侍ジャパン・則本昂大【写真:編集部】

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米国戦でも快投した右腕の起用法が一発勝負で鍵に、決勝で先発も?

 世界野球「プレミア12」に出場中の侍ジャパン日本代表は、14日の米国戦に10−2で快勝し、4連勝で1次ラウンド首位突破を決めた。15日のベネズエラ戦を残して次のステージに駒を進め、小久保裕紀監督の視線は早くも準々決勝へ向いている。一発勝負の戦いでキーマンの1人となりそうなのが、ブルペンを支える則本昂大投手だ。

 2年連続奪三振王に輝いた楽天のエース右腕は、米国戦で1点ビハインドの5回から先発・菅野の後を継いで登板。初球でいきなり156キロをマークすると、球場がどよめいた。この回は3者凡退の快投。すると直後の5回、味方打線が筒香の同点タイムリー、中田の勝ち越し3ランで逆転。試合の流れが一気に変わった。

 6回は2死一、三塁のピンチを招いたものの、モーリンを152キロの直球で空振り三振に仕留めて無失点。打線は7回にも松田の満塁弾などで5点を加えて試合を決め、則本の後を継いだ山崎、増井、澤村も好投した。

 試合後、則本は「思っていたよりも(登板のタイミングが)早かったけど、いつでもいけるように準備していたので、問題なく試合に入れました。何とか相手の流れを切りたいと思っていたので、それをうまくすることが出来たんじゃないかと思います」と満足気にうなずいた。

 起用に応える快投に、小久保監督も「則本をはじめ、つないでくれたピッチャーが全員仕事をしてくれたので、いい勝ち方ができた」と最大級の賛辞を贈った。

「いい流れを引き継げるのも彼で、先発が駄目なときは流れを変えられるのも彼」

 本来は先発だが、開幕戦の韓国戦に続いて、中継ぎでも役割を果たした右腕。楽天入団1年目には、日本シリーズでブルペンでもフル回転し、球団初の日本一に貢献した。今大会でも投げる場所を選ばず、持ち味の馬力を生かして貴重な仕事をこなしている。

 そして、その存在が、初代王者を目指す日本にとってこの先も重要になる。

 まだ1次ラウンド最終戦のベネズエラ戦を残しているが、指揮官は「照準は準々決勝。負けたら終わりなので。一番考えたのは投手起用。それがある程度見えてきたかなというのはある」と話した。

 米国戦でも危なげない投球を見せた山崎、増井に加え、メキシコ戦で1点差の9回を締めた松井裕も計算できると見ており、澤村も含めて7回以降の継投のイメージは出来上がっている。

 まず則本が期待されるのは、その前の役割。小久保監督は「第2先発というより、今回は中(継ぎ)で、と考えていた。先発ピッチャーのいい流れを引き継げるのも彼で、先発が駄目なときは流れを変えられるのも彼」と言う。

 準々決勝以降では、先発が崩れて悪い流れになった場合に早い段階で食い止めないと、取り返しがつかなくなる可能性がある。リードした展開でも、則本が控えていると考えれば、先発は立ち上がりから飛ばしていける。さらには、大谷と前田に準々決勝と準決勝を任せ、決勝で則本を先発起用するというプランも考えられる。

 どんな状況で送り出しても最高の投球をして、ベンチに戻ってきてくれる。短期決戦で、“最強の便利屋”とも呼べる右腕の存在はあまりにも大きい。世界一への鍵を握る男は、いつでも期待に応えられるように準備を整え、マウンドに上がる瞬間を待っている。

清水友博●文 text by Tomohiro Shimizu