ついに「空のF1」レッドブルエアレースが日本で初開催、予選の様子を速攻でレポート
最高時速370キロメートルでパイロットにかかる最大重力加速度は体重の10倍の10Gと、肉体の限界に挑戦しつつ極限の技術を競う地球最速のモータースポーツ「Red Bull Air Race(レッドブル エアレース)」が日本に初上陸しました。アジア人としては初のエアレースパイロットの室屋義秀選手も参戦するエアレース・ワールドチャンピオンシップ2015「第2戦 in Chiba」は、初日の2015年5月16日(土)に予選レースが幕張海浜公園で行われました。
千葉市 | Red Bull Air Race
「エアレース」がどんなモータースポーツなのかは以下のムービーを見ればよく分かります。
Red Bull Air Race Chiba / レッドブル・エアレース2015 TVCM - YouTube
2014年から3年ぶりに復活したエアレース・ワールドチャンピオンシップは、世界各国・全8戦で行われ、優勝12ポイント、2位9ポイント、3位7ポイント、4位5ポイント(以下、1ポイントずつ減り8位までがポイント獲得)と順位に応じてポイントが与えられ、最も多くのポイントを獲得したパイロットがワールドチャンピオンに輝きます。そして2015年、ついにエアレース・ワールドチャンピオンシップが日本で初めて開催されることになったというわけです。
◆予選・決勝の方式
エアレース・ワールドチャンピオンシップは14人のパイロットによる予選が行われ、そのタイム順に決勝の対戦相手が決まります。予選は単純なタイムトライアル方式でタイムの順に順位を決定。予選の翌日に行われる決勝はまず、「ヒート方式」と呼ばれる1対1の対戦を実施。予選のタイム1位VS最下位、2位VS13位、という風に、7組のヒートが行われる「ラウンド・オブ・14」の勝者7名と、ラウンド・オブ・14敗者の中で最もタイムの速かった1名によって、再びヒート方式で争う「ラウンド・オブ・8」で上位4名のパイロットを選出。勝ち残った4名によるタイムトライアルで勝者が決定するという仕組みです。
千葉大会のコースレイアウトはこんな感じ。直線が基調のシンプルなレイアウトですが、東京湾に吹く風をどうコントロールするかが大きな鍵を握ることになりそうです。
◆予選開始前のハンガーの様子
千葉県浦安市にあるレッドブル・エアレース特設飛行場に到着。パイロットたちは浦安を離陸、3分ほどかけて幕張のコースを目指すというわけです。
午前中はあいにくの小雨。
ピットがずらりと並んぶ「ハンガー」。
前年、惜しくもタイトルを逃した、ハンネス・アルヒ選手のピット。
マシンは多くのエアレース選手が使う「EDGE 540 V3」
主翼の端にはテニスボール。
ディフェンディングチャンピオンのナイジェル・ラム選手のピット。
マシンは「MXS-R」。カーボンパーツ使いまくりで軽量の機体です。
主翼のウィングレットが特徴的。
インタビューに応じるラム選手は非常にリラックスした様子でした。
エアレース・ワールドチャンピオンシップ2015開幕戦を制したポール・ボノム選手のピット。
ボノム選手もリラックスムード。
マシンはEDGE 540 V2。旧式のマシンながら開幕戦を制したのは、さすが通算優勝回数トップの16勝を誇る実力の裏返し。
室屋選手のピットはこんな感じ。ゼッケンナンバーは「31」
千葉に待望の新モデルEDGE 540 V3を持ち込みました。
ピカピカの機体。
室屋選手が登場すると……
あっという間に人の山。
「ニューマシンの調子は快調。日本のファンの応援は、プレッシャーよりも後押しになる」と語っていました。
「エアレースのゴッドファーザー」と呼ばれる初代ワールドチャンピオン・ピーター・ベゼネイ選手のピット。
マシンはベゼネイ専用機として開発された「Corvus Racer 540」
機体の上には「ベゼネイ組」ののぼり。
昨年の最終戦「シュピールベルグ大会」を制したニコラス・イワノフ選手のピット。
黒×オレンジの機体は非常に空に映えます。
マティアス・ドルダラー選手のピット。
マシンはEDGE 540 V3。
ドルダラー選手。パイロットはみなリラックスした雰囲気。そうこうしているうちに雨があがりました。
◆トレーニングセッション
幕張海浜公園置きに浮かぶパイロン。パイロットたちはこのパイロンで設定されたコースを周回します。なお、パイロンにヒットすると2秒加算のペナルティになります。
