千葉明徳vs南稜vs都立城東
城東・関根君
まさに五月晴れと言っていい快晴の日曜日。千葉駅から京成千原線で4駅目の学園前という駅で下車すると、そのまま学校のキャンパスに繋がっている千葉明徳。ここに、先の春季東京都大会で都立校で唯一ベスト8に残った都立城東と埼玉県の公立校としては毎年健闘している南稜が集まった。
もっとも、この3校はいずれも昨秋から今春にかけて、異動などの事情によって指揮官が交替しているという共通点がある。それぞれ慌ただしい引継ぎなどもあったようだが、チームとしては継続していかなくてはならない。そういう意味では、こうした指揮官の異動や変更もまた、高校野球なのだ。
今春の東京都大会では、エースで4番の関根 智輝君が3試合で4本塁打するなどで投打に活躍し、優勝した関東一とも9回同点引き分け再試合を演ずるなどで「15年ぶりの甲子園の可能性も現実味を帯びてきた」とさえ言わせた都立城東、この日は最初から6回を投げるということで積年 ―君が4番投手で出場した。「試験前ということもあって、そんなに無理はさせたくない」と、池上茂監督が言うように、立ち上がりの関根君は7分程度の力で、まさに無理をしないという感じだったが、投げ込んでいくうちにギアが上がってきたのか、5回、6回の投球などは、「おーーっ」と唸らせるものがあった。ストレートの伸びがよく、打者の手元でホップする感じというか。初速から終速の差が少ないので打者にとっては打ちづらいのだろう。
結局、関根君は予定通り6イニングで奪った三振は6、許した安打は3回に平山君、谷君に連打された2本のみ。4回の失点は打ち取りながらも2つの失策絡みだった。ただし、4番打者としてこの日のバットは少しひっかけ気味で3打数0安打だった。
都立城東としては、石田 翔太君、小林 甲汰君という関根君に続く投手が故障で出られない中で、小柄な左腕皆川君が、残り3イニングを何とか投げて、その間に高野君の犠飛と田中君の内野安打で得点して、そのまま逃げ切れたということが、池上監督としても大きかった。それでも、「本当は初回と2回、無死のチャンスで、何とかしなくてはいけないんでしょうけれどもね…、そこで何も仕掛けられないでしました」と、反省もしていた。そんな都立城東は、2試合目は、大乱戦となって、初回と2回、打者一巡を2度も許して、この2回だけで
打者21人を迎えてしまうという状況ながらも、中盤に追いついて、9回に長打攻勢で突き放した。この試合では1番を打っていた志摩君は7度の打席で6打数6安打で犠打1。9回のダメ押し含めて、打点1の得点3と役割を十分に果たしていた。
しかし、予定していた投手陣は、大乱調で、さすがに苦しかった。最後は予定外の長濱君まで投げざるを得ない状況になってしまった。
南稜・小林君
乱戦に付き合ったというか、乱戦に入り込んでいった南稜は、荒井 晶平監督が昨秋から、前任の遠山 巧監督を引き継いで就任している。春季大会を通じて、徐々に指揮官として打ち出していきたい野球の方向性を示していき、それに選手たちも堪えていっているようだ。エース宮村君がある程度安定しているので、宮村君が投げればある程度試合は計算できるのだけれども、「投手が崩れると、どうしようもなくなってしまい、あんな試合(13対16)みたいになってしまいます。リズムが悪いと、守りでもどんどん崩れてしまうんですね」と、反省しきりだった。「取れるべきアウトはしっかりと取らないといけないということです」と、それは宮村君が投げながら、最後にひっくり返された試合でも、9回、2度の併殺チャンスをどちらも成立させられなかったことで、逆転を招いてしまった。「球界粘って追いつけたことよりも、その前にピリッとしておかなくてはいけません」と、しっかりと反省点を挙げていた。
昨年秋に、前任宮内 一成監督を引き継ぐ形で、監督就任して岡野 賢太郎監督。「去年の秋は、あれよあれよという間に勝ち上がっていかれて、関東まで戦わせていただきましたけれども、それは大きな自信になっていっているとは思います。漠然としていた目標の甲子園が、全国の強いところとやらせていただき、負けましたけれども、そういう中で現実も見えてきましたが、手ごたえも感じられました」と、県大会準決勝、決勝、そして関東大会という場を戦ってきたことは、間違いなくこのチームの糧となっていくであろう。
この日に見られた、9回の粘りなどは、そうした表れの一つとも言えようか。春季大会では背番号1番と2番で登録していた鈴木翔君と菅井君が現在はケガで、戦列を外れている中で、現有戦力で戦っていかなくてはいけないという意識は強い。
都立城東打線を7回一死まで1失点に抑えた佐藤 隼大君は、いいリズムで投げていたし、低めへの制球もよかった。それに、何といっても注目の関根君を3打席抑えたのは大きな自信と言っていいだろう。また、身体を少し傾けながらの右横手投げで、南稜を6イニング2失点で抑えていた川島君も失点した3回を除けば制球もよく、投球内容は悪くなかった。
9回、代打が出て、何とかつながって、平井君、中台君と言った中軸の勝負強い打撃でひっくり返しながらも、その裏の守りではバッテリーがいなくなってしまって、窮余の一策となった中での守りだったので、追いつかれたのも仕方ない部分もあったのだろう。
いずれにしても、さまざまなパターンの試合が相次いで、見ている方としては満載感はあったと言えようか。
(写真・文=手束 仁)