2016年にもっともシェアされた動画広告ランキングTop20!多くの人の心を動かしたクリエイティブの共通点とは
本ランキングは、FacebookおよびYouTubeで公開された動画広告(映画やテレビ番組のトレイラー広告は除く)を対象に、2016年1月1日から11月29日にかけてソーシャルメディアなどで「シェア」された回数をもとに作成されています。受動的な視聴(≒再生回数)ではなく、能動的なシェアという行動が指標となっているため、視聴者のエンゲージメントの高さのランキングと捉えることができます。
まず、20位から11位までは以下の通りです。
20位 Nintendo「First Look at Nintendo Switch」544,585シェア
19位 Mentos Indonesia「Mentos Mentors」548,334シェア(インドネシア)
18位 Facebook「Aquila Test Flight」564,123シェア
17位 Momondo「The DNA Journey」585,903シェア(デンマーク)
16位 Knorr「Spirit of Ramadan」590,386シェア(バングラデシュ)
15位 OK Go & Morton Salt「The One Moment」608,419シェア
14位 Samsung「Introducing Samsung Galaxy S7」616,128シェア
13位 Volkswagen「Trailer Assist」640,995シェア(ノルウェー)
12位 Nike Basketball「The Conductor」641,359シェア
11位 McDonald’s Philippines「Tuloy Pa Rin」699,396シェア(フィリピン)
それでは10位からはひとつずつ見ていきましょう。
10位 7 Eleven Thailand「Teachers」792,328シェア(タイ)
タイでは1月16日の「教師の日」に、生徒が教師に感謝の意を表す習慣があります。このタイミングに合わせてタイのセブンイレブンが公開したのが本作です。貧しい子どもたちがきちんと教育を受けられるよう、土地の買収を持ちかけられても拒否し、生徒に寄り添い、小さな学校を守り続けている96歳の校長先生を取り上げています。8分57秒という長尺ですが、実話に基づく力強いストーリーが多くの反響を呼びました(英語の字幕を表示してご覧ください)。
9位 Cadbury’s Dairy Milk「Aliens」852,895シェア(カナダ)
とある星に住むエイリアンたちが、地球人が残していったCadbury社のチョコレートを食べてご機嫌に踊り出すというキモカワイイ動画。強いBGMが耳に残り、クセになりそうな動画です。
8位 Ariel「#sharetheload」877,558シェア(インド)
洗剤ブランドArielの動画に登場するのは、家事も仕事も育児もこなす妻と、テレビを見てのんびりしている夫。そんな娘家族の様子を見た父親は、自分も妻に同じように負担をかけ、娘の世代にもそれが当たり前だと思わせてしまったのだと反省。これからは少しでも家事を手伝おうと決心し、自宅に戻って早速、持ち帰った洗濯物を自分で洗ってみるというストーリーが展開されます。
誰にでもできる簡単な洗濯は母親だけの仕事ではないはず、と男性の家事参加を呼びかけている本作に対し、YouTubeやFacebookでは多くのコメントが投稿され、人々に考えるきっかけを与えました。
7位 Doritos「Ultrasound」893,465シェア
DoritosがスーパーボウルのCMとして公開した本作は、お腹の中の赤ちゃんがドリトスに反応し、ついには…というシンプルな企画です。視聴者の反応は賛否真っ二つに分かれたようですが、この分かりやすさとインパクトの強さもあり、Doritosの名前が人々の記憶に残ったことは間違いないでしょう。
6位 Nike「The Switch」969,650シェア
今年のEuro 2016に合わせてNikeが公開した本作は、試合中にクリスティアーノ・ロナウドとボールボーイのチャーリーが衝突し、入れ替わってしまうという設定。それぞれが新しい環境で努力を続け、ついには試合で再会するというストーリーが繰り広げられます。
