年間600食もの外食をするプロが伝授! 自分の趣味に合う店を見つけるための3つのポイント

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今、テレビ、雑誌、ネットなど、その気になれば、飲食店の情報はいくらでも手に入る。だが、どんなに評判が良くても、その店が自分に合っているとは限らない。むしろ、前評判だけを頼りに店に行ってみたらガッカリということも珍しくないだろう。

では自分にピッタリ合う店を見つけるには、どうすればいいのか。

今回は、『出世酒場 ビジネスの極意は酒場で盗め』(集英社刊)の著者で、「タベアルキスト」として多くの居酒屋に足を踏み入れてきたマッキー牧元さんに、魅力的な店を見つけるためのポイントを聞いた。

――まずは、牧元さんがどのような経緯で「タベアルキスト」としての活動を始められたのかについて教えていただけますか。

牧元:1996年に料理評論家の山本益博さんと出会い、自分の食いっぷりを認められて、『東京食べる地図』(昭文社刊)の取材執筆スタッフとして参加したのが最初です。それと同時に知人を通じて「味の手帖」連載も始めたことが、今につながっていますね。

――この本に出てきたお店の中で、牧元さんが最も早くに出会ったお店はどれですか。

牧元:最も早く出会った店は、20代後半に出会った「鍵屋」。東京・根岸にあり、創業は1857年。古き面影を残す木造一軒家で、風情あるたたずまいを見せる酒亭です。

――では、今でも通っているお店は?

牧元:四ツ谷の「たまる」ですね。今でも年に2回は訪れます。夏は穴子料理、秋から春まではあんこう鍋を主役に置いて、60年以上にわたって多くの食通たちを魅了してきた名店です。

グルメ番組「くいしん坊!万才」の初代リポーターなども務めた、俳優の故・渡辺文雄さん、ファッションデザイナーの故・石津謙介さんが、この店の常連でした。でも、お二人とも自身の随筆で、この店については触れていません。それだけ愛していたということでしょう。

――「たまる」は、ご主人のお人柄も印象的なお店ですよね。

牧元:本では、ご主人の御子柴暁己さんの「うちは穴子とあんこう鍋の店だから、穴子やあんこうがおいしいのは当たり前。でもね、突き出しは、お客案が最初に口にするものでしょ。いい加減には作れない。だから毎日毎日、死ぬ気で作っています」という言葉を紹介しました。

その言葉どおり、突き出しがおいしいのはもちろん、ご飯やお新香といった脇役にも、決して手を抜かない。私はこのご主人から、目の届きにくい地味な仕事を死ぬ気でやってこそ、相手の心を動かすのだと学びました。

――ところで、本書に出てくるような魅力的なお店を見つけるには、どのようなことに気をつければいいでしょうか。

牧元:もちろん例外はあるとはいえ、ポイントは三つかなと思っています。まずは、店構えから店内の整頓まで、清潔感があること。つぎに、その店に来ている客から「おいしい気」が出ていること。最後に、店名にセンスが感じられること、ですね。
(後編へ続く)