一眼レフに匹敵するボケの表現力、iPhone 7 PlusのデュアルレンズとRAW撮影を徹底検証する

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iPhone 7の携帯性に引かれつつも、デュアルレンズに魅力を感じてiPhone 7 Plusを選んだ。そんな判断をしたのは筆者だけではないでしょう。望遠対応になったiPhone 7 Plusは、撮影領域を大きく広げるiPhoneカメラの革新です。

そして、そのデュアルレンズを生かした撮影機能のひとつ「ポートレートカメラ」(ベータ版)が先日公開のiOS 10.1で使用可能になりました。ポートレートカメラを使ってどんな写真が撮れるのか。7ではなく7 Plusを選ぶ積極的な理由は何なのか。新機能ポートレートカメラをチェックしつつ、iPhone 7 Plusカメラの魅力を探っていきましょう。

【ギャラリー】一眼レフに匹敵するボケの表現力 (21枚)

ポートレートモードで楽しむボケ写真

ポートレートカメラは、一眼レフのようなボケ味のある写真が簡単に撮影できる機能です。広角と望遠の2つのレンズが被写体の奥行きを9段階に識別し、その情報をもとにリアルタイムで画像処理を行い、被写界深度が浅い状態を擬似的に作り出せるようになっています。

使い方は、カメラアプリから「ポートレート」を選び、被写体にレンズを向けてシャッターを切るだけ。注意点は、被写体までの距離を約40〜240cm程度空けること。範囲外だと警告が表示され、ボケ効果は得られません。明るさが足りない場合も機能しません。最低でも家庭の室内程度の明るさが必要です。

ボケの度合いはカメラまかせで、特に設定すべきオプションはありません。必要に応じてセルフタイマーを併用したり、画面をタップしてフォーカス位置を決めたり、露出補正を適用することは可能です。設定から「通常の写真を残す」を選んでおくと、効果オン/オフの2枚を保存できます。

上の写真は、左が効果オン、右が効果オフです。背景の木々がふんわりとぼけて、人物のみを浮かび上がらせることができました。デュアルではなく1つのレンズを使用し、画像処理のみで背景ボケを作り出すカメラはこれまでにもありましたが、それに比べてボケ方はごく自然。輪郭検出もほぼ正確で、ボケの境目に違和感はありません。

人物以外の被写体にもボケ効果は有効です。ただ注意したいのは、色や絵柄が背景に近似している被写体や、形状が複雑すぎる被写体では、輪郭を正しく検出ができない場合があることです。下の作例では、看板のエッジ部分にまで背景ボケが少々食い込んでしまいました。このあたりは正式版での改善に期待です。

次に、一眼レフカメラと比較してみましょう。左はiPhone 7 Plusのポートレートカメラで、右は50mmレンズを装着したフルサイズ機キヤノン「EOS 6D」で撮影したもの。一眼レフは絞り値を変えながら複数のカットを撮りましたが、ここに掲載したのはボケの度合いが最も近かった絞りF4の写真です。

どちらが一眼レフで撮影したのか分からないくらい、ポートレートカメラの仕上がりは秀逸です。合焦部とボケのなじみ方にはやや差がありますが、拡大してアラ探しをしない限り不都合は感じません。ポートレートカメラはおおよそ、フルサイズ一眼の焦点距離50mm前後、絞り値F2.8〜F4に匹敵するボケが得られると考えていいでしょう。

そもそもiPhone 7 Plusは広角側1/3型、望遠側1/3.6型という小さなセンサーを搭載したカメラです。にもかかわらずポートレートカメラを使うことで、その50倍以上のセンサーサイズがあるフルサイズ一眼レフに迫るボケ表現が可能になるというわけです。お見事です。

撮影領域を広げるデュアルレンズの実力

続いて、ポートレートカメラ以外の、iPhone 7 Plusのカメラ性能を見ていきましょう。レンズの焦点距離と開放値は、広角が3.99mm(35mm判換算28mm相当)のF1.8で、望遠が6.6mm(35mm判換算56mm相当)のF2.8。光学式手ブレ補正は、広角レンズのみ対応しています。広角と望遠の切り替えは、純正カメラアプリの場合、画面内のボタンで操作します。

