安倍晋三公式サイトより

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 安倍晋三総理大臣は4月28日に訪米し、オバマ大統領との首脳会談や上下両院合同会議での演説などをおこなった。安倍訪米は世界各国が注視する一大イベントだった。それだけにお膳立てをした日本政府側の政治家や事務方たちの苦労は、想像を絶するものがあったに違いない。

 重責の荷が下りたことで気が抜けてしまったのか、安倍総理の訪米に帯同していた山本一太参議院議員が、やらかしてしまったのである。

 事の顛末は──山本議員は安倍総理より一足早くアメリカから帰国の途についた。日本に帰国して、自身の仕事をこなした後、再び羽田で安倍総理を迎える予定だったのだろう。

 そうした安倍総理との親密ぶりをツイッターに投稿した……まではよかったが、その内容をポストしたのは山本一太参議院議員のアカウントではなかった。ツイートしたのは安倍晋三総理大臣のアカウントで、ご丁寧にも山本一太参議院議員が飛行機の機中と思しきシートに座っている写真まで添付されていた──。

 このツイートが発信されると、シンパ・アンチ問わず、安倍総理をフォローする人たちは騒然となる。これまで、安倍晋三総理大臣は自身の政見を述べたり、政策を説明するためにツイッターやフェイスブックを利用してきた。安倍総理のアカウントはツイッター社から公認マークも得ている。

 それにも関わらず、山本一太議員が安倍総理のアカウントでツイートしているのはどういうことなのか? 山本一太議員は、「安倍総理は時間がなかなか取れないので、総理の要請でネット戦略アドバイザーの自分が代わりに総理の言葉を投稿している」と代筆を認めつつ、弁明した。

ネット知識がない政治家のツイートは秘書が代筆

 政治家のツイッター事情について、ある永田町関係者はこう話す。

「政治家がツイッターを使っているのは、ほとんど選挙目的ですが、先生方の多くはインターネット知識がほとんどありません。そのため、ツイッターでのつぶやきは秘書が代筆しています。代筆といっても秘書が勝手にツイートしているわけではなく、先生が言ったことやメモ書きした文章をツイートしています」

 いまや、ツイッターやフェイスブックなど、SNSは政治家には欠かせない情報発信ツールになっている。忙しくても、自分でPCやスマホを操作してツイートをしている議員はたくさんいる。原口一博衆議院議員や蓮舫参議院議員などは自分自身でツイートしているし、年配議員でも中山成彬前衆議院議員はガラケーを操ってツイートしていた一人だ。

 多忙を極める総理大臣と国会議員とを単純に比較して論じることはできない。総理大臣がツイッターやフェイスブックに書き込んでいる時間的余裕はないだろう。総理大臣がスマホにかじりついていたら、それはそれで国民にとって心配になる。だから、誰かにゴーストライターをお願いすることは理解できる。

「仮に代筆をするにしても、そうした作業をおこなうのは事務方です。同じ党でも政治家各人はそれぞれ政治思想や意見が異なりますので、政治家のツイートをほかの政治家が代筆するなんて聞いたことがありません」(前出・永田町関係者)

 実際、ツイッターで食いしん坊キャラとして愛されている片山虎之助議員は手書きのメモを秘書に渡して、それを代筆してもらっていると公言している。

 山本議員は自民党が野党に転落した頃より、安倍再登板を高らかに主張していた安倍側近議員としても知られる。それだけに安倍総理と考え方は近く、安倍総理の考えを忖度してツイートしていたことは間違いないが、安倍総理と山本議員の意見はすべて同じなわけがない。

 山本議員が安倍総理になりかわってツイートしたのは今回が初めてではないはずだ。そうなると、これまで安倍総理のツイートの中で、どれが安倍総理の主張で、どれが山本議員の主張だったのか? 

 安倍総理の意思とは異なる、山本議員の主張を安倍総理の声として発信していたという疑惑だって出てくる。そうした疑惑は当然ながらツイッターだけではなく、フェイスブックにも向けられることになるだろう。

(取材・文/小川裕夫)