新たな技術に目を奪われてばかりのスマートシティ計画は成功しない
最新のスマート技術がヘッドラインを賑わせているなか、業界の専門家たちは「市民と共にスマートシティの取り組みに注力すべきだ」と警鐘を鳴らしている。これはスマートシティ計画を主導するリーダーたちを集め、カリフォルニア州サンタクララで行われた、技術と持続可能性をテーマにしたカンファレンス『VERGE 16』に参加した人の言葉だ。
このカンファレンスの主な意向としては、政府・業界のリーダーたちは次々と現れる斬新な技術に目を奪われることなく、本来の目的や長期的な視点で描いたスマートシティ計画の道筋を見失わないようにしなければならない、ということが挙げられる。
そして、「特に重要なのは、そういった技術と市民の生活に影響を及ぼすいまの政治経済との調和である。技術的ソリューションはすでにある。我々が着目すべきはガバナンスの問題だ」と、オークランドの最高レジリエンス責任者 キレイン・ジェイン氏は語る。
スマートシティプラットフォームや関連設備の急増は、部分的に都市インフラへの統合が簡単になってきていることの影響と言える。
だが、「政府は技術ありきではなく、まず市民のニーズに合った戦略を立てることが肝要である」と彼らは釘をさす。
「そのためにも『user-centric design(ユーザ中心のデザイン)』という言葉を使った要件提案を先週発表したところだ」と、ジェイン氏は言う。
スマートシティ計画の恩恵は限られている
技術ありきの戦略を改め、市民(ユーザ)中心の考え方にシフトするためには、実際にイノベーションによって市民のどの層がもっとも恩恵を被るのか、についての現実的な評価も必要になってくる。
計画を主導する者たちは、スマートシティに関するイノベーションの恩恵を被ることができるのは都市でも中流以上の層のみである、という認識を持たなければならない。貧困に苦しむ人々にとって、技術の進化によって朝の通勤が楽になるというのはそれほど魅力的なものではないだろう。
「我々はたいてい市場のトップ20%を動かすことに注力している。そのトリクルダウン効果により、低所得層などへの影響も出てくるだろうと考えている」と語るのは、米国グリーンビルディング協会の上級副社長 キンバリー・ルイス氏である。
「スマートシティにおける重要な課題は、その技術が進歩することによって住民のあらゆる層に大きな影響を及ぼすであろうという思い込みのせいで、状況が悪化してきていることだ」と、彼女は言う。もっとも、スマートシティ技術は貧困層に根強く残る問題を一掃できる魔法の杖などではないことは認識されてきているが。
たとえば、コミュニティ・ソーラーという考えがさまざまな市場の関心を集めているが、それも投資をしようというリソースが調達できてこそだ。結果、プロジェクト開発をおこなうリソースのないコミュニティにとって、どうすれば融資を取り付けやすくできるのかという問題が浮かび上がってくるのだ。
ReadWrite[日本版] 編集部
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