【総括 野手編】春季九州大会で見つけた注目野手を紹介!
大分・熊本の復興を願った九州大会の総括を配信中!前回は、【投手編】「春季九州大会で見つけた夏に期待がかかる投手を一挙紹介!」を配信しましたが、今回は注目の【野手編】を公開!
将来楽しみな2年生スラッガートリオ 東、渡邊、村上!渡邊 大海(西日本短大附)今大会、最も将来性の高さを感じた野手は、渡邊 大海(西日本短大附)、東 怜央(福岡大大濠)、村上 宗隆(九州学院)の2年生3人ではないだろうか。182センチ90キロと恵まれた体格を持つ渡邊は準々決勝、準決勝で2試合連続弾。どれも打った瞬間、本塁打と確信できる当たりで、広く、フェンスも高いビッグNスタジアムだが、そのフェンスを高々と超えていった。
「あいつが打つ打球は高校生というより大人の打球」と西日本短大附の西村 慎太郎監督が評するように、まさに長距離打者としての素質が備わった選手だ。渡邊はかなりの努力家で、時間さえあれば素振りをしているという。現在、高校通算15本塁打。ここから量産体制に入っていくのは間違いない。
高校通算23本塁打の東は渡邊に負けない飛距離を誇るスラッガーだが、今大会は逆方向への打球を打つことを徹底しており、4試合連続打点・安打を記録。この安定感はさすがで、本塁打はなくても頼もしい選手といえるだろう。ここに甘い球を逃さず本塁打にできる技術が備わったとき、さらに注目を浴びる選手になりそうだ。もともとレフトもできる選手のようで、いろいろなポジションができるようになっていきたいところ。
村上は187センチ93キロと、体格だけではなく下半身にキレがあり、1つ1つのプレーは身軽だ。打撃技術も高く、滞空時間が長いフライ、打球の速さは別格だ。1.9秒台のスローイングも、セカンドベースに入った野手の胸元にきっちりと投げられるコントロールの良さもさすがと言える。また野手への指示、投手への声かけなどリーダーシップも発揮していた。もう1試合、2試合やれば本塁打も出ていたかもしれない、それほど魅力がある選手だった。このまま攻守ともに順調に伸びれば、希少性が高い強打の捕手なだけに、来年のドラフト上位候補に名を連ねてもおかしくない選手だ。
[page_break:好打者の多かった大分!破壊力抜群の大村工!]好打者の多かった大分!破壊力抜群の大村工!服部 貫大(海星)3年生野手では高校通算29本塁打の野中 翔太、10本塁打の龍野 瞳依という佐賀商の4番、5番コンビは脅威。野中はライト方向にも長打を打つことができ、甘く入ればスタンドインできる長打力を併せ持ったスラッガーで、龍野も初球から甘い球を見逃さない鋭さを持ったスラッガーである。この2人を中心に打撃を磨き上げ、8年ぶりの甲子園を狙っていきたい。
富島戦で4安打を記録し、バットコントロールの良さが光った服部 貫大(海星)は甲子園後から始動のタイミングを見直したのが好調の要因だ。
また、ベスト8で敗れたが大村工打線の破壊力はかなりのものがあった。その中でも光っていたのが福岡大大濠戦で濱地 真澄から一時同点となる左前安打を放った白石 翔樹だ。上背はそれほどある選手ではないのだが、大村工の取り組みとして行っている1日1.8リットルのお米を食べる食トレと、徹底した下半身強化のトレーニングの成果で、太ももがかなり太い。
やや弧を描くようなスイング軌道ながらもヘッドが下がらず、速球に振り遅れせずに打ち返せるのが強み。ボールをコンタクトする能力は高く、どの打席もしっかりと捉えていた。スローイングタイム2.00秒前後とまずまずのタイムだが、コントロールの修正、さらにキャッチング、ワンバウンド処理技術などを見直せば、もっと注目されるだろう。
秀岳館にサヨナラ勝ちした大分は、好打者が多かった。1番を打つ束野 克実は、秀岳館戦で1点差に迫る適時三塁打を打った好野手。バットコントロールも非常によく、攻撃的な打撃スタイルが良い。1年生からレギュラーの3番・佐藤 陸も手元で呼び込んで弧を描くスイングを心掛けており、ただ安打を打つだけではなく、より長打を打つための打撃を心掛けていた。
[page_break:まだまだいる2年生野手の逸材たち!]まだまだいる2年生野手の逸材たち!三浦 拓人(大分)2年生野手では古賀 悠斗(福岡大大濠)、三浦 拓人(大分)、橋本 真生(西日本短大附)、横尾 忠孝(西日本短大附)の活躍が光った。
古賀は、昨年1年生ながら活躍を見せていたように、今大会も連日の活躍を見せた。アベレージヒッターを心掛けているという古賀は、広角に鋭い打球が打てて、どのタイプの投手にも安打を記録。これで、一発を打つ小力がついてくるとなお良いだろう。守備はセンターへ抜けそうな打球に軽々と追いついてアウトにしたり、三遊間への深い打球を、追いついてダイレクト送球してアウトにしたりと、難しい打球をかっこよく見せてアウトにできる選手。しかし正面のゴロになると、送球が乱れたりと、ボールをこぼしたりしている。本人もそれを課題にしているようで、さらに遊撃守備に丁寧さが出てくれば、名手と呼ばれる日もそう遠くない。
三浦はもともと1番を打っていたが、首脳陣から2番を任され、バントをしない攻撃的2番打者を担った。バットコントロールが良く、常にコンタクトできる選手で、秀岳館戦では同点打、サヨナラ安打を放ったように勝負強さが光る。
4番を打つ橋本は、昨夏甲子園に出場した橋本 拓実投手(鹿児島実)の弟である。兄に負けず、弟の真生も180センチ90キロと負けていない。兄の甲子園出場は刺激になったようで、「絶対に自分も甲子園に出たいです!」と意気込む。5番を打つ渡邊のような圧巻の長打力はないが、広角に鋭い打球が打てる選手で、三塁守備も落ち着いており、今後、本塁打連発できるようになると楽しみだろう。
背番号12ながらスタメン出場の横尾は、185センチ83キロととにかく体格に恵まれている。スローイングタイム2.00秒の肩はもっと強くなるだろうし、打撃もライナー性の打球が多く、鋭い。4番橋本、5番渡邊、6番横尾は180センチ80キロ越えしており、3人とも長打力があるのだから、1年後、どこまで破壊力が増しているのか、楽しみである。
最後に1年生を1人だけ紹介したい。それが決勝戦で決勝打を打った左の巧打者・稲本侑星(福岡大大濠)である。1年生ながら5番を打ち、たびたび適時打を打つなど、勝負強い。1年生とは思えないバットコントロール、さらにパンチ力を秘めた選手で、この大会では本塁打はなかったものの、長打を打つポイントを覚えていけば、いずれは長打量産も期待できる打者の1人だろう。三塁守備も落ち着いており、さらに守備の安定性を高めることができれば、いずれは福岡県を代表する巧打者として注目されるのは間違いない。
(文・河嶋 宗一)
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