これはスタートとゴールを兼ねるパイロン。
沖には停泊する無数の船。
雨が止んで、午後2時頃、トレーニングセッション(練習飛行)がスタート。
天候不良のため、前日にフライトできなかったパイロットたちはこれが初めての千葉の空。東京湾に吹く風はかなりやっかいな模様。
パイロンヒットが続出。
しかし、「エアゲーター」と呼ばれるパイロン修復のプロがササッと修復。
パイロンにエアが送り込まれると自立。
ものの数分で元通り。
スタートゲート前からのトレーニングセッションの様子はこんな感じです。
レッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップ2015 in Chibaのテスト飛行の様子 - YouTube
◆予選
まもなく予選がスタート。今度はスタート地点と正反対のコース端に移動。
予選トップタイムをたたき出したのは、ニコラス・イワノフ選手でした。
エアレース2015・第2戦千葉の予選トップはニコラス・イワノフ - YouTube
トップタイムのイワノフ選手でしたが、2本目はパイロンヒットでタイムを伸ばせず。パイロンは安全のために機体が触れた瞬間に裁断される特殊な素材でできています。
パイロン復旧を見守るお客さん。なんと初日は6万人が来場したとのこと。
エアゲーターの早業を目の前で見ることができます。
後半のパイロットたちは、強くなる風のせいで思ったようにタイムを伸ばすことができません。
そして、9番目に室屋選手が登場。
室屋選手の予選1本目はこんな感じ。
エアレース2015・第2戦千葉予選1本目の室屋義秀選手のアタック - YouTube
圧倒的に大きな歓声を受ける室屋選手。
しかしタイムを伸ばせず。トレーニングセッションで51秒台を出していましたが、予選は52秒429で9位に終わりました。
ディフェンディングチャンピオンのナイジェル・ラム選手もタイムが伸びません。
前年シリーズ2位のハンネス・アルヒ選手は痛恨の2秒加算ペナルティ。
一方で、最後にアタックした開幕戦の覇者ポール・ボノム選手は51秒653で3位をゲット。なんと、明日の決勝ラウンド・オブ・14の相手は予選12位のアルヒ選手となりました。
予選結果は以下の通り。
1位:ニコラス・イワノフ 51.102
2位:マティアス・ドルダラー 51.530
3位:ポール・ボノム 51.653
4位:マット・ホール 51.951
5位:マイケル・グーリアン 52.014
6位:マーティン・ソンカ 52.024
7位:カービー・チャンブリス 52.086
8位:フアン・ベラルデ 52.106
9位:室屋義秀 52.429
10位:ピート・マクロード 52.614
11位:ナイジェル・ラム 53.375
12位:ハンネス・アルヒ 53.416
13位:ピーター・ベゼネイ 55.183
14位:フランソワ・ルボット DNS
◆選手記者会見
予選終了後、1位のイワノフ選手、ディフェンディングチャンピオンのラム選手、そして室屋選手が記者会見を行いました。
「千葉にもたくさんのエアレースファンがいることが分かってうれしかった」と語ったイワノフ選手。
ラム選手はじっと考え込むような表情。
今日のレースでは予想外にプレッシャーを感じたとのこと。
室屋選手は、「6年間、誘致してきた日本開催が実現したことは感慨深いこと。ただしもうレースは始まっています。多くのみなさんに応援していただけるのは励みになり、モチベーションキープに役立つのでありがたい。新しい機体はどうしても千葉に間に合わせたかった。新マシンはブライトリング・ファルケンのスポンサー、そして日本の皆さんの応援があってのもの。明日はレースに集中する」とコメントしていました。
なお、レースディレクターのスティーブ・ジョーンズ氏は「日本のコース会場は素晴らしい。来年以降もエアレースを日本で開催できればと考えている」と述べました。
エアレース・ワールドチャンピオンシップ2015「第2戦 in Chiba」の決勝は、明日2015年5月17日に開催され、レースの様子はNHK BS1で午後8時から放送予定です。もちろん決勝の様子も記事化予定なので、お楽しみに。
エアレース世界選手権2015 - NHK
http://www4.nhk.or.jp/P3487/
・つづき
日本初開催のレッドブルエアレース2015千葉・決勝レース丸わかりレポート - GIGAZINE