「HiGH&LOW」が大変なことになっている。EXILEが一切わからなくても大丈夫だから観て
「かつて、MUGENという伝説のチームがこの一帯を支配していた。その圧倒的な勢力により、かえってその一帯は統率がとれていた。だが、───」
総合格闘技イベントPRIDEのナレーター・立木文彦の重みあるナレーション。この文句を聞くだけで、HiGH&LOWファンの心は盛り上がる。
2016年7月16日から上映中の映画『HiGH&LOW THE MOVIE』。EXILEや三代目 J Soul Brothersらが所属するLDHの「HiGH&LOW」プロジェクトが映画化された。
「HiGH&LOW」プロジェクトは、元EXILEメンバー・HIROが中心となり、1つの作品を軸に、総合エンタテインメントの土壌を作ろうとしている。LDHと日本テレビがタッグを組み取り組んできた新しいエンタテインメント企画だ。
2015年にスタートしたこのプロジェクトでは、ドラマ、コミカライズ、アルバムリリース、作品の世界観を表現したライブツアーなどをおこなってきた。
しかし、ドラマやメンバーを知らなくても楽しめる集大成が『HiGH&LOW THE MOVIE』。
・そもそも面白いの?
・メンバーを知らないんだけど大丈夫?
・演技はできるの?
そんな不安がある人こそ見てほしい。もうすぐ上映期間が終わる映画館もある。急いでおすすめポイントを紹介しよう。
最も面白いのは、アクションシーンである。
まずは、アクションの美しさに注目だ。
物語の中心となるSWORD(スウォード)連合軍。その中にRUDE BOYS(ルードボーイズ)というグループがある。俳優・窪田正孝が演じるスモーキーを中心としたスラム街チームだ。
RUDE BOYS・ピー役のZENは世界で活躍するパルクールパフォーマー。パルクールとは、身一つで壁を這い上がったり、アクロバティックに障害物を飛び越えたりする移動術のこと。忍者スポーツとも呼ばれている。
パルクールの動きをアクションに取り入れているRUDE BOYSの戦闘シーンが美しい。ずっと見ていたくなり、何度も動画を再生してしまう。
腕を伸ばし、建物から建物へと飛び移る姿は鳥のよう。空中で旋回しながらのキックや、ブレイクダンスのヘッドスピンを活かした攻撃は華やかだ。
RUDE BOYSのアクションは、人間賛歌だ。こんな動きが人間にできるのかと驚き、人間の可能性に感動する。
さらに、100人のSWORD連合軍と、500人を超える敵のMIGHTY WARRIORS(マイティウォリアーズ)がコンテナ街でぶつかり合うシーンは圧巻。なんせ、映画『ロード・オブ・ザ・リング』がCGで作っている映像を、生身の人間600人超を集めて撮影しているのだ。戦う肉体の生々しさがすごい。
500人が走って突っ込む中、悠々と歩いてくるMIGHTY WARRIORSの中心メンバー6人。行動から圧倒的な格の違いがわかる演出は見事だ。
アクション監督・大内貴仁は、映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』などにアクション監督、スタントコーディネーターとして参加していた。演出したRUDE BOYSのアクションは、第4回ジャパンアクションアワード・ベストアクションシーン賞を受賞している。
2016年の日本映画を代表するアクション映画だ。見て損なわけがない。
EXILEのこと、何もわからなくても大丈夫。
グループのくくりは「HiGH&LOW」プロジェクトではあまり関係ない。それよりも、SWORD連合軍が5つのチームの集まりだということだけ覚えていてほしい。
「HiGH&LOW」は、SWORD地区という街の物語。そこには5つのチームが存在する。
・山王連合会
・White Rascals(ホワイトラスカルズ)
・鬼邪高校(おやこうこう)
・RUDE BOYS
・達磨一家
この5チームが縄張りを守り合うのが、ドラマ「HiGH&LOW」の基本ストーリー。映画には、過去に街を仕切っていたMUGENと雨宮兄弟が登場するが、人数が少ないので映画を見ながら覚えられる。
映画はMUGENの二代目総長・琥珀(EXILE・AKIRA)が街に戻ってくるところから始まる。
SWORDを支配するため、奇襲の裏で手を引く琥珀。海外マフィア・張城(チャンソン)や、湾岸地区のMIGHTY WARRIORSを率いている。しかし、山王連合会と琥珀はかつてMUGENの仲間だったのだ。どうしちまったんすか! 琥珀サン!
