iPhone 6 / 6 Plus 祭りの裏で進む低価格スマホ新時代戦略 1万円スマホAndroid Oneの驚異
●ほんとに1万円？Android Oneって何
Android Oneは、グーグルが今年6月25日に発表した低価格スマホのためのプラットフォームだ。しかし、現時点では大手メーカーの最新モデルには搭載される予定はない。それもそのはずで、Android Oneは新興市場をターゲットにした低価格スマホ向けのものなのである。Android Oneとはプラットフォーム、つまりAndroid Oneの設計に従えば、どんなメーカーでも簡単に低価格スマホを作ることができる。
大手メーカーにとってはなんとも恐ろしい価格破壊の企画だが、新興メーカーにとってはビッグチャンスな企画とも言えるものを、グーグルが作り上げたのだ。
今回のインドでの発売は、すでに現地でも大きな報道がされているという。だが近い将来、日本を含む先進国でも同OS搭載スマホが発売される可能性がないわけでないない。決して他人事ではないのだ
●「次の50億人」をスマホ化する最強プランAndroid One
Android Oneのターゲット層は「次の50億人」だ。つまりまだスマホを持っていない、通話専用の単機能なケータイを持っているインドやアフリカなどの新興国・途上国のユーザーのためのスマホのプラットフォームなのだ。これらの国ではスマホに数万円も支払うことは難しく、また日本のように「iPhoneは無料、毎月数千円の料金を2年契約で払い続ける」というビジネスモデルも取れない。なぜなら新興国ではプリペイド払いが一般的である上に、毎月の携帯代金も数百円というユーザーが大半だからだ。
Android Oneは、こうしたユーザーをも、スマホユーザーにさせる超過激な戦略スマホなのだ。
●Android One はどんなスマホなのか
ではAndroid Oneスマホとはどんな製品なのだろう？
今回インドで発売になった3機種の代表的な仕様は、先進国の最新スマホと比べると2-3年前のスペックだが、価格はこれで6000インドルピー台、日本円で1万円ほどの販売価格となる。この程度の価格なら現地の一般消費者でも十分購入できる。
・ディスプレイが4.5インチ854x480ピクセル
・CPUがクアッドコア1.3GHz
・カメラはメインが500万画素、サブが200万画素
・メモリ容量は本体ROM4GB、マイクロSDカードで拡張可能
・デュアルSIM対応、3G/2G対応
インドで発売になったAndroid Oneスマホ。価格は約1万円
またAndroid Oneスマホはグーグルがシステムのアップデートを直接行う点も異例だ。
Android Oneは、メーカーがアップデートプログラムを用意したりアナウンスしたりする必要が無いのだ。そのためグーグルが最新版のOSを発表すれば、すべてのAndroid Oneスマホは即座にアップデートの対象になる。
現状のAndroidスマホは、メーカーや機種ごとにアップデート時期がずれるが、Android Oneではその心配も不要で、常に最新のOSが利用できる。そのため新興メーカーはメンテナンスやサポートの必要なしで、最新OSをユーザーに届けることができるのである。インドで発売になったモデルはOSアップデートのパケット代も無料だという。
●Android Oneのパートナーに日本市場参入の大手企業も続々追加
Android Oneスマホはインドでの発売開始後、バングラデシュ、ネパール、パキスタン、スリランカ、インドネシア、フィリピンなどで展開される予定だ。メーカーはインドメーカーなど日本では知られていない新興企業がパートナーとなっている。だがグーグルはインドで3モデルが発売されてから、パートナー企業としてHTC、エイサー、エイスース、アルカテルなどの大手メーカーが加わったことを発表した。
これら大手メーカーは数が見込める新興国向けにAndroid Oneスマホを出す予定だが、今回発表されたインド向けのAndroid Oneスマホと同等のモデルに加え、よりスペックの高いモデルを投入するかもしれない。つまり新興国だけではなく、先進国でも低所得者や学生向けの「マイ・ファースト・スマホ」としてAndroid Oneスマホを展開する可能性があるのだ。
●iPhone 6 / 6 Plus 祭りの裏で着々と進む、低価格スマホという新時代の戦略
例えば日本でも最近はMVNOによる低価格SIMが流行しており、SNSと通話とWEB検索だけできれば十分、という消費者は格安スマホと組み合わせて低価格でスマホライフを楽しんでいる。今後そのようなユーザーが増えれば、大手メーカーによるAndroid Oneスマホも一定数の販売量が見込めるだろう。また品質やサポートを考えると新興メーカーの製品は選びにくいと考える消費者がいるだろうが、日本でも十分名前の知られているHTCのAndroid Oneスマホが1万円で発売になれば、格安SIMと組み合わせて購入する消費者も増えるはずだ。もちろん格安SIMを提供するMVNOキャリアにとっても、Android Oneスマホはアップデートなどの面倒をグーグルが見てくれるため販売後のサポートも楽になる。
iPhone 6 / 6 Plusが発売になり熱狂的な歓迎を受けているが、1万円程度でも日常的なコミュニケーションをするには困らないスマホもじわじわと世界に広がろうとしているのだ。気が付けばコンビニでAndroid Oneスマホが格安SIMとセットで売られている、そんな光景が日本でも見られるようになるかもしれない。
山根康
