「ただ流されるような形で大学に進学して、就職。それが子どもさんの本当にやりたいことなのか」 カドカワ「N高等学校」が問いかけること
カドカワが運営するネットの高校「N高等学校」が地方に注目する理由は、「リアルなコミュニケーション」を重視しているからだという。通信制高校にも関わらず制服を用意したことも、その理由に基づくという。
志倉千代丸さんがデザインした制服は大きな話題を集めた前編に引き続き、校長の奥平博一さんへ行ったインタビューをお届けしたい。
通信制高校に対するマイナスイメージを払拭したい
――N高等学校のパンフレットには、「社会問題としての不登校」に関する記述があります。「人と人とのつながり」や「体験」を重視する方針に、不登校問題は関係しているのでしょうか。
奥平 不登校の学生にとって、N高等学校が何らかのきっかけになれば幸いです。けれども、不登校の学生だけを集める学校にするつもりは一切ありません。すべての学生にとって、進学先の1つになる学校をつくりたい。だからこそ、今までの通信制高校がやっていないことへ積極的に取り組んでいるのです。大きくいえば、N高等学校を「通信制高校に対するマイナスイメージを払拭する学校」にすることが、我々の大きな挑戦といえるかもしれません。
奥平校長は、教育関連事業に30年以上携わってきたベテランだ――「マイナスイメージの払拭」について、もう少し詳しくお願いします。
奥平 通信制高校と聞いて、何を思い浮かべますか?多くの人が「道を外れた」「ドロップアウト」といったマイナス方面の印象を抱いてしまうことは、現状では否定することができません。
でも通信制には、様々なことに挑戦できるというメリットがあります。普通の全日制の高校だったら、通う学校である程度のカラーが決まってしまう。
しかし、N高等学校だったら本当に多様なカリキュラムを受講することが可能です。ドワンゴのエンジニアが教えるプログラミング授業、電撃文庫の作家が手がけるエンタテイメント授業――。大学受験ですら、用意したコースの1つに過ぎないわけですから。
そういったメリットをきちんと伝えて、「全日制の普通高校より、通信制のN高等学校の方が魅力的」だと、そうポジティブに感じる学生が出てきて欲しいと思っています。
――カリキュラムのなかには、キャリア教育の老舗「バンタングループ」(ドワンゴ子会社)と提携した通学コースも用意されていますね。
奥平 バンタンといえば、50年以上にわたって社会人向けのキャリアスクールを運営してきた企業法人です。「企業法人」だからこそ、「現役のプロ」による実践型の教育を実現できていたんですよ。学校法人では、様々な制約があって実現できないことも多いですからね。
そんな「企業法人」のバンタンと、「学校法人」のN高等学校が組んだ。つまり、ネットで普通教育を受けながら、社会人向けの本格的なキャリア教育に接することが可能だということです。これは、いま一番新しい教育の形ですよ。大げさに言えば、N高等学校とバンタンが教育を変えていくのではないかと思っています。
東京・大阪の2校舎で、通学コースを受講できる(画像はN高等学校ウェブサイトより)――最後になりますが、読者の皆様へ向けてメッセージをお願いします。
奥平 ただ周りの風潮に流されるような形で大学に進学して、就職して働く。それが子どもさんの本当にやりたいことなのか、保護者の皆さんも1度考えてみてください。我々が用意しているのは、N高等学校という選択肢です。応募さえしていただければ、我々から入学をお断りすることは一切しないつもりです。来るもの拒まずではないですが、どんな若者でも受け入れていきたい。それだけの体制を、我々は準備していくつもりです。
N高等学校校長 奥平博一カドカワ学校設立準備室メンバー。学校現場での教員から大手学習塾、大手通信制高校を経てドワンゴに参画。教育業界に30年以上従事。