【沖縄展望】どこが出場してもおかしくない群雄割拠の沖縄の夏がやってくる!
近年の沖縄県高校野球界は、常に優勝候補が複数出てくるのだが、終わってみればその優勝候補の筆頭、もしくは筆頭同士が決勝を争うという図式でもあった。
・2013年選抜出場の沖縄尚学が夏優勝
・2014年選抜出場の沖縄尚学が夏優勝※同年、春季大会優勝の糸満が準優勝
・2015年春季大会優勝の興南が夏優勝※同年、選抜出場の糸満が準優勝
然るに今回も、秋の優勝校八重山と準優勝の興南。そして春の優勝・糸満と準優勝の豊見城がその候補となるのだろうが、八重山と興南が春の県大会で初戦敗退を喫してしまった。また、春の上位2校も秋は初戦敗退である。他を圧倒する力を有するチームがこの夏には見当たらない。そんな中、第138回九州地区高校野球大会においてベスト4進出を果たした糸満を中心に、来る夏の展望を見ていきたいと思う。正しくは抽選会後の方が立てやすいのだが、そこはご了承願いたい。
大城 翔太郎(糸満)
斬り込み隊長の大城 翔太郎とエースで4番を務める平安 常輝。投打の柱であるこの2人をはじめとした3年生たちは、凄い先輩たちを目の当たりにして育ってきた。昨年なら池間 誉人(専修大)や大城 龍生(中央大)、一昨年は神谷 大雅や赤嶺 祥吾(共に拓殖大)らがそう。その先輩たちが手に入れることが叶わなかったのが夏の頂点だ。2年連続準優勝は凄いことだが、だからこそ3度目の正直として、自分たちの手で最後の夏の優勝を掴むと意気込んでいるのは間違いない。
その強い思いが、九州大会でのベスト4へと繋がったと見える。春の県大会打率.417(24打数10安打)の大城 翔太郎は、真のエースクラスが集う準々決勝以降の3試合で打率が.467とさらに跳ね上がり、優勝の立役者として申し分ない働きを披露。一方、平安 常輝も延長14回を投げ切った準決勝の沖縄尚学戦と、決勝の豊見城戦で連続完投。2日間23イニング313球を投げて僅か失点1(自責点ゼロ)と、昨年からのさらなる成長の証を見せた。
その他にも興南の比屋根 雅也からホームランを放った桃原 虎雅や、全6試合安打をマークした徳元 ジンなど、飛車角金銀とコマが揃う。5年ぶりの夏の聖地へ向け、死角は無くなりつつある。
[page_break:負けない野球で立ち向かう!第2シードの豊見城 / 攻守のバランスに優れる名門!沖縄尚学 ]負けない野球で立ち向かう!第2シードの豊見城翁長 宏和(豊見城)
エース、4番、そして主将。一人三役を務めるのが豊見城の大黒柱翁長 宏和だ。全6試合に完投しながら奪った三振が9つだけ。両端と緩急を生かした打たせてとる頭脳的ピッチングは、決して大崩れしない。その一方で6試合で8つを記録したエラーはいただけないが、それを切り替えと次なる判断力の高さでカバーする。
決勝の糸満戦の8回。先頭打者の大城 翔太郎にヒットを浴びた後、エラーが出て一死一・二塁。ここで平安 常輝にセンター前へ運ばれて決勝点を失う。その後さらに一・三塁とされたのだが、翁長が次打者をサードゴロに打ち取るなど被害を最小限で食い止めることが出来た。さらに攻撃でも同様のことが起きる。2回戦以降の豊見城のチーム打率は.224。それなのに得点は20を記録しているのだ。プレッシャーがかかりそうな痺れる場面で発揮される、負けない野球の真骨頂こそが豊見城最大の武器だ。
攻守のバランスに優れる名門!沖縄尚学砂川 リチャード(沖縄尚学)
まさかの2年連続秋の初戦敗退。しかし、そこから昨年と同じ春季3位まで上げてきた沖縄尚学。準決勝の糸満戦は延長14回と、互角の力を有することを証明した。三位決定戦を含む4試合で二桁安打をマーク。チーム打率.330の中心となる大兼久 亮平、仲西 莉音、砂川 リチャードの破壊力抜群のクリーンナップは県内随一。その打線のキーマンが、準々決勝以降の3試合で8安打(13打数)、打率.615と、比嘉 公也監督が信頼を寄せる安里 大心だ。
