「べっぴんさん」89話。ドラムが煽る母娘バトル
連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第16週「届かぬ心」第89回 1月19日(木)放送より。
脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり
さくら(井頭愛海)の誕生日、すみれ(芳根京子)は珍しく仕事を切り上げ、御祝を用意して待っていたが、さくらはなかなか帰ってこない。心配して探しに出たすみれは、ナイトクラブ〈青い月〉で踊るさくらを見つけて逆上する。と、そこへ栄輔(松下優也)が現れて。
約束を果たせないすみれに、さくらはもう期待できなくなっていた。「絶対なんて言わないほうがいい」と
すみれに言うさくらのほうが大人だ。なんですみれはそんなに忙しいのか。家内制手工業的なやり方で、こだわりの商品づくりを行っているからとはいえ、紀夫(永山絢斗)のほうが時間ありそう。良子(百田夏菜子)が気を効かせて、今日(さくらの誕生日)だけは早く帰ってと伝言しなければ、また残業していたかもしれないすみれ。思い込んだら、それだけになってしまう不器用なタイプなのだろう。
でも娘にはそんなことはわからない。ただただ寂しくて、その穴を埋めるために、受け入れてくれる二郎(林遣都)の元へと行ってしまう。
〈青い月〉で踊るさくらは別人のように生き生き笑っている。彼女のなかにもきっと、すみれがキアリスに注ぐような情熱がある。でもそれが注ぐ対象がわからないまま渦巻き、二郎のドラムを聞くと暴れだしてしまうようで。これぞ思春期。その姿を、いけないものを見たように騒ぎ立てるすみれ。そこに二郎のドラムが激しく鳴り渡る。母と娘のぶつかりあいが、台詞の応酬ではなくドラムで表現された劇的な場面になった。そういえば、「カーネーション」では熱の象徴はだんじりだった。
ドラムで盛り上げたあとに、栄輔登場。ばりっと決めていたが、サングラス外すと、あの頃と変わらない優しい瞳が・・・。松任谷由実流れてきそうな感じ。
すみれ、さくら、栄輔。一時期は親子のようだった3人が再び一堂に会する。ナイトクラブの色味といい、
この関係性といい、東海テレビの昼ドラ色が・・・。
春の嵐が吹き荒れるか!
だが、すみれと栄輔の絡みより、潔と栄輔が気になる。この場面の前に、潔(高良健吾)がこれからは若者が服を買う時代と言っていた。すでに若者の服で先端を走り出している栄輔のエイスと、後進になるであろう潔のオライオンとはどんな関わりになるか。
モデルであるVAN とレナウンの歴史では、VANの石津謙介(栄輔のモデル)はレナウンの前身・佐々木営業所(坂東営業所のモデル)の関連会社で働いていて、のちに東京のレナウン研究室に入り、そこで服作りの力をつけてやがて独立し、いまの大阪・アメリカ村にVANの前身となる石津商店をおこす。
「VAN ストリーズ ─石津謙介とアイビーの時代」(宇田川悟/集英社新書)を読むと、戦後、石津が仲間とともに洋服をつくっていく姿が大阪の闇市のことなども盛り込んで描かれていて、キアリスのモデルファミリアに関する資料不足を補ってもらえる。事務所兼住居だったエピソードや服のデザインを考えるときのエピソードなど、「べっぴんさん」に通じるところがあって楽しく読める。
1月13日放送の、あさイチで、こだわりの演技トークをしていた蓮佛美沙子。役の感情の掘り下げ方も深いが、関西弁でなにげな日常会話の再現率の高さにも目をみはる。夫の部下が家にあそびにきたときの、ちょっとした会話が滑らか。芳根京子も同じトーンなので、方言指導の方のお手本を完コピしていると推測する。
(木俣冬)
脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり
89話はこんな話
さくら(井頭愛海)の誕生日、すみれ(芳根京子)は珍しく仕事を切り上げ、御祝を用意して待っていたが、さくらはなかなか帰ってこない。心配して探しに出たすみれは、ナイトクラブ〈青い月〉で踊るさくらを見つけて逆上する。と、そこへ栄輔(松下優也)が現れて。
なんですみれはそんなに忙しいのか
約束を果たせないすみれに、さくらはもう期待できなくなっていた。「絶対なんて言わないほうがいい」と
すみれに言うさくらのほうが大人だ。なんですみれはそんなに忙しいのか。家内制手工業的なやり方で、こだわりの商品づくりを行っているからとはいえ、紀夫(永山絢斗)のほうが時間ありそう。良子(百田夏菜子)が気を効かせて、今日(さくらの誕生日)だけは早く帰ってと伝言しなければ、また残業していたかもしれないすみれ。思い込んだら、それだけになってしまう不器用なタイプなのだろう。
でも娘にはそんなことはわからない。ただただ寂しくて、その穴を埋めるために、受け入れてくれる二郎(林遣都)の元へと行ってしまう。
二郎のドラムのリズムが
〈青い月〉で踊るさくらは別人のように生き生き笑っている。彼女のなかにもきっと、すみれがキアリスに注ぐような情熱がある。でもそれが注ぐ対象がわからないまま渦巻き、二郎のドラムを聞くと暴れだしてしまうようで。これぞ思春期。その姿を、いけないものを見たように騒ぎ立てるすみれ。そこに二郎のドラムが激しく鳴り渡る。母と娘のぶつかりあいが、台詞の応酬ではなくドラムで表現された劇的な場面になった。そういえば、「カーネーション」では熱の象徴はだんじりだった。
すみれと栄輔の再会!
ドラムで盛り上げたあとに、栄輔登場。ばりっと決めていたが、サングラス外すと、あの頃と変わらない優しい瞳が・・・。松任谷由実流れてきそうな感じ。
すみれ、さくら、栄輔。一時期は親子のようだった3人が再び一堂に会する。ナイトクラブの色味といい、
この関係性といい、東海テレビの昼ドラ色が・・・。
春の嵐が吹き荒れるか!
だが、すみれと栄輔の絡みより、潔と栄輔が気になる。この場面の前に、潔(高良健吾)がこれからは若者が服を買う時代と言っていた。すでに若者の服で先端を走り出している栄輔のエイスと、後進になるであろう潔のオライオンとはどんな関わりになるか。
モデルであるVAN とレナウンの歴史では、VANの石津謙介(栄輔のモデル)はレナウンの前身・佐々木営業所(坂東営業所のモデル)の関連会社で働いていて、のちに東京のレナウン研究室に入り、そこで服作りの力をつけてやがて独立し、いまの大阪・アメリカ村にVANの前身となる石津商店をおこす。
「VAN ストリーズ ─石津謙介とアイビーの時代」(宇田川悟/集英社新書)を読むと、戦後、石津が仲間とともに洋服をつくっていく姿が大阪の闇市のことなども盛り込んで描かれていて、キアリスのモデルファミリアに関する資料不足を補ってもらえる。事務所兼住居だったエピソードや服のデザインを考えるときのエピソードなど、「べっぴんさん」に通じるところがあって楽しく読める。
蓮佛美沙子のなにげない喋り方がすごい
1月13日放送の、あさイチで、こだわりの演技トークをしていた蓮佛美沙子。役の感情の掘り下げ方も深いが、関西弁でなにげな日常会話の再現率の高さにも目をみはる。夫の部下が家にあそびにきたときの、ちょっとした会話が滑らか。芳根京子も同じトーンなので、方言指導の方のお手本を完コピしていると推測する。
(木俣冬)