理系学生へのニーズが顕著な最新就活動向/増沢 隆太
・理系が欲しい企業
企業の強い採用意欲を反映し、リーマンショック以前の採用水準を回復したという調査が合い次いでいます。実際に採用の場面に企業側からも学生側からも関わり、就活の好環境は実感できます。中でも理系学生はバブル期に象徴される好採用環境下では人気です。マイナビの「2016年度(2017年卒)新卒採用・就職戦線総括」では、前年度の2016年卒就活に比べ、他のセグメントより理系学生ニーズの伸びが特に17就活で目立ちます。
今年の3月から、いわゆる企業広報解禁のタイミングと同時に多数の企業が自社説明会や合同説明会を始めました。実際には3月1日を待たずに行われた説明会は少なくないのですが、とりあえず大手を振って(?)開催できる3月は、やはり怒濤のように説明会やセミナーが開かれました。
私もゲスト講演を掛け持ちするほどそうした催しに出ましたが、中でも理系学生を対象とした合同説明会はたくさんの企業を集めていました。自分が出演するイベントで出展企業の方と交流するようにしていますが、企業の採用現場のナマの声が聞けとても参考になります。実際理系学生が欲しいという企業では、会社から採用ノルマを課され奮闘していることがわかります。
・理系学生の動き
ではその対象となっている理系学生の動きはどうでしょう。全般的に見れば、やはり採用好環境であることは間違いないようです。特に上位校と呼ばれる旧帝早慶等では早々と内々定を獲得した学生は後を絶ちませんでした。複数内定も相当出たと思います。上位校だけでなく、中堅でも、理系人気は健在で、企業が優秀と判断する学生には、中堅以下の大学でも複数内定者はもちろん出ています。
一方学生が困ったのは採用での苦戦より、企業選びだったといえると思います。つまり過去3年、政府の介入もあって毎年就活時期をコロコロと変更した結果、昨年より2ヵ月前倒しで進んだこの17卒就活では、採用が短期化しました。3月の広報解禁時からも内々定はこっそり出始め、6月1日の採用解禁日には続々と企業が内々定を出していきました。
結果として内定を獲得したものの、内定ブルーまでいかなくとも、これで良かったのかという自分の決定に疑問を感じる学生は、例年以上に多かったのではないでしょうか。
・2018就活に向けての学生の準備
2018卒就活は今の17就活と同じタイミングで行われます。経団連申し合わせを変更した15年就活。安倍首相の声かけで、突然時期再変更した16年就活。そのさんざんな結果に再び時期変更した現17年就活と、翻弄され続けた就活タイミングが3年ぶりに「前年と同じ」になります。
これはやはり就活する学生にも、採用する企業にも安心感をもたらすでしょう。確実に現17就活が参考になるからです。就活情報会社の調査結果も、過去3年、毎年時期変更がなされた結果、月次比較ができません。当然月で比較しても、就活時期が異なりますので意味がありません。リテラシーがより一層求められますが、少なくとも18就活は確実に17就活を踏襲するのですから、学生は失敗した就活学生の例にならわないことを、企業は採用に苦しんだ例をならわないよう準備が可能です。
学生はとにかく出足のつまづきが最後まで影響します。短期化したことで、出足で出遅れればそれをずっと引きずることになります。特に「3/1から考え始めた」学生は、上位校であって大苦戦しました。全国で同じことが起きています。3/1から動くためには、その前から方針を決め、「3/1から動ける」準備が必要です。2018就活ではぜひこのスタート時期を意識して下さい。マイナビ2018では私がプロデュースした「理系の選択」という特集ページが公開されていますので、ぜひご一読下さい。(「マイナビ 理系の選択」で検索!)
・企業の準備
企業側は焦って採用を始めたものの、学生の決心が固まる前に採用が終わってしまい、特に知名度で劣るB2B系企業、中小企業は例年以上に内定辞退が起きたようです。有名企業・人気企業と真正面から競走しても残念ながら勝ち目はありません。むしろ「内定者確保」より、「入社者確保」こそが究極の戦略目標であることをあらためて意識し、いたずらに早期化に踊らされず、しっかり学生の理解を養う必要があります。
もたもたしていたら他社に逃げられてしまうという焦りはもちろん理解できます。全く何もせず指をくわえて見ているのではありません。こちら(会社側)からのコンタクトや情報発信は当然早期から行う必要があります。ただし焦って囲い込みをしようとしても、無理やりな内定受諾強要に意味はありません。オワハラ自体、かなり減ったと感じますが、それはオワハラで無理やり確保した内定など、何の意味もないことを企業側が理解したからだと思います。
とにかく最も重要なのは入社者の確保です。キラキラ、イキイキした社員の非の打ちどころの無い話に説得力はありません。学生もウソくささを見抜きます。むしろ正直に、良いこともあれば悪いこともある、会社の苦手部分も含めて情報をわかりやすくコミュニケーションした企業には、それなりに内定者の歩留まりは良いようです。学生にばかりコミュニケーション力を求める前に、企業自体、真のコミュニケーション力はやはり採用においても重要です。
各大学が主催するオンキャンパスのリクルーティングはやはり有効だといえます。予算や人員の配分をしっかり行い、上記のような説得力を持つ情報発信ができるなら、積極的に活用されるべきでしょう。
早ければすでに大学との接点は始まっていると思いますが、ぜひ学生、企業の皆さんが悔いのない成果となりますよう、戦略観をもって取り組んで下さい。