下の写真は、高層建築の渡り廊下を真下から見上げるアングルで捉えたもの。左が広角で、右が望遠で撮影。色ズレや歪曲といった各種のレンズ収差は、撮影時にカメラ内で自動補正され、広角/望遠ともに歪みはほとんど目立たず、四隅までシャープな描写が得られました。

次は、テーマパークに展示された人形です。広角レンズで全体の状況を捉え、望遠レンズで特定の被写体に迫る、といった使い分けができます。ほかのiPhoneとは異なり、デジタルズームを使わずに寄りの撮影ができることは、画質重視のユーザーにはありがたいメリットです。

さらに望遠レンズには、背景を整理したり、被写体の歪みを抑えたりできるメリットもあります。次の写真は、紅葉をクローズアップで撮影したもの。広角レンズで接写した場合(左)と、望遠レンズで接写した場合(右)を比較すると、メインの紅葉の大きさはほぼ同じですが、背景の見え方が異なる点に注目して下さい。広角では背景に広い範囲が写り込みますが、望遠では背景を青空のみにして、紅葉をいっそう目立たせることができます。

次は、ミニカーの物撮りカットを見てみましょう。画面内でのサイズがほぼ同じになるように、広角レンズは約20cmの距離から(左)、望遠レンズは約40cmの距離から(右)それぞれ撮影しました。広角では遠近感が強調されて、車のフォルムがやや不自然ですが、望遠では見た目の印象に近い素直な写りとなりました。

撮影時に気を付けたいのは、カメラアプリ内あるボタンを押して広角から望遠に切り替えても、薄暗いシーンでは望遠レンズにはならない点です。この場合、広角レンズ+デジタルズームでの撮影になってしまいます。望遠レンズは手ブレ補正がない上に開放値がやや暗く、暗所ではブレの危険性が高くなるため、ブレ防止の理由で、このような仕様になっているようです。また接写の際も、望遠レンズではなく、広角+デジタルズームに切り替わります。望遠レンズは、広角レンズに比べて最短撮影距離が長いためです。

こうしたレンズの自動切り替えをおせっかいに感じる場合は、純正以外のカメラアプリを使うことで回避できます。Lightroom mobileやProCam、ProCameraといったアプリは、ユーザーによる広角/望遠の確実な切り替えができます。

さらに高画質を引き出せるRAW撮影のメリット

デュアルレンズの光学性能を最大限に発揮させるワザとしてRAW記録についても紹介しておきましょう。ご存じのようにiOS 10から、iPhone 6s以降の製品はRAW記録に対応しました。残念ながら純正カメラアプリではRAW記録はできませんが、前述したLightroom mobileやProCam、ProCameraといったサードパーティアプリでは、記録フォーマットとしてJPEGのほかにRAW(DNG形式)が選択できます。

次の写真は、Lightroom mobileを使ってRAW撮影し、同アプリの現像機能によってJPEG出力したものです。レンズは望遠を使用。苔で覆われた原生林をリアルな質感で再現できました。

JPEGとRAWでどのくらいの差があるかは、2つのフォーマットで撮り比べた次の拡大画像を見ると一目瞭然です。JPEG(左)では、撮影時にカメラ内でノイズリダクション処理が加わるため、ディテールがつぶれて拡大すると塗り絵のような表現になっています。一方でRAW(右)は、苔や樹木の細かい部分まできっちりと描写できています。

この違いは、高感度で撮影したときや、後処理を加えたときにいっそう顕著になります。下のカットはProCameraを使ってRAW+JPEGモードで撮影。レンズは広角、感度はISO1600を選択。その2枚をLightroomを使って明るく補正したものです。JPEG(左)では後処理でも回避できない暗部ノイズが目立ちますが、RAW(右)ではクリアな写りが得られました。

個人的には、これまでのiPhoneカメラはメモ用に限定していましたが、デュアルレンズとRAW記録に対応したiPhone 7 Plusなら作品制作用途にも使える、という感想を持ちました。

もちろん一眼レフを持参しているときはあえてiPhone 7 Plusで撮る理由はありませんが、荷物を持たないちょっとした散歩がてらでも、カメラを取り出すのがおっくうになる雨の日でも、常に高画質のスナップが楽しめるという点では、最高の道具になりそうです。

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