横浜隼人vs近江vs常葉橘

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神奈川、滋賀、静岡の有力校、それぞれに課題を見出しつつ夏へ向けて…

近江・京山君

 今の時期は、春季県大会などが終わり、夏へ向けてチームの再構築というか作り直しとともに、試合をしながらそれぞれに課題を見出して、それをこれから1〜2カ月の間にどれだけ修正していかれるのか…ということである。そして、どれだけベストに近い状態で夏の大会に入れるのか、そのための大事な期間となる。

 この日は横浜隼人に、春夏合わせて15回甲子園出場があり、2001年夏には甲子園で準優勝も果たしたという実績のある滋賀県の強豪近江と、09年以降で過去3度甲子園出場があり、今春の静岡県大会も制して、翌週には東海大会を控える常葉橘とが集まって、期待の高い変則ダブルの3試合となった。

 ただ、1試合目はどちらも投手がもう一つ乱調というか、作り直し中ということだろうか、いずれも制球に苦しんで、結果的には両軍合わせて22四死球という内容で、3時間19分という長い試合になってしまった。横浜隼人の水谷 哲也監督も、近江の多賀 章仁監督もどちらも、「う〜〜ん、もう一つよくないですね」と異口同音に言わざるを得ない結果になってしまった。

 近江の京山君はストレートは140km/hを超えるスピードがある快速投手だ。ベストならば、145km/hくらいも出せるという素材だ。しかし、この日はもう一つの武器となるべきスライダーの制球がよくなかった。「スライダーだけではなく、変化球のコントロールが全体によくなかった」と多賀監督。やはり、ストレートを生かすのも、鋭い変化球がコントロールされてこそのものでもあろう。スライダー含めて、変化球を見極められてしまうと、やはりちょっと投球の組み立てが苦しくなってしまうのは否めない。もっとも、それでも6イニングで毎回の8奪三振はさすがと言えば、さすがでもある。失点は、重盗絡みでいくらか守りのミスもあった。このあたりの精度を上げていくことも、近江としては夏へのテーマではあろう。

 試合は終始点を取り合う展開になって、9回に近江が連続四球とバント安打で無死満塁を作って、8番磯引君の安打と押し出し、そして2番唐澤君のスクイズなどで3点を奪った。しかしその裏、横浜隼人は5番高橋君と8番澁谷君のいずれもライトへのソロホーマーで1点差に迫った。結局は、最後は深田君が踏ん張った。

本塁を窺う常葉橘・高沢君

 近江はかつて、01年夏に3人の投手を巧みに使いながら準優勝を果たしているが、多賀監督は今年のチームも京山君を中心に、深田君と、内林君という3人の柱をイメージしているという。左の内林君が、期待を込めて2試合目を任されたのだが、5回につかまって持ちこたえられなかった。

 というよりも、ここぞという時に集中打が出て5回にも6連打を記録した常葉橘の打線のつながりが見事とも言えよう。常葉橘は系列の付属中学野球部も県内の強豪で、中学から上がってきて中高一貫の形になっている選手も多い。中学から上がってくる選手は、中学の大会を終えると、その後にKボールの試合を経験して、徐々に硬式球に慣れていくようにしているという。そういう意味では比較的自然に移行出来ているのではないだろうか。

「素材力としては、今度の1年生はなかなかいいんですよ」と、この3月から復帰した小林正具監督も目を細める。しかし、「今の3年生の子たちは話を聞く姿勢がよくできているんですよ。だから、物事の理解力が高いんですよね。やはり、高校野球は素材力だけではなくて、自分たちでどうしていくのかということを考えて理解していく力も大事です」と、日常生活の大切さを説いていた。常葉橘は、学校生活の中でも積極的に本を読んで自分で考える力を養う教育姿勢である。そんな姿勢がどれだけ身についていっているのかということも実は大事な要素なのである。

 必ずしも、個々の能力としては抜けているというワケではない今年の常葉橘。それでも小林監督も、「強豪校の網の目を縫って、何となくかいくぐりながら勝ち上がってしまいました」と言うように、県大会を勝ち上がってきたのは、実はそうした効く力と応用力が身についているということもあるのではないだろうか。連打が出るというのも、そのあたりの意識の高さでもあろう。

 横浜隼人は3試合目では、水谷監督期待の左の林明良君がやや荒れ気味ながらも6イニングで、3回には四死球で乱れたが、それ以外は持ち前の柔らかさも出しながら、力のある球を投げ込んでいた。2番手の林俊太朗君は、長身で角度を意識しながらの投げおろしだった。初めて対戦する打者は、その角度にちょっと戸惑いそうな感じでもある。

 結局、この日は3校1勝1敗。それぞれが課題を見つけながら、これから夏へ向けて、もう一度整備していくことになるであろう。

(写真・文=手束 仁)