ステージで司会を務めるはるか(撮影:徳永裕介)

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東京ビッグサイトで3日まで開催中の「2005 国際ロボット展」(日本ロボット工業会、日刊工業新聞社主催)のステージで、アンドロイド(人間型ロボット)の『はるか』が、司会を務めている。身長170センチのすらりとしたプロポーション。落ち着いたまなざし。特殊なシリコンでできている皮膚の質感は「この人、ちょっと化粧が濃いけど、きれいだな」と、本物の人間と勘違いしてしまうほどリアル。しかも、約8000回のステージを務めた愛・地球博でも、一度も故障による中止をしなかった。だが、開発には若い女性の形ならではの難しさもあり、さまざまな苦労があったようだ。

 開発したロボット制作・開発のココロ(本社・東京都羽村市、高橋育久社長)の設計担当、島谷直志さん(34)は「若い女性に挑戦したのは、一番難しい姿だから」と明かす。同社はこれまで、老人型のアンドロイドを製作してきた。しわを多くすると細部がリアルでなくても、人間の老人に見えるのだという。「しかし、若い女性だと大きさも小さければ、かわいい、かわいくないというのも如実に出てしまう。あえて一番難しいものにチャレンジして、そこから得たノウハウを大切にするというのが、うちのスタイル」と話す。

 ココロはこれまで、恐竜や動物型のロボットにも取り組んできた。そのため駆動部分のノウハウはかなりたまっていたが、人間には関節が非常に多い。「どこまで省略して本物に近づけるか。本来2つか3つの関節で果たす役割を、人間にはない位置に関節を1つつくることで代用することはできないか。そういった工夫をずっと続けている」という。

 また、はるかの細いプロポーションの中に必要な機械と関節を入れて、なおかつ制御性をよくするのが難しかったという。「想像以上に人間の体の中は場所がない。もう5ミリ肩幅が広ければと思うこともあった」

 皮膚にも苦労したようだ。「人間の顔のように骨にくっついていないので、はがれたりしなければならないのだが、そうさせつつ、ずれたり伸びたりしなければならない」。今回あえて、はるかは無表情に設定してある。ニコッと笑わせることもできるが、そうすると皮膚の劣化が極端に早まってしまうのだという。

 今後の課題としては、表情や動きがまだぎこちないことをどうするか。まだ、想定するリアルさの3割程度しか達成していないという。人間そっくりにしてどうするのかたずねると、島谷さんは「たとえば、顔を狼男にして、体をスレンダーにすると、見ている人は人間がマスクをかぶっていると思う。でも、人間にはできない動きを突然すると、見ている人はびっくりするでしょ」と言って、いたずらっぽく笑った。【了】

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