スター選手たちの起用や、莫大な予算をかけた大掛かりな撮影など、注目を集める要因はさまざまですが、誰もが純粋に楽しめるエンターテインメント性抜群のコンテンツに仕上がっています。
5位 OK Go & S7 Airlines「Upside Down and Inside Out」1,240,842シェア
誰も思い付かないような突飛なアイデアのミュージックビデオで人気のロックバンド、OK Goが、ロシアの航空会社S7 Airlinesとのタイアップで制作したのが本作です。飛行機内で無重力状態を作り出し、その中でメンバーが息の合ったパフォーマンスを見せています。世界初の“無重力MV”に目が釘付けになった人も多いのではないでしょうか。独創的なアイデアやチャレンジは見る人の心を掴む力があります。
OK GoがMorton Solt社とのタイアップで制作した、スーパースロー映像を用いた最新作も15位にランクインしています。
4位 Vodafone「Ramadan 2016」1,435,350シェア(エジプト)
イスラム教のラマダンに際してエジプトのVodafoneが公開した動画では、エジプトのスター11人が登場し、友人や隣人までも含めた“大家族”で集うことの幸せをテーマとするミュージカルでラマダンをお祝いしています。エジプトの懐かしい人形劇をベースにしていることもあり、多くの人に親しまれ、公開からわずか5時間で、Facebook動画が100万回再生を越えました。
3位 Shell「Best Day Of My Life | #makethefuture」1,683,072シェア
5大陸から集まった世界的アーティスト6名による豪華なミュージック動画を公開したのは、石油会社のShell社です。エネルギー需要がこのまま増加し続けると、いずれ資源が枯渇すると言われています。Shell社は、動画内で模型で示されているような新技術の開発に積極的に投資し、サステイナブルな解決策を見出そうと試みていますが、それと同時に、特に若年層におけるエネルギー問題への関心を高めたいという狙いがあり、本作が企画されました。
エネルギー産業というと堅いイメージが先行しますが、アーティストの力を借りることで、見事なエンターテインメント作品に仕上がっています。
2位 Channel 4「We Are The Superhumans」1,851,533シェア(英)
リオ・パラリンピックに合わせて英テレビ局Channel 4が公開したのは、さまざまなハンデキャップを抱えるアスリートやミュージシャン、一般の人々による壮大なミュージカルビデオ。「Yes I Can」という明るくポジティブな歌に乗せて、総勢140名がそれぞれのスタイルで競技や演奏、仕事や子育てに励む姿を映し出しています。
アスリートだけでなく、一般の障がい者が登場しており、ハンデキャップを抱えながらも一般の人と同じように仕事や子育てに取り組む人々が皆“Super Human”であると讃えることで、社会的にも意義のあるコンテンツになっています。
1位 John Lewis「#BusterTheBoxer」1,949,387シェア(英)
そして1位を獲得したのが、なんと11月9日公開の本作でした(動画に関する解説はこちらをご覧ください)。わずか20日ほどで200万近いシェアを獲得したとは驚きです。世界中がJohn Lewisのクリスマス動画を期待して待っていたことの表れ、そして良い意味での意外性が人々に広く受け入れらたことの証と言えるでしょう。
このランキングに対し、UnrulyのグローバルVPは「2016年は世界的に政治が大きく動き、不安定感が増した年だった。そんな世相を反映し、動画広告は一種の現実逃避を人々に提供している。ハンデキャップを持つ人たちの驚異的な能力や、Nikeの現実離れしたパワフルな物語、校長先生の高潔な人間性、昔ながらの男女観への果敢な挑戦など、不安な世の中だからこそ“強さ”を描く作品が並んだ」と述べています。
最後に、今回の20作品には米国、英国だけでなく、デンマーク、エジプト、タイ、バングラデシュ、インド、ノルウェー、フィリピン、インドネシアと、10カ国の作品がエントリーしました。家族愛やスポーツ、音楽など、普遍的なテーマやモチーフを取り入れることで、国境を越えて広まったのでしょう。
来年のトップ20には、日本発の動画が加わることを期待したいと思います。