日本航空vs浦和学院
諏訪賢吉(浦和学院)
浦和学院のメンバーを見て驚いた。1年生がなんと6人ベンチ入りしているのである。1、2年生合わせて12人がパンフレットに記載されていた。ただ今日もメンバーが変わっていたので、多少の変動はあったものの、これは競争が激しいというより核となる選手が定まっていないといえる。選抜出場校経験のある諏訪 賢吉、幸喜 勇諮がいるものの、やはり今年の甲子園上位チームや、歴代の先輩たちと比べてしまうとどこか盤石さを感じないのだ。一つのミスで歯車が狂うとがたっと崩れてしまうのが昨秋からの課題であったが、やはり簡単に克服できるものではない。浦和学院はこの試合、とても悔しさが残る結果となった。
立ち上がり、日本航空の先発・片岡 優大(3年)からヒットを重ねるも、2つの併殺もあり、チャンスをつぶす。小気味よい投球が持ち味の片岡は、常時130キロ中盤の速球、キレのあるスライダーを投げ分け、4回まで無失点の好投を見せていたが、浦和学院は5回表まで0対0の試合展開だったが、一死一、二塁から1番山本晃大(2年)の右越え適時二塁打で1点を先制すると、さらに二死二、三塁となって3番諏訪が高めのストレートを叩いて、ライトスタンドへ飛び込む3ランホームランで、4対0とする。一気に畳みかけて4点を挙げるところはさすがといえるだろう。
しかし浦和学院の先発・榊原 翼(3年)もピリッとしない。右腕から投げ込むストレートは135キロ前後。県大会では140キロを連発していて、それも際どいコースにマックスのストレートが決まっていたようだが、今日はボールに角度を感じない。榊原は、まとまっているように見えて、今日は体の軸で、鋭く回旋ができていないフォームのため、178センチ82キロと恵まれた体躯を生かし切れていない。そのため130キロ前半のストレートでは、日本航空打線も二巡目につれてアジャストするようになり、5回裏には上栗翔太(2年)の本塁打で1点を返すと、さらに6回裏には二死一塁から3番豊田理樹(3年)が左中間を破る適時二塁打を放ち、4対2と、浦和学院がリードしていたとはいえ、日本航空は逆転できるぞ!というムードになっていた。
西角優杏(日本航空)
浦和学院ナインは焦りの色が見え、それが7回裏に出てしまう。一死から内野手のミスで出塁を許したところで、榊原が降板。2番手に1年生左腕・佐野 涼弥を投入する。佐野は栃木下野シニア出身でかなり注目されて入部した投手だが、素質自体は小島 和哉(現・早大)を上回るものを持った逸材だとみていい。右肩の開きが抑えられ、大きなテークバックから鋭く腕を振って投げ込む姿は、小島と似通ったところがあるが、1年生の小島よりも球威はあり、すでに135キロ前後の直球をどんどん投げ込んでくる。120キロ前後のスライダーにもキレがあり、浦和学院からすれば久しぶりに表れた大物左腕だが、この場面は酷だったが、打たれるのではなく、2つのミスで、一死一、三塁のピンチを招き、8番西角優杏(3年)が中前適時打を放ち、4対3の1点差に迫られると、9番小柳晃詞(3年)にも適時打を浴びて同点を許す。
佐野は、コンスタントに130キロ中盤していたとはいえ、甘く入ったボール。さらに勢いがついた日本航空打線を止めることはできなかった。これも彼にとっては良い経験になったのではないだろうか。そして8回裏、3番手の黒川求めることができず、5番片野大樹(3年)に勝ち越し適時打を許し、4対5と逆転を許してしまった。
6回から登板した日本航空の2番手・西角は180センチ76キロとエース片岡よりも上背があり、ポテンシャルも大きい。登板が少なかったのは、やや実戦力や制球力に課題を残していたのだろう。この試合では、テークバックが大きいフォームから繰り出す130キロ〜133キロの直球、曲りの大きい変化球のコンビネーションに、浦和学院打線は苦しみ、最後は投手ゴロに終わり、日本航空が二季連続のベスト8進出を決めた。
勝利した日本航空は、昨秋の関東大会で延長15回を経験したことでだいぶタフな戦いができるようになり、序盤にリードを許していてもバタバタしない試合運びは見事だった。一方で浦和学院は、経験不足なところがあったのか。失策から乱れるケースが多かった。 そこは昨年のチームと比較してしまうと、脆さがある。 個々の能力については、昔、甲子園に出場したチームと比べて見劣りするチームではない。やはりここぞという場面ので勝負強さ、どんなときでも冷静に守れる守備力。簡単にはアウトにならないしぶとさ、颯爽と決める盗塁...。走攻守に隙がないのが浦和学院の野球である。それが全国レベルの強豪相手にも発揮ができるか?そうなるとまだまだ隙があるチームだと感じるはずだ。
勝利に貪欲になって、確固たる技術と精神力を身に付けて夏に臨んでほしい。
(文=河嶋 宗一)