2015年12月27日、皇后杯決勝戦をもって現役を引退した澤穂希。あれから4日後の31日、フジテレビでは「澤穂希 引退特別番組サッカーと歩んだ半生」が放送され、澤をはじめ宮間あや、川澄奈穂美らなでしこジャパンのメンバーが出演を果たした。

澤のキャリアを振り返った同番組では、2004年4月24日に行われたアテネ五輪アジア最終予選=北朝鮮戦を取り上げ、彼女のターニングポイントと紹介。いわずもがな、女子サッカー界の未来を切り開いた運命の一戦である。アテネ五輪出場を目指した、なでしこジャパンと呼ばれる前の女子日本代表は、当時アジア最強と言われた女子北朝鮮代表と対戦した。

だが、チームの要・澤は右ひざ半月板損傷により試合に出場できるようなコンディションではなかった。この時を振り返った元女子日本代表・加藤與恵さんは、大一番を前にした澤の部屋を仲間達と訪ね「動けない状態でもピッチにいてほしい」と嘆願したという。すると当時25歳の澤は右膝に何重ものテーピングを巻き、強行出場。チームも執念で3得点を挙げ勝利を手にした。

「あの試合に勝ってなかったら今のなでしこはなかった」という澤に、加藤さんもまた「ケガをおしてまで先頭に立って戦ってくれた澤選手の姿を見て、多くの選手が勇気を貰った」と感慨深げに話す。また、川澄が「そうまでしてピッチに立とうと思ったのはなんでですか?」と澤に尋ねると、「その試合に懸けてた。その試合に負けたら、そこはチーム状況にもよるけど、多分自分が出てなかったら後悔してるなって」と返答した。

すると加藤さんは「それぞれのチームに戻ってクラブハウスで初めて澤選手に会った時に、顔を合わせた途端に澤が泣き出した。普段弱いところを見せない穂希が泣いてる。それを見た瞬間、私も涙して二人で抱き合って泣いた」というエピソードを明かす。

これを静かに聞いていた澤も「ずっとアテネに出場することを目標にやってきたにも関わらず、手術しないとダメだって。ドクターってそういうの慣れてるから、普通にオペみたいな感じだったんですけど、言われた本人はその一言がショックで大会までに戻るのに2ヶ月くらいだったので不安で不安でしょうがなくて。皆一緒に頑張ってきた選手の顔を見たら自然と涙が出てしまった」と当時の心境を語った。