阪神打撃投手が明かす福留復調の要因とは

 近年まれに見る混戦が続くセ・リーグ。12日を終えた段階で巨人のみが貯金を持つ珍しい戦いが続いているが、その中で阪神も粘り強く2位につけている。その阪神を引っ張っているのが、好調な打撃を維持している福留孝介外野手だ。

 一昨年に日本球界に復帰したが、度重なる負傷に苦しんだ。昨季は開幕直後に西岡と激突して負傷。後半戦に復調は見せたものの、なかなか波に乗ることができなかった。しかし今季は開幕から勝負強い打撃を見せ、交流戦後はDeNA戦で1試合2本塁打を放つなど、その打棒はさらに輝きを取り戻しつつある。

 その好調の要因はどこにあるのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜と4球団で捕手として活躍した野球解説者の野口寿浩氏が、“ある証言”を基に福留の復調の理由を語ってくれた。

「阪神の打撃投手で多田君という人がいます。主力どころに投げる、左の投手です。継続的に投げているので、彼なら福留の復調の理由が分かると考え、先日話を聞きました。

 福留が昨季あまり調子が上がらなかった理由として、次のことを挙げていました。メジャーでスピードのあるツーシームに対応するため、わざと(バットの)ヘッドを遅らせ気味に出してきて、反対側へ打つイメージを持っていたと。しかし日本に戻ってきてからは、向こうほどボールが来ないので、ヘッドを遅らせていたことが仇となり、無理にヘッドを返すことになって凡打に繋がっていました」

野口氏「福留は中日時代、手が付けられない状態に近づきつつある」

 メジャーリーグは直球と言ってもツーシーム系の動くボールが多く、平均球速も日本より速い。福留はそのボールに対応するため、あえてヘッドを遅らせることで対応してきたのだという。それが日本球界復帰後にマイナスに作用し、中日時代に見せていたキレのあるバッティングを失う結果となってしまっていたというのだ。

 野口氏は続ける。

「今年は、異常というくらいヘッドが“利いている”状態になっているそうです。それも、ボールが来るところでバットを抑えて、手元に来た瞬間にヘッドを走らせられる。相当良い状態になってきている。だから差し込まれることも少なく、想像以上にボールが飛んでいく。

 福留は中日時代、手が付けられない状態がありました。首位打者争いを続けながら、要所では一発もある。WBCで代打ホームランを放ったころは、本当に素晴らしい状態を保っていました。多田君は、今の福留がその状態に近づきつつあると話しています」

日本仕様に戻りつつある福留、理想の打順は…

 福留は12現在、打率.266、15本塁打、45打点と、一定の成績を残している。本塁打はチームトップ、打点もゴメスと並んで1位だ。ただ、中日時代の成績と比較すれば、物足りなさも残る。

 野口氏は、そうした現状を踏まえた上でこう続ける。

「福留の状態は、中日時代と比較すればまだ6割程度。多田君も、まだまだ良くなると話していました。現在の体調を維持できれば、シーズン終盤には、あの頃の8〜9割程度まで戻るのではないかとも。福留は間違いなく“日本仕様”に戻りつつありますし、行く末は恐ろしいです。

 ただ、今は鳥谷が6番を打っていますが、体調が戻れば鳥谷が1番を打つのがやはり理想です。そうなれば上位打線の厚みはかなりのものになります。福留も現在は3番を打っていますが、両外国人を活かすために6番に据えるのが本来は理想です。ただ福留を3番で起用するのであれば、6番は今成と新井良太が頑張るしかありませんね」

 中日時代に見られた“手が付けられない”福留が戻ってくれば、マートンにも復調の兆しが見える阪神のチーム力は、間違いなく高まるだろう。和田監督が今後、福留をどの打順で起用するのか、注目だ。