琥珀を倒すため、山王をはじめとした100人を超えるSWORD連合軍が集まるシーン。その映像は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を思わせる。
しかし、過去にとらわれた琥珀を救うため戦士たちが集うことを考えると、映画『プリキュアオールスターズ』や、『劇場版美少女戦士セーラームーンR』や、『シャーマンキング』最終回のようでもある。
たった1人の男を救うために集まる100人の男たち。EXILE・AKIRAはプリンセスだったのかよ。
久保「ドキュメンタリーのように感じてもらえるのもすごく嬉しいことで。『このキャラが生きていく上では、こうは言わないだろう』とか『こういう音楽を聴いているんだからこんなふうに生きるんじゃないか』みたいなことを掘り下げていくことを1話1話手探りでやっているんです」
(雑誌『Cut 2016年7月号』久保茂明(監督)×平沼紀久(脚本)インタビュー より)
「EXILEって演技大丈夫なの」という声を聞いた。しかし、知ってほしい。「HiGH&LOW」はドキュメンタリーでもあるのだ。
青柳 たとえば九十九は、HIROさんが「青柳だったらこんな役が面白いだろうな、楽しそうだな」ってイメージしたものを基本に、自分の想いをプラスさせたキャラクターです。
岩田 僕が演じたコブラで言うと、HIROさんの「岩ちゃんは柔らかいイメージがあるから、逆に今回は一切笑顔を封印して、笑わないキャラクターでいこう」ってアイデアから出発したんですけど、お芝居のトーンやしゃべり方は全部自分で決めていきました。
(雑誌『PICT-UP 2016年8月号』AKIRA×青柳翔×岩田剛典 より)
映画に出演しているメンバーは、プロデューサー・HIROから役という課題を与えられる。プロジェクトの中で課題を咀嚼しチャレンジすることで、進化を見せる。
だから「HiGH&LOW」を見ると、どうしてもメンバーや彼らの音楽が気になってしまう。EXILEファンではない人たちが、映画を見てからYoutubeで劇中歌のMVをあさり、メンバーのインタビューを読み込んでいる。「メンバーの生き方そのものを表現にしたい」というHIROの想いが実を結んでいるのだ。
ここまで書いてきたが、正直ハイローの一番の魅力は「何にも考えなくていいところ」だ。アクションの美しさと、俳優やメンバーの魅力にただ酔っていれば良い、めちゃくちゃ気持ちいい映画なのだ。
邦画が大豊作の2016年を語るには、『HiGH&LOW THE MOVIE』が外せねぇ! MUGENは仲間を見捨てねぇ!
上映が終わる前に、3回目を見に行きたい。
映画『HiGH&LOW THE MOVIE』オフィシャルサイト
『HiGH&LOW THE BOOK 2016年 08月号』
ドラマ『HiGH & LOW 〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜』(hulu)
(むらたえりか)
総合格闘技イベントPRIDEのナレーター・立木文彦の重みあるナレーション。この文句を聞くだけで、HiGH&LOWファンの心は盛り上がる。
2016年7月16日から上映中の映画『HiGH&LOW THE MOVIE』。EXILEや三代目 J Soul Brothersらが所属するLDHの「HiGH&LOW」プロジェクトが映画化された。
「HiGH&LOW」プロジェクトは、元EXILEメンバー・HIROが中心となり、1つの作品を軸に、総合エンタテインメントの土壌を作ろうとしている。LDHと日本テレビがタッグを組み取り組んできた新しいエンタテインメント企画だ。
2015年にスタートしたこのプロジェクトでは、ドラマ、コミカライズ、アルバムリリース、作品の世界観を表現したライブツアーなどをおこなってきた。
しかし、ドラマやメンバーを知らなくても楽しめる集大成が『HiGH&LOW THE MOVIE』。
・そもそも面白いの?
・メンバーを知らないんだけど大丈夫?
・演技はできるの?
