赤ら顔のおにいさん、口説くならシラフの時に(イラスト・サカタルージ)

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「すぐ赤くなっちゃうから、1〜2杯程度なら」「きゃ〜課長さん、可愛い〜ッ」と言われて女性の部下からお酌され、いい気持ちになっているアナタ、そのへんでやめておかないと食道がんになりますよ。

生まれつき酒に弱い体質の人ががんになるリスクは、驚くほど高いという研究が相次いでいるのだ。

食道がんになる危険がずば抜けて高い

2016年2月、愛知県がんセンターの松尾恵太郎研究部長らのチームが、欧州の医学誌に衝撃的な研究を発表した。酒を飲むとすぐ顔が赤くなる体質の人が、長年「大量に飲酒」を続けると、80歳までに食道がんや咽頭がんになる確率が約20%になるというのだ。5人に1人の割合である。その「大量の飲酒」の量とは、具体的には1日に日本酒2合以上の量を週に5日以上続ける場合だ。

ちなみに、飲んでも赤くならない人が、同じ量を飲み続けてもがんになる確率は約3%しかない。赤くなる人の7分の1だ。

同様の研究報告がほかにもある。2015年に同じ松尾恵太郎氏が発表した研究では、顔が赤くなる人がすい臓がんになるリスクは、赤くならない人に比べ、1.5倍だった。また、国立がん研究センターが2005年に発表した研究では、胃がんになるリスクが2.1倍である。

特に、食道がんになる危険がずば抜けて高いのが特徴だ。顔が赤くなる体質に加えてタバコを吸う人の場合は、顔が赤くならずタバコを吸わない人に比べ、リスクが最大で190倍に跳ね上がるデータがあるほど。消化器内科の専門医のサイトを見ると、「日本からアルコールが消えたら、食道がんの発症は90%以上減るでしょう」「当病院で食道がんの手術を行なった患者さんの80%は、顔が赤くなるタイプの人でした」などと書いてある。

アルコール・パッチテストで自分の体質を知ろう

なぜ、酒を飲むと赤くなる人ががんになりやすいのか。顔が赤くなるのを「フラッシュ反応」といい、アルコールを分解する酵素の中で特に重要な「ALDH2型」の働きが生まれつき弱い人に起こる。欧米人には少なく、日本人を含むアジア人に多い。よく欧米人に比べ日本人は酒が弱いと言われるのは、日本人の約40〜45%が「ALDH2型」が少ない遺伝子を持っているからだ。「コップ1杯のビールで顔が赤くなる人」の9割が該当する。

アルコールは体内で有害物質のアセトアルデヒドに変わり、「ALDH2型」などの酵素の働きで有用物質の酢酸に変わる。しかし、「ALDH2型」の働きが弱いと、アセトアルデヒドが残ってしまう。このアセトアルデヒドが非常に強い発がん性物質なのだ。建築資材のシックハウス症候群が問題になっているが、アセトアルデヒドの粉末ががんを発症させるからだ。ちなみに、アルコールそのものにも発がん性があるから、悪い相乗効果が高まってしまう。

食道がんが多いのは、こんな理由からだ。口から入ったアルコールは、まず胃の中で分解される。しかし、「ALDH2型」の働きが悪いと、アセトアルデヒドのまま腸まで行ってしまい、体内に吸収される。そして肺まで血液で運ばれて気化した後、呼気として食道や口腔内に出てくる。

よく酒に弱い人がゲップするのは、アセトアルデヒドの「毒ガス」を吐いているのだ。気化したアセトアルデヒドは粘着性が高いので、肺や口腔内、食道に蓄積しやすい。また、唾液に溶け込んだものを飲みこむからますます食道に残る。

では、顔が赤くなる人はどうしたらよいのだろうか。専門医はサイトの中でこうアドバイスする。

「飲まないに超したことはありませんが、無理でしょうから、付き合い程度にとどめるべきでしょう。これを機会に自分の体質を知るために、アルコール耐性検査(パッチテスト)を近くの医療機関か薬局で受けることを勧めます。また、ものを飲みこむ時にひっかかりがあると食道がんの心配があります。定期的な検査を受けてください」