上沢 直之投手(専大松戸−北海道日本ハムファイターズ)【後編】「ストレートを磨く方針がプロ3年目に実を結ぶ」

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 前編では、上沢投手に教えた2つのヒントの意味について迫りました。後編ではプロ3年目のブレイクの要因に触れつつ、最後に持丸監督が上沢投手のプロ入り前のエピソードを明かしてくれました。

ストレートを磨く方針がプロ3年目になって実を結ぶ

上沢 直之選手(北海道日本ハムファイターズ)

 北海道日本ハムファイターズに6位指名されて入団した上沢 直之 。3年目に8勝を挙げた要因として、フォークを覚えたことで飛躍的に投球の幅が広がったと以前インタビューで語っている。しかしフォークはしっかりとしたストレートがあって初めて生きる球種。上沢はフォークと同じくストレートにも磨きがかかっていた。145キロ前後の伸びのあるストレートをコンスタントに投げ込み、打者を打ち取る上沢の姿があった。まずストレートという持丸監督の教えを大事にしていたことがわかる。

 もし高校の時から、ストレートはあまり磨かず変化球を多用して勝つ投球を求めていたら、現在の上沢の姿はあっただろうか。ストレートを磨くだけではなく、走り方を直したりと、野球選手としての根本を専大松戸の3年間で学んだからこそ、上沢はプロの第一線でプレーできているのだろう。

 持丸監督の「ストレートを磨く」というその方針は今でも変わらない。右のアンダースローながら140キロ近い速球を投げ込み、来年のドラフト候補として期待される高橋 礼や、昨年プロ入りした原 嵩(千葉ロッテマリーンズ)もそうだが、専大松戸の投手はストレートが良い。

 また、今年の春季大会で投げた投手もストレートが良かった。2年生右腕の川上 鳳之は右スリークォーターから140キロ前半のストレートを投げ込み、2年生左腕の濱名 竜之介も135キロ前後のストレートを投げ込んでいた。濱名は昨秋では技巧派左腕のイメージだったが、この春では一変してストレート中心の投球を見せた。

 好投手を生み出す理由、それは持丸監督が、まず投手は「ストレートが第一」という方針を貫いているからだろう。専大松戸から次々と好投手が生まれる理由が分かった気がした。

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専大松戸・持丸 修一監督

 話を3年夏が終わった直後に戻すと、夏が終わって上沢は高卒プロ入りを目指すことを明言。早くからプロに行く器と評していた持丸監督からすれば、嬉しい決断だった。高校野球が終わってからも、トレーニングを継続しながら指名を待った上沢だが、もし指名されなければ、系列である専修大へ進む予定だった。結果北海道日本ハムファイターズから指名されその話はなくなったが、競争が激しいプロ野球で、ドラフト6位と下位ながらも通算13勝は立派な成績と言えるだろう。

 上沢の現在の活躍を見て持丸監督は、「それはとても嬉しいですよ。北海道日本ハムファイターズに指名された時も、いろいろな関係者の方から良い球団に入ったなと言われて。彼には3年やって、全く通用しなかったら辞めて、大学に行きなさいと言っていましたから」

 もし3年目に退団していたら、専修大学に行かせるつもりだったという。それは高校時代、一緒にプレーしていた仲間がまだ在学していたからだ。そして後輩たちもいる。「僕は仲間の存在はとても大事だと思っていますから、もしそういうことがあれば、そこで再スタートできればと考えていましたよ。まあそれはなくなりましたが。今ではプロでよくやっていますし、今でも連絡が来て、いろいろ冗談を言い合いながらやっていますよ(笑)」と笑顔を見せる持丸監督。

 上沢だけではなく、多くのOBは、現在も持丸監督に連絡や挨拶を行ったりするという。この日もOBの方が訪れ、とても嬉しそうな表情をしていた持丸監督。選手たちへ何気ない気遣いができるからこそ、卒業してからも持丸監督の下を訪れるのだろう。「私は結構怖い監督と言われているんだけどね(笑)。こうして卒業した後に来ていただいているのは嬉しいですよ」

 上沢にとって、今シーズンはかなり大事なシーズンだったが、昨年から痛めていた右ひじを治すために、3月末に右ひじ手術を決断。現在は実戦復帰を目指している。「かわいそうだけど、なんとか戻ってきてほしいね。本当に良い子だから...」

 表情を曇らせた持丸監督。2012年以来のパ・リーグ優勝を目指す北海道日本ハムからすれば、なんとしてでも戻ってきてほしい選手であろう。再び一軍のマウンドに登り、力強い投球を見せてくれることを期待したい。

(取材・構成=河嶋 宗一)