そんな不安がある人こそ見てほしい。もうすぐ上映期間が終わる映画館もある。急いでおすすめポイントを紹介しよう。
不安1:何が面白いのかわからない。
最も面白いのは、アクションシーンである。
まずは、アクションの美しさに注目だ。
物語の中心となるSWORD(スウォード)連合軍。その中にRUDE BOYS(ルードボーイズ)というグループがある。俳優・窪田正孝が演じるスモーキーを中心としたスラム街チームだ。
RUDE BOYS・ピー役のZENは世界で活躍するパルクールパフォーマー。パルクールとは、身一つで壁を這い上がったり、アクロバティックに障害物を飛び越えたりする移動術のこと。忍者スポーツとも呼ばれている。
パルクールの動きをアクションに取り入れているRUDE BOYSの戦闘シーンが美しい。ずっと見ていたくなり、何度も動画を再生してしまう。
腕を伸ばし、建物から建物へと飛び移る姿は鳥のよう。空中で旋回しながらのキックや、ブレイクダンスのヘッドスピンを活かした攻撃は華やかだ。
RUDE BOYSのアクションは、人間賛歌だ。こんな動きが人間にできるのかと驚き、人間の可能性に感動する。
さらに、100人のSWORD連合軍と、500人を超える敵のMIGHTY WARRIORS(マイティウォリアーズ)がコンテナ街でぶつかり合うシーンは圧巻。なんせ、映画『ロード・オブ・ザ・リング』がCGで作っている映像を、生身の人間600人超を集めて撮影しているのだ。戦う肉体の生々しさがすごい。
500人が走って突っ込む中、悠々と歩いてくるMIGHTY WARRIORSの中心メンバー6人。行動から圧倒的な格の違いがわかる演出は見事だ。
アクション監督・大内貴仁は、映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』などにアクション監督、スタントコーディネーターとして参加していた。演出したRUDE BOYSのアクションは、第4回ジャパンアクションアワード・ベストアクションシーン賞を受賞している。
2016年の日本映画を代表するアクション映画だ。見て損なわけがない。
不安2:EXILEのメンバーがわからない。ドラマを見ていない。
EXILEのこと、何もわからなくても大丈夫。
グループのくくりは「HiGH&LOW」プロジェクトではあまり関係ない。それよりも、SWORD連合軍が5つのチームの集まりだということだけ覚えていてほしい。
「HiGH&LOW」は、SWORD地区という街の物語。そこには5つのチームが存在する。
・山王連合会
・White Rascals(ホワイトラスカルズ)
・鬼邪高校(おやこうこう)
・RUDE BOYS
・達磨一家
この5チームが縄張りを守り合うのが、ドラマ「HiGH&LOW」の基本ストーリー。映画には、過去に街を仕切っていたMUGENと雨宮兄弟が登場するが、人数が少ないので映画を見ながら覚えられる。
映画はMUGENの二代目総長・琥珀(EXILE・AKIRA)が街に戻ってくるところから始まる。
SWORDを支配するため、奇襲の裏で手を引く琥珀。海外マフィア・張城(チャンソン)や、湾岸地区のMIGHTY WARRIORSを率いている。しかし、山王連合会と琥珀はかつてMUGENの仲間だったのだ。どうしちまったんすか! 琥珀サン!
琥珀を倒すため、山王をはじめとした100人を超えるSWORD連合軍が集まるシーン。その映像は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を思わせる。
しかし、過去にとらわれた琥珀を救うため戦士たちが集うことを考えると、映画『プリキュアオールスターズ』や、『劇場版美少女戦士セーラームーンR』や、『シャーマンキング』最終回のようでもある。
たった1人の男を救うために集まる100人の男たち。EXILE・AKIRAはプリンセスだったのかよ。
不安3:演技が下手なんじゃないの?
久保「ドキュメンタリーのように感じてもらえるのもすごく嬉しいことで。『このキャラが生きていく上では、こうは言わないだろう』とか『こういう音楽を聴いているんだからこんなふうに生きるんじゃないか』みたいなことを掘り下げていくことを1話1話手探りでやっているんです」
(雑誌『Cut 2016年7月号』久保茂明(監督)×平沼紀久(脚本)インタビュー より)
「EXILEって演技大丈夫なの」という声を聞いた。しかし、知ってほしい。「HiGH&LOW」はドキュメンタリーでもあるのだ。
青柳 たとえば九十九は、HIROさんが「青柳だったらこんな役が面白いだろうな、楽しそうだな」ってイメージしたものを基本に、自分の想いをプラスさせたキャラクターです。
岩田 僕が演じたコブラで言うと、HIROさんの「岩ちゃんは柔らかいイメージがあるから、逆に今回は一切笑顔を封印して、笑わないキャラクターでいこう」ってアイデアから出発したんですけど、お芝居のトーンやしゃべり方は全部自分で決めていきました。
(雑誌『PICT-UP 2016年8月号』AKIRA×青柳翔×岩田剛典 より)
映画に出演しているメンバーは、プロデューサー・HIROから役という課題を与えられる。プロジェクトの中で課題を咀嚼しチャレンジすることで、進化を見せる。
だから「HiGH&LOW」を見ると、どうしてもメンバーや彼らの音楽が気になってしまう。EXILEファンではない人たちが、映画を見てからYoutubeで劇中歌のMVをあさり、メンバーのインタビューを読み込んでいる。「メンバーの生き方そのものを表現にしたい」というHIROの想いが実を結んでいるのだ。
ここまで書いてきたが、正直ハイローの一番の魅力は「何にも考えなくていいところ」だ。アクションの美しさと、俳優やメンバーの魅力にただ酔っていれば良い、めちゃくちゃ気持ちいい映画なのだ。
邦画が大豊作の2016年を語るには、『HiGH&LOW THE MOVIE』が外せねぇ! MUGENは仲間を見捨てねぇ!
上映が終わる前に、3回目を見に行きたい。
映画『HiGH&LOW THE MOVIE』オフィシャルサイト
『HiGH&LOW THE BOOK 2016年 08月号』
ドラマ『HiGH & LOW 〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜』(hulu)
(むらたえりか)