「60分の差」が妻をヘソクリに走らせる

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ヘソクリを含むタンス預金が約44兆円あると言われる日本。配偶者にこっそり派、家族公認派がいるが、ヘソクリを通じて現代のリアルな夫婦の姿が浮かび上がった。

長年多くの家庭の家計簿を見ているベテランFP・畠中雅子氏は証言する。

「経験上言えるのは、夫婦の仲が悪い家庭ほど、ヘソクリしている率が高く、ヘソクリ額は仲の悪さに比例しているということ。最近この傾向は強いです」

畠中氏によれば、妻の頭のなかにあるのは「離婚」の2文字。いつ、そんな事態が訪れても路頭に迷わなくてすむように、仕事を持つ・持たないにかかわらず準備している妻は多いという。

関東地方在住の30代の女性は独身時代の貯金を含め約2500万円をヘソクリしていた。共働きで、生活費には夫の給料を充て、自分の稼ぎはほとんどそのまま個人的に貯金していた。

聞けば、夫は働き者であり、DVするわけでもない。だが、「結婚してすぐ、相性が合わないことに気付いた。冷蔵庫の使い方ひとつとっても夫のやり方が気に食わない。3000万円貯めたら離婚する予定です」と話す。

事実上、夫婦関係は破綻しており、子供もいないので、離婚して再出発したほうがいいような気もするが、なぜか本人の「ヘソクリ貯めて→離婚」という人生設計にブレはない。

いわゆる女子会でも、話題の中心を「離婚の備えとしてのヘソクリ」とする会も少なくないと、畠中氏。バツイチ女性を招き、「離婚するまでにいくら貯めたか?」「どうやって貯めたのか?」と質問攻めにするのだそうだ。

「最近、家計の診断などのご依頼をいただくときに増えたもうひとつの傾向が、ご夫婦と面会する前に、奥さん側から電話で『実はね、私の親からもらったお金が数百万円あるんだけど、このことは夫には内緒にして診断をお願いします』というものです。これも、今は夫婦円満だけれど、いつ関係が悪化するかわからないから、という奥さん側の深謀遠慮ゆえでしょう」(畠中氏)

では、どのようなことが原因で妻たちは離婚を意識し始めるのか。そのひとつと思われるのが会話時間だ。

明治安田生命のヘソクリ調査(グラフ参照)では、配偶者に「愛情を感じている」夫婦の1日の会話時間は103分で前年より6分増加していた。一方、「愛情を感じない」夫婦のそれは44分(同3分減少)。会話の質も重要だろうが、「あと60分間」会話を長くすれば、愛情を深められていた可能性がある。そうすれば離婚リスクも減り、妻がヘソクリを決意することもなくなるといえるのかもしれない。

(大塚常好=文)