ロボットは人の代わりに「保安」できるか? 子ども突き飛ばし事故で問われるその是非
シリコンバレー Knightscope社が、職場や公共スペースの警備用ロボットをいくつか発表した。これらロボットは、『K3,K5 Autonomous Data Machines』と呼ばれている。見た目はDoctor Whoに出てくるDalek、あるいは動き回るゴミ箱のようだが、セキュリティロボットといえばPepperよりもロボコップやアトラスなどが思い出されることを考えればさほど驚くことでもないだろう。
Knightscope社設立の起源は、サンデー・フックおよびボストンマラソンで起こった悲惨な事故である。設立者は、「ハードとソフトの組み合わせで世の中の犯罪を半減できる」と考えており、その論拠を次のように説明している。
「退屈な状況下で人が集中力を維持できるのは、せいぜい5-10分といったところだ。また、彼ら警備員の退職率は400%にもなり、セキュリティ業界がイノベーティブなソリューションを求めるのは当然と言えるだろう。」
「Knightscope社の目標は、シリコンバレーの知恵を結集したロボットを使うことで、退屈で時には危険な巡回業務から人々を解放し、より細かい現場の作業や戦略的な活動に従事できるようにすることである。すでに企業の構内やデータセンター、ショッピングモールや大型小売店などで、このロボットは活躍している。従業員の安全や企業のスパイ活動、許可を取らずに作られるアクセスポイント、資産の保護などその用途はさまざまだ。」
また、次のようにも言っている。
「この技術によってすべてが変わるだろう。世界が不安定になっていくなか、セキュリティロボットの需要は今後一層高まっていくだろう。」
多くのセンサーやレーザー、そして膨大な量のコードにより、彼らのK3とK5はその周りをランダムに歩き回ったり、アルゴリズムによって巡回するのではなく、ジオフェンスされたエリアの中を自律的に巡回する。
K5は車庫入れする車を検知したり、駐車場設備のマシンの追跡をおこなえる。さらに、これらロボットは普段とは異なる怪しい挙動を検知するようプログラムされており、道路をモニターしているときは、1分あたりで最大300までのナンバープレートの記録を遡ることができるのだ。人手が必要な緊急時のため、ロボットにはパニックボタンも備わっている。
新しいショッピングモールの警備員
また、同社は顧客であるUberやショッピングモールに、ロボットを1時間$7という警備員を雇うよりもはるかに安い価格で時間貸ししている。しかし、最近発生した業務に従事していたロボットが小さい子供を突き飛ばしたという事例から、その是非を問う声も上がっている。
その事例というのは、16ヶ月になる子どもが両親とスタンフォードショッピングセンターを歩いていたとき、突っ込んできたロボットに倒されたというものだ。目撃した母親が言うには、どうもロボットは後ろから子どもの頭を打ち、結果、子どもは顔から転んだということらしい。その後、ロボットはそのまま止まらずに子どもの右足を轢き、擦り傷ができて腫れたという。
この主張は、「ロボットは子どもに突っ込むのを避けるために左折した」というKnightscope社の主張と議論になった。同社は、「子どもが後ろ向きに走り込んでロボットの前に現れたために倒してしまうことになってしまったのだ」と言っていた。しかし、しばらく経ったのちKnightscopeは両親への謝罪に方針を転換し、事故の再発に努めると言った。
緊急時にロボットは使われるべきか?
安全に関わる場面でのロボットの活用については、幅広く利用が開始される前に考慮されなければならない点がある。
Georgia Tech Researchが今年始めにおこなった調査では、人はロボットを緊急時にアテにしすぎるということがわかった。建物火災の避難訓練において、ロボットの指示は信頼性に欠けるということを事前に知らせたうえ、訓練中に「ロボットが故障した」と告げられた参加者の複数名いたにもかかわらず、訓練に参加していた人々はその「緊急誘導ロボット」の指示に従った。
エンジニアのポール・ロビネット氏は次のように言う。
「ロボットの指示がアテにならないと告げられれば、仕掛けられた非常事態において人々がロボットに従うことはないだろうと思っていた。しかし、これまでの出来不出来にかかわらず、参加者全員がその指示に従ったのだ。思ってもみないことだった。」
彼ら研究者たちは、対象となったこのシナリオで、ロボットは非常事態のプレッシャーにさらされる状況下において信用されやすくなる「権威の象徴」になったのだろうと推測する。
また、ダラスで警官5名を殺害、他7名の被害者を出したミカ・ジョンソン氏を最終的に殺害するためにロボットを使って爆弾を爆発させるというシナリオが出たのはここ最近のことだ。ロボットが将来の緊急時に投入されることも十分にあり得る話である。
だが、ロボットによって雇用が失われると考えるのは正しくない。現場のロボットを管理し、データを解析するスキルのあるエンジニアや開発者、運用者という雇用は短期的には生まれる。将来、あらゆるものをコントロールするのはロボットではなく、ロボットのアシスタントを得た我々「人間」だ。
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ReadWrite[日本版] 編集部
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