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トヨタ自動車とスズキは10月12日、共同で会見し、提携すると発表した。環境、安全、情報技術などの複数分野で連携して協力するというが、具体的に合意した項目が何一つないのに、その席にはトヨタとスズキの両トップが並ぶという超豪華な会見だった。その会見の背景には何があるのか、狙いは何か。真相に迫った。(ジャーナリスト 井元康一郎)

会見をやること自体が目的!?
「何をやるか」は未定の提携会見

 10月12日、急遽開かれたトヨタ自動車とスズキの共同会見。トヨタ東京本社に設けられた会見の席に姿を現したのは、40年にわたってスズキの“最高指導者”として君臨し続けてきた鈴木修会長。迎えたのはトヨタの創業家出身である豊田章男社長。

 88歳と60歳。親子ほど年齢の違うこの2人が相まみえた会見の内容は「業務提携に向けた検討の開始」というものだ。会見では環境、安全、情報技術といった大まかな分野について言及はあったものの、何をやるかについては全部「これから考える」だった。

 妙な会見である。普通であれば、少なくとも何らかの項目について合意に至った後に発表するのが提携というものであるからだ。

 トヨタは昨年、マツダと提携関係を結んだ。そのときも具体的なことは決まっておらず、これから考えるとしたものの、包括提携を行うという基本合意には達していた。今回はその段階にすら達せず、あくまで“検討”。仮に会見をやるとしても、役員が出れば事足りる話だ。その席にトヨタとスズキの両トップが並ぶというのは、どうみてもオーバークオリティである。

 ある業界事情通は言う。

「今回の会見は、この会見をやるということ自体が最大の目的なのでは。鈴木会長は先にトヨタの豊田章一郎名誉会長と話をしたと言っている。最初に話をしたのは今年の9月と言っていたが、本当はずっと前から話をしていた可能性がある。スズキはそれまで絶対に呑まないと言っていた軽自動車増税を受け入れた。また、トヨタ傘下の軽メーカー、ダイハツとの販売競争が激化する中で、自分から“お行儀の悪い売り方はもうやめにする”と、自ら退いた。それらがトヨタとの提携の地ならしだったと考えれば、スズキのここ2年ほどの行動は全部つじつまが合う」

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