸入は免税

オンラインショッピングで海外から物を仕入れようとする場合、少額貨物免税制度といって、1,000豪ドル以下の商品(タバコ類、酒類は除く)の関 税、財・サービス税(Goods and Services Tax:GST)は免税となるそうです(※3)ほとんどの日用品や消費財は1,000豪ドル以下で買えるでしょうから、越境利用のハードルは当然低くなる でしょう。国内で普通に買うより割安感があるかもしれません。

2:米ドルに対する豪ドル高

豪は英国の連邦共和国ですが、米国の文化も広く根付いており、実際eBayやAmazonなどの米国系ECサイトが広く利用されています。この豪・ 米2国間において、経済的には「米ドルに対する豪ドル高」の傾向がずっと続いており、米国から商品を輸入することにメリットを感じる消費者が存在するのも 要因のひとつといえるでしょう(※4)。また、豪の母国語は英語ですから、日本の文化圏と異なり、英語に抵抗がある人はほとんどいません。海外のサイト利 用の不安がないのは、こうした言語の問題も、理由のひとつとして挙げられると思います。

3:北半球と季節が逆だからシーズン物が安く買える

“季節が逆であるため、衣服では北半球のバーゲン品をシーズン前に購入できるといったメリットもあるとされる”

アメリカやヨーロッパ、日本など、いわゆる先進国とよばれる国々はほとんどが北半球に位置するのに対し、オーストラリアは南半球に位置します。当然 季節も逆になるわけで、北半球が冬のとき豪は夏、北半球が夏のとき豪は冬になります。この違いを利用して、洋服などのシーズン物の商品を購入する際、すで に季節が終了してバーゲン品に移行した商品を手ごろな値段で買う、というのが流行っているそうです。

筆者が出張したときも、こんな体験をしました。ちょうど日本が真夏の時期、7〜9月に行ったのですが、メルボルンは真冬。気温も10度以下が続き、 コートと手袋は必須でした。冬が終わりかける8月下旬になると、アパレルショップでは春物が出始め、冬物はセールに移行します。また、16年8月現在は円 高豪ドル安が進んでおり、1豪ドル78円〜80円前後でした。こうしたことから、「いまこっちで冬物を買えば、日本で冬が始まる前に安く良いものが手に入 るのでは?」と思い、たくさん冬物を仕入れました。

こんな感じで、オーストラリアの人たちは、季節が逆なのを利用してECサイトでの買い物を楽しんでいるのではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか。オーストラリアのEC事情は、日本とはかなり性質が異なることが分かります。その土地の文化や気候、経済的状況などによってECの利用の仕方も違ってくるのは、とても興味深いことですね。

[参考文献]
※1 http://www.emarketer.com/Article/Australian-Retail-Ecommerce-Sales-Top-10-Billion-2015/1011823
※2オーストラリアのサービス産業基礎調査 2011年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ)より
※3 JETRO https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-051026.html
※4 ニッセイアセットマネジメント オーストラリアレポート
http://www.nam.co.jp/fundinfo/special/australia/pdf/20160512_FT.pdf