なんと「不倫妻」の75%は、「夫との関係は悪くない」

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■モテモテなのは「普通の」主婦

40歳、50歳になっても驚異的な若さと美しさを持つ「美魔女」がブームだ。さぞや男性の目を意識しているのだろうと思いきや、実は彼女たちの目的はそこにはない。あえて言うならば、男性ではなく同性に「いつまでも若い、きれい」と言われることが美魔女の願望だ。本当にモテるのは普通の40〜50代の主婦たちなのである。

私が編集長を務める「婦人公論」で読者アンケートをとると、「現在、恋愛している」と答える主婦の割合はかなり増えている。よく言われるように、夫の浮気はすぐバレるが、妻の浮気はバレにくい。女性は周到だし、夫は妻が髪を切ったって気づかないのだから。「夫は知らないが、実はうちの子は夫の子供じゃない」という投書が昔からあることを見れば、夫がどれほど鈍感かわかるだろう。ある医療関係者によれば、遺伝子検査をすると、4人に1人は夫の子ではないというから驚きだ。にわかには信じがたいが、本当に聞いた話である。

恋する主婦が増えている理由として考えられるのは、美魔女に限らず、女性たちが一昔前より見た目も気持ちも若くなっていることだろう。「あと何年、女として勝負できるか」。この年代の女性からこんな言葉が出てくるようになったのはここ数年のこと。女性がいつまでも若く美しくいられるような環境が整ってきているからだ。

その理由の1つとして、まずは40代の終わりごろから、時間とお金が手に入るようになることが挙げられる。子供が独立して家を出ていくと家事は楽になるし、家のローンも終わる。こうなるといろいろな遊びに関心が向くようになるが、その中でもいちばん贅沢なのが恋愛だ。お金と時間があればたいていのものは手に入るが、恋だけは手に入らない。だからこそ恋は、女性にとって最も価値ある遊びなのだ。

また、外の男性と知り合う機会も増えた。パート先などで恋愛が発生する確率は高い。男性からしてみれば、40〜50代の女性は非常につき合いやすいのだ。デートをドタキャンしても若い女性のようにキーキー怒ったりしないし、子育てを経験したせいか、非常にほめ上手だ。「こう言えば男が喜ぶ」というツボを知り尽くしている。

もう1つの変化は、女性が自分自身の幸福を追い求めるようになったことだ。「婦人公論」で10年ほど前によく売れたテーマは、「妻の幸せ」「主婦の悩み」といった内容。つまり主婦の幸せは家族との関係にあったのだ。

ところがいま売れるのは、「いくつになっても恋をしたい」「老後を1人でどう過ごすか」など、自分がテーマのもの。主婦たちが自分の欲望に肯定的に向き合うようになったのである。もちろんそこには性の欲望も含まれる。大多数の女性は「自分は本当のセックスの悦びを知らない」という自覚がある。結婚前は2〜3人しか知らないし、6割くらいの夫婦が結婚後数年でセックスレス。そんな飢餓感を抱えた状態で男性からくどかれたりすれば、自分の中の女性に火がつくのも無理はない。

ここまで読んだ男性は不安になってきたかもしれないが、いまの不倫妻の特徴は、家庭を壊すまでには至らないことだ。不倫はしても、「夫のことも人間として好き」という女性は少なくない。恋愛のときめきはほしいが、安定した結婚生活も大事なのだ。これは男性の浮気にそっくりではないか。

ということは、いくら夫婦仲がよくても、浮気をする人はするということだ。ただし、夫が妻のほうをちゃんと向いている場合、妻が浮気に走る率は少ない。妻は夫が自分に関心を失っているということに一番傷ついている。夫はきちんと妻の顔を見て会話をすること。夫にできるのはせいぜいそのくらいだ。

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「婦人公論」編集長 三木哲男
1958年、兵庫県生まれ。東京学芸大学卒業。繊研新聞記者を経てフリーライターに。2000年に中央公論新社入社。「中央公論」編集部を経て、03年「婦人公論」副編集長、06年から現職。

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( 「婦人公論」編集長 三木哲男 構成=長山清子)