智辯学園vs紀央館
投手・松本大地(智辯学園)
選抜で優勝した智辯学園、春の奈良大会も制し目下公式戦11連勝中。奈良大会の1試合平均得点は9.17点。この強力打線は初回に1番・岡澤 智基(3年)がエラーで出塁すると牽制悪送球で二塁に進む。二死後に4番・福元 悠真(2年)がレフト前に適時打を放ち1点を先制。3回にも青木の犠牲フライと福元の2打席連続となる適時打で追加点を奪った。
日本一となった智辯学園打線を相手に3点は失ったが紀央館先発の田中 綜馬(3年)は全く逃げていなかった。オフの間はスクワットなどのウエイトで下半身をいじめ、追い込む日のランニングメニューは80メートルダッシュを50本。球速は約10km/h上がり140km/h台に乗った。メンタルの強さを感じさせるマウンド捌きで追加点は与えず。特に5回は2番から始まる智辯学園の攻撃を三者凡退に打ち取り、後半の反撃に望みをつなぐ。
すると6回一死から1番・中野 聖那(3年)が三塁打を放ちチャンスメイク。得点の期待が高まったが智辯学園先発の松本 大地(3年)が踏ん張り中野は三塁残塁に終わる。セットポジションからテンポ良く、小気味よいピッチングを続けた松本大は3安打1四球で完封勝利。公式戦で9回を投げたのはこれが初めてだが最後まで紀央館打線に付け入る隙を与えなかった。
試合後、勝利した小坂監督は「エラーで頂いたチャンス、そこで2番が進塁打を打てなくて流れが悪くなった。3番と5番が自分のバッティング出来なかった。4番の福元が安定して打ってくれたので試合としてはちょっとは締まったかな。打つ方が消極的になり過ぎ。初球の甘い球を見逃す、先頭のキャプテンがそれでは打線に影響が出る。課題として直していかないと」4回以降は2安打無得点の攻撃面では一塁ランナーコーチに、守備面ではファールフライを最後まで追わない野手に対して声を荒げた。
打撃陣には注文をつけたが3安打完封勝利の松本大のピッチングについては「丁寧によく投げてくれた。5回ぐらいで任せようと思った」と手放しで喜んだ。エースは選抜で好投した村上 頌樹(3年)だが、春季大会では松本大に3試合先発マウンドを任せた。キレのある球を元々高く評価しており、足りなかったのは慣れと経験だけ。期待を込めてこの日の先発も1週間前に通達していた。毎回奪三振ショーを繰り広げるタイプではないが奪った三振はイニング数を上回る10個。打者がスライダーに合ってないと見るや捕手の岡澤は3球4球続けてスライダーのサインを送り続けた。ウイニングショットであるスライダーにキレがあり「感覚では6割ぐらい」というほど多投した。「コントロールはいい方だったんですけど、コースに投げ分けられるコントロールじゃなくてストライクを投げられるコントロールだったので、ボール1個の出し入れを意識して練習してきました」という成果を発揮し与四球はわずかに1つだけ。春日本一のチームがまた一つ階段を昇った。
(文=小中 翔太)