JR上野駅から常磐線快速で約30分のところにある柏市は、「千葉の渋谷」と呼ばれる県下有数のオシャレタウンだ。市内でにぎわっているのは駅前で、高島屋やそごう、丸井、ビックカメラ、ドン・キホーテが出店し、大勢の買物客が集まる。

中心部を離れれば自然が残る柏の郊外に、セブン&アイグループが進出する。2016年春、ショッピングモール「SEVENPARK ARIO KASHIWA」(セブンパーク アリオ柏)がオープンする。
敷地面積約13万平米、売場面積約6万5000平米は、2015年10月29日にオープンしたばかりの「ららぽーと海老名」を少しだけ上回る。


「セブンパーク アリオ柏」外観イメージ

イオン三角地帯に殴り込み!?

具体的な出店場所は2005年に編入合併された旧沼南町。国道16号と県道8号線の交差する地点に近い。市内だけでなく我孫子や鎌ヶ谷、白井、印西も商圏に入る。
下の地図に記した通り、イオンモール柏、イオンモール千葉ニュータウン、イオン鎌ヶ谷ショッピングセンターの「イオン三角地帯」の真ん中に楔を打ち込む形だ。


アリオ柏周辺の地図(編集部作成)

旧沼南町はプチリゾートといえる土地で、1960年代前半に大規模レジャー施設の建設計画が持ち上がったこともあった(参照:幻の「手賀沼ディズニーランド」、知ってますか?)。
夢よもう一度――というわけではないだろうが、併設される公園は約1万2000平米もある。公表された全景イメージには、円形の広場や屋外ステージ、家族で遊べそうな噴水、パラソル付きのテラス席などが描かれている。で、バーベキュー場やドッグランも設置されるという。


アリオ柏の屋外施設イメージ

セブン&アイが2014年末に開業した「グランツリー武蔵小杉」(川崎市中原区)は、約4300平米の屋上庭園「ぐらんぐりんガーデン」となっていて、レモンやザクロ、ラフランス、イチジクなどが栽培されている。親子連れが遊べる遊具も備わっている。アリオ柏にも似たような施設が整備されるのだろうか。

ちなみに、先述のららぽーと海老名の店舗面積は、アリオ柏よりも約6000平米狭いのに、テナント数は262もある。ららぽーとが店舗を詰め込む傾向にあるとはいえ、アリオ柏はゆったりとした買い物空間となることだろう。


グランツリー武蔵小杉(編集部撮影)

気になるテナントだが、上質感のあるショップが集まると予想する。
モール事業で先行するイオンだが、柏や鎌ヶ谷は核テナントとしてのスーパーのイオンの存在があまりにも大きい。これに対してアリオはイトーヨーカドー色を薄める傾向にある。
セブン&アイは、ロフトやフランフラン、アカチャンホンポ、タワーレコードといった人気ショップを傘下に収めている。さらに仏デザイナーのジャンポール・ゴルチエとコラボレーションし、10月1日からPB(プライベートブラント)としてイトーヨーカドーや西武、そごうで販売を開始した。これらのショップが入るのは間違いない。


アリオ柏の内観イメージ

地元民の本音は「国道16号線の渋滞が...」

セブン&アイは、屋号を「セブンパーク」とした理由について次のように説明する。

「当施設は『大人がトキメキ、子どもがワクワクする新体験 PARK』を基本コンセプトに、地域のお客様に、 ショッピング、憩いの場、健康、スポーツ、カルチャー、カルチャー、エンタテイメトの全てを体感いただきたいという想いを込め――決定いたしました」

柏はスポーツが盛んな土地柄でもある。J1の柏レイソルの本拠地・日立柏サッカー場は4キロほど西北に位置する。
アリオ柏としては地元で熱い支持を集めるスポーツクラブと提携して地元密着をアピールしたいところだろうが、レイソルの公式スポンサーを務めているのはモラージュ柏だ。館内にはクラブショップやフットサルコートもあり、ここで開かれる少年サッカー大会に柏レイソルアカデミーが出場することもある。

既に進出したモールとどうやって差別化していくか、注目される。

最後に。アリオ柏は駅から遠く、車またはバスに乗らないといけない。柏駅方面からは国道16号線が走るが、一帯の幹線道路は整備途上だ。規模の大きさに驚く一方で、道路事情の悪化を不安視する向きもある。

「これめちゃくちゃデカいぞ......」
「規模がレイクタウンと同じくらいでイーアスの2倍くらいらしい」
「16号線の渋滞が悪化するな...」
「駅から遠いよなぁ〜(>_<)」

これらの課題をどうやって解決し、地域の繁栄につなげていくのか。セブン&アイだけでなく行政の取り組みが欠かせない。