同じトップを務めてきた諸見里 匠(國學院大)や赤嶺 謙(亜細亜大)に勝るとも劣らない安里を1番に据えるのか、3番に置くのか。投手陣は諸見里匠の弟である俊に頼る。春の防御率は糸満・平安(0.38)を抑えて1位(0.26)。左右高低だけでなく、ベースの前後にもコントロールすることが出来るサウスポーの攻略は、簡単にはいかない。
そんな他校が羨む陣容だが、逆に言えば14イニングで一人の走者も返せなかった現実を、比嘉監督は重く受け止めている。攻守のバランスは申し分ない。あとは甲子園を射止めてきた歴代の打線との差。それを夏までに埋められるのかどうかがカギだ。
[page_break:糸満包囲網を敷く他のライバルたち ]糸満包囲網を敷く他のライバルたち仲宗根 登夢(美来工科)
初の春4強入りを果たしたのが美来工科。安定感抜群のエース仲宗根 登夢は、強打者が揃う美里工打線を4安打9奪三振1失点と封じるなど計算が立つ。彼に続く吉田 遼、砂川 魁らの奮起があれば面白い。打線も沖縄尚学戦で15安打を集めるなど好打者が揃う。春は不調に終わった武内 由伸が本来の打撃を見せれば、前身である中部工業以来となる二度目の甲子園出場も十分可能だ。
新人大会、秋季大会と連続制覇した八重山は秋の大会で打率.588をマークした黒島 投真が健在。それゆえに、黒島は3打席連続四球と春は徹底マークされた。その後を務める打者が、夏はキーマンとなってきそうだ。その八重山を倒し、秋春連続8強入りしたのが前原。粘投が身上のエース山根 蓮太と共に中心となるのが平良 竜哉。準々決勝では体調不良のゆえに結果を残せなかったが、今年の沖縄県内で三本指に入るだろう好打者だ。
商業高校野球大会で優勝した八重山商工。準決勝で先発した平良 海馬はまだ2年生ながら、この時点で140kmを連発し、秋ベスト8の中部商打線を完封。決勝戦では打線が奮起し、浦添商投手陣から9点を奪った。中部地区高校野球選手権大会で優勝した美里工は決勝までの4試合で29点を叩き出すなど、打線が上向いている。どこからも点が取れる上に、レギュラーも控えの差が無くなりつつある。
同大会で準優勝の嘉手納は、疲れがあった仲地 玖礼にキレが戻りつつある。県内随一の強打線に加え、重盗など足を絡めた攻撃を身につけつつあり、引き出しが多くなってきた。そして忘れていけないのが昨年の王者興南だ。こちらも疲労がたまっていた比屋根 雅也に、本来のキレが戻りつつある。上原 麗男を中心に、振れる打者がズラリと揃うのも魅力。夏、実は一番怖いのが興南という声も聞こえてきた。
ソツのない野球を見せる宜野座や、商業高校野球大会で準優勝した浦添商、昨秋興南と接戦を演じた豊見城南、大会結果こそ残せてないものの、タイシンガー ブランドン 大河を始めとする選手の質の高さでは上をいく石川、秋4強の那覇商、同8強の中部商には、上間 康貴、宮城 錬という好左腕が健在。
春8強の宜野湾と沖縄水産、その沖縄水産と再試合を演じた那覇西、好投手富名腰 泰雅のいる与勝、那覇・南部地区交流大会で優勝した未来沖縄高校、さらに首里、那覇、コザ、本部、名護、小禄などは、上位有力校を倒しても何ら不思議ではない力を要する。
正直、ここまで先が不透明なほど拮抗する年も珍しいのではないかと思うほど。とはいえ、2007年以降は興南の4度を筆頭に沖縄尚学、浦添商、そして糸満と、述べ4校だけしか聖地の土を踏んでいないのも事実ではある。全ては抽選次第か!?6月7日の抽選日が楽しみだ。
(文・當山 雅通)
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