【総括 投手編】春季九州大会で見つけた夏に期待がかかる投手を一挙紹介!

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 大分・熊本の復興を願った九州大会は、福岡大大濠の優勝で幕が閉じた。ここで今大会、活躍が光った選手たちを振り返っていきたい。まずは投手編から紹介しよう!

今大会最注目投手・濱地 真澄は勝てる投球を実践濱地 真澄(福岡大大濠)

 この大会の注目は、濱地 真澄(福岡大大濠<インタビュー>)である。NPBのスカウトからの注目度は非常に高く、初登場となった神村学園戦では、スカウトが一斉にスピードガンを向けていた。だがこの日の最速は139キロ止まりと決して内容は良くなく、濱地自身も「調子は良くなかった」と振り返り、試合中もフォームの修正を行っていた。神村学園戦は6回1失点に留めたものの、本来の出来ではなかった。

 次の大村工戦(試合レポート)では初戦よりも状態は上がっており、常時140キロ・最速143キロを7球計測し、3.1回を投げて無失点と力のある投球を見せた。そして準決勝の糸満戦では序盤に3失点しながらも、9回無四球完投勝利。球速は143キロだったが、不調ながらも試合を作り、勝てるピッチングをしたのはさすがといえるだろう。

 ただ、九州大会の内容に、本人も、首脳陣も満足する様子はない。八木 啓伸監督は「まだ立ち上がりに隙があります」と語り、濱地は「立ち上がりが課題ですし、まだ自分の思うようなリリースができない」と課題を挙げていた。昨秋よりも身体が大きくなった。それに伴い、感覚、バランス的なものも変わってくる。現在は、今の体型にあったリリースポイントを探っているところ。好調時のリリースを取り戻すことができた時、さらに素晴らしい投球を見せてくれるに違いない。夏にそれが実現できるか大いに注目をしていきたい。

 決勝進出の西日本短大附の谷口 碧は、独特のオーバーハンドから振り下ろす130キロ後半の速球に勢いがあった。スライダー、カーブも投げ込んでいくが、ここぞという場面では、角度ある速球が光っていた。非常に力投派なフォームであり、思わず外国人投手と思わせるフォームであった。こういう選手がドラフト候補として目立つには、フィジカル強化で、徹底としてスピードアップをさせるのか、それとも打者に打ち難い癖球、鋭い変化を見せる変化球を習得していけるかだと思う。彼がドラフト候補としてクローズアップされるのはこれからだが、ぜひMLBのローテーション投手のピッチングを見てはいかがだろうか。スピードアップに伴い、エネルギーの消耗も激しくなるので、故障に強いコンディショニングにも気を配ってほしい。

[page_break:糸満・平安常輝、大村工・松尾心太郎にも注目!]糸満・平安常輝、大村工・松尾心太郎にも注目!平安 常輝(糸満)

 ベスト4の糸満のエース・平安 常輝(ひらやす・つねき)は、135キロ前後の速球、キレのあるスライダーを内外角へきっちりと投げ分ける右の好投手で、九産大九州戦(試合レポート)で完封勝利を挙げた。この試合の投球は、非常に繊細さがあり、丁寧かつテンポも良かったが、福岡大大濠戦では要所で制球力が甘くなったように、ピンチでの制球力、配球を磨いていきたい。打者としても濱地から2安打を打ったり、フィールディングの動きも良いので、野球センスは抜群。夏の注目投手になりそうだ。

 ベスト8の大村工のエース・松尾 心太郎は、下半身を大きく沈み込んだフォームから最速138キロを計測。ストレートは勢いがあったが、制球力に課題を残した。甲子園出場へ向けて、キーマンとなる存在だけに、全体のレベルアップを期待したい。九産大九州のエース・岩田 将貴は左サイドから投じる独特の軌道を描くストレート、変化球で2試合通して好投を見せた。

 初戦敗退となったが、県大会初優勝の富島の吉田 寛輝は、真っ向から振り下ろすフォームからの常時135キロ〜138キロの速球には球速表示以上の勢いがあり、独特の曲がりをするカーブは初見で打つのは相当難しい球種。この2つの球種のコンビネーションで6回まで無失点の投球を見せた。7回裏の3失点を喫した点は夏へ向けて課題だろう。また、同じく敗れはしたが、秀岳館の有村 大誠も、10.2回を投げて11奪三振。ボールの質、投球内容は、さすが好投手と思わせるもので、濱地に次ぐものがあった。フォームの土台の良さ、将来性はかなりのもので、夏までしっかりと調整を行い、春とは別人の姿を示してほしい。

 2年生では、最速138キロのストレートを軸に富島に1失点完投勝利を挙げた飯田 大翔(海星)、138キロを計測した三浦 銀二(福岡大大濠)も今後が楽しみだろう。

 次回は、九州大会で見つけた注目の野手陣を紹介します。(野手編に続く)

(文・河嶋 